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short mission 4 宅配戦線、異常あり!

断罪の始まり

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Side-ラスファ 4 

 晩餐会における、私の役割。

 それは、借金漬けで心ならずも内通者をしていたネルソンを焚きつけて、自ら離反させる事だった。
 借金があって言いなりにならざるを得ないのは、アーチの情報でわかっている。証人になるかどうかで、今後の方針も変わってくるという重要な局面だ。

 最初に会った時に、くたびれた熊のように生気のない面持ちだったのも頷ける。自我を押さえつけられて甥の欲望を満たすためだけに存在する、生きた人形となるのはさぞかし辛かった事だろう。村長の息子という肩書きとの板挟みで崩壊する寸前だったのかもしれない。

 だがまさか、この場でいきなり断罪となるなんて思いもよらなかった。
「あの…その声? もしかしてどっかで会ったことが?」
 いきなり現れた当の領主本人に、ラグが何故か驚きの声をあげた。途端に領主が目を細めて相好を崩す。
「おお、あの時のお嬢ちゃんたちか。騙したみたいになってすまんね、実はこういう事さ」
「???」

 なにやら訳のわからないやりとりの後に、領主は懐から顔全体が覆われるような大きな白いつけひげを取り出した。何かに思い当たったアーシェが声を跳ね上げる。

「モーリス爺さん?! あの時の?!」
「ほっほっほ。若いお嬢さんと話すと、若返る心地じゃな! 時々こうやって領民の声を聴いておるのさ。はっきりと正体を指摘されたのは初めてじゃが、領民たちも分かっていて黙ってくれておるのかもな」

 何があったのかはわからないが、領主も直面している現状の把握はしているということか。話が早くて助かる。
「さて、問題は…お主だな。おおよその事情は把握した。申し開きの言葉はあるか?」

 その一言の効果は絶大だった。領主の後継ぎの座を微塵も疑うことなく好き放題に振舞っていた男の顔色が目まぐるしく変化する。
「お…伯父上。僕…いや、私にはどういう事かわかりません…」
目を泳がせながらも往生際悪くとぼけようとする甥を見やって、領主はため息をついた。

「なら、この葡萄酒ワインを見るがいい」
 手元に注がれた、深い赤を湛えたグラスを領主は突きつける。
「この葡萄酒は、領民が地道に努力を重ねて創り出したものだ。最初は一面の森だったエルネシア領を切り開き、畑を作って葡萄を育てて醸造して成したものだ。いわばこれは、領民たちの血と汗の結晶だ」
 その言葉を聞いてもなお、甥は不貞腐れた態度を崩さない。それを見て、領主は最後の断罪をする決意を決めたように思えた。
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