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short mission 4 宅配戦線、異常あり!

道行きの果実

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Side- アーシェ 3

 なんだったんだろ、あの激しい音?
 急に大きな音がこだまするから、びっくりしちゃうじゃん…。森の中って、こんな音は日常なのかな?

 ふと隣を見ると、ネルソンさんが震えている。寒いの? 
「あの…お身体でも冷やされましたか?」
 私と同時に気づいたラグちゃんが、その後ろ姿に声をかける。
 振り向いた顔は、真っ青だった。

「いいいいいいえ、大丈夫ですよ、着込んでますから!」
 震え声でそれだけ言うと、彼はそそくさと離れていく。
 …どしたの?



 少しの休憩の後、あたしたちはまた歩き始めた。登った後は下り坂。直通の渓谷を迂回して、頭の上で枝が絡み合う森をただ進む。
「あ、ねえ見てー! 野生の葡萄かな? 緑だから、まだすっぱかったりする?」
 露に濡れてキラキラ輝く緑のつぶつぶが目に付いたあたしは、思わず手を伸ばしながら声を上げる。

「ああ、それは白葡萄マスカットですよ。君たちには、まだ珍しいのかな?」
 「白葡萄マスカット!! 初耳です!」
「そんなのあるの? 美味しい?」
 思わず摘もうと思ったけど、畑の葡萄つまみ食いしてしかめっ面してたアーちんの事を思い出した。手を引っ込める。

 果物は大好きだけど、美味しくなかったら意味ないもんね…。
 そんなあたしを見て、ネルソンさんが苦笑する。
「大丈夫。その種類は葡萄酒ワインに使えないよ。完全に食用か果実水用…」
 それを聞いて、あたしは躊躇なく粒をいくつかもいだ。半分をラグちゃんの手に渡す。

「おいおい…」
 保護者の兄貴の呆れ声が聞こえた気がするけど、多分気のせい!
「いいんですか、勝手に食べちゃっても…」
 保護者その二のデュエルがネルソンさんに確認する。
「良いんですよ。これは、これから果実水の開発をするための試作品ですので。良かったら感想をお聞かせください」

「じゃ遠慮なく!」
「いただきます!」
 あたしとラグちゃんが、同時に白葡萄マスカットにかじりついた。
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