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short mission 4 宅配戦線、異常あり!
頼れる舌先三寸!
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Side-アーシェ 1
依頼人さん、困っちゃってる…。そりゃ私も助けてあげたいけどさ、依頼料がない限りは女将さんが首を縦に振らないよ…。
ずっと前に困ってる村を格安で助けたら、女将さんに数時間正座で説教されちゃったもん。通りすがりだったし大変そうだったからって言ってもダメだった。この業界も、情だけじゃやってけないんだって骨身に沁みた。
そこで兄貴が一歩前に出た。
「なら葡萄酒の仕入れ、ということにするか?」
え? え? どゆこと?
あたしの内心の疑問符の群れを無視して、兄貴は続けた。
「これは依頼ではなく、あくまで仕入れだ。良い葡萄酒の買い付けに出向いて行くと言えばいい。ついでに村までの護衛と、途中に出る障害の退治もな。それが人間でも魔物でも同じだ」
「しかし…それであの女将さんが納得するか?」
デュエルが首を傾げる。それよね、問題は。その問いに兄貴はけろりと答えた。
「ここは宿屋兼酒場だ。良い葡萄酒と聞いて、興味を示さない奴がいると思うか? ならこの先継続的に仕入れれば、納得せざるを得ないだろう? そっちが用意した依頼料は、あくまで危険手当ってことで」
うん…まあそうか。
「よっしゃ! 美味い葡萄酒なんだろ? なら問題ねェよな! それに…女ウケもいいってのはありがたいぜ! あんたはその村から売り込みに来たって事で!」
アーちんもノリノリになってる。
「でしたら是非! うちの村の自慢の葡萄酒はいかがでしょうか?」
不安そうな表情から一転して、依頼人さんがパッと笑みを浮かべた。
「おや、行商かい?」
そこにおかみさんが帰って来た。全員がびくりと肩を震わせる。例外は兄貴とアーちんだけ。その二人は女将さんに振り返ると、何事もなかったように頷いた。
「ああ。いい葡萄酒の産地から来た行商人だそうだ。話を聞けば、結構悪くない話でな? 煮込み料理にも使えそうだ」
それにアーちんも続く。
「おう、ここ女客も多いからな。もうちっと女ウケする酒類増やしても良くね?」
「申し遅れました、わたくしエルネシア領のネルソンと申します。今回は、我が村の葡萄酒の件で…」
そっから先はほぼ、ありとあらゆる舌先三寸を駆使してのアーちんの独壇場だった。
依頼人さん、困っちゃってる…。そりゃ私も助けてあげたいけどさ、依頼料がない限りは女将さんが首を縦に振らないよ…。
ずっと前に困ってる村を格安で助けたら、女将さんに数時間正座で説教されちゃったもん。通りすがりだったし大変そうだったからって言ってもダメだった。この業界も、情だけじゃやってけないんだって骨身に沁みた。
そこで兄貴が一歩前に出た。
「なら葡萄酒の仕入れ、ということにするか?」
え? え? どゆこと?
あたしの内心の疑問符の群れを無視して、兄貴は続けた。
「これは依頼ではなく、あくまで仕入れだ。良い葡萄酒の買い付けに出向いて行くと言えばいい。ついでに村までの護衛と、途中に出る障害の退治もな。それが人間でも魔物でも同じだ」
「しかし…それであの女将さんが納得するか?」
デュエルが首を傾げる。それよね、問題は。その問いに兄貴はけろりと答えた。
「ここは宿屋兼酒場だ。良い葡萄酒と聞いて、興味を示さない奴がいると思うか? ならこの先継続的に仕入れれば、納得せざるを得ないだろう? そっちが用意した依頼料は、あくまで危険手当ってことで」
うん…まあそうか。
「よっしゃ! 美味い葡萄酒なんだろ? なら問題ねェよな! それに…女ウケもいいってのはありがたいぜ! あんたはその村から売り込みに来たって事で!」
アーちんもノリノリになってる。
「でしたら是非! うちの村の自慢の葡萄酒はいかがでしょうか?」
不安そうな表情から一転して、依頼人さんがパッと笑みを浮かべた。
「おや、行商かい?」
そこにおかみさんが帰って来た。全員がびくりと肩を震わせる。例外は兄貴とアーちんだけ。その二人は女将さんに振り返ると、何事もなかったように頷いた。
「ああ。いい葡萄酒の産地から来た行商人だそうだ。話を聞けば、結構悪くない話でな? 煮込み料理にも使えそうだ」
それにアーちんも続く。
「おう、ここ女客も多いからな。もうちっと女ウケする酒類増やしても良くね?」
「申し遅れました、わたくしエルネシア領のネルソンと申します。今回は、我が村の葡萄酒の件で…」
そっから先はほぼ、ありとあらゆる舌先三寸を駆使してのアーちんの独壇場だった。
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