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intermission 8 新興国の新名物

魔女の違和感

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Side-ラスファ 2

 愛の言葉を囁きながら、次々と光弾が放たれる。  
 目の前には、喜悦そのものの表情を貼り付けた魔女。鬱陶しいことこの上ない。
 
「『風精よ! かの者の矢を弾け』!」

幾度も飛んでくる光弾を捌きつつ感じた違和感は、だんだん実感を伴ってきた。

 戦闘にもつれ込んで初めてわかった。コイツは
 無詠唱のままで次々に光弾を放つのは、まだわかる。だが、どう言えば伝わるだろうか?

 というのは。

「ああ…素敵、素敵ですわ! ユークリッド様、どうか私の手で逝ってくださいまし…!」
 ああ、こういう意味でもイカレているな。

 もっぱら魔術戦ということで、自警団員を始めとする戦士組は出番がほぼない。街中に戻る路地を固めながら武器を構えてこちらを見守っている。
 
 不意に私のそばをかすめて赤い光弾が放たれ、紫の光を相殺して宙に溶けた。振り返ると、杖を構えたアーシェと目が合う。
 そうだ、アーシェという戦力がいたか!
「兄貴、どうしよ? さすがに生け捕らなきゃダメだよね?」
 不安そのものの顔つきで、詠唱の合間にこちらを見上げるアーシェ。

「いや、生け捕りは諦めろ。こいつ…人間じゃない!」
 私の言葉に当惑したように目を丸くすると、アーシェは言い募る。
「え、人間やめちゃってるってこと? 魔神の事件の時のパズスみたいに?」
「いや、おそらく…最初から、人間じゃないはずだ」

 確証はないが、確かにそうと感じる。見た目は完全に人間だが、魔力の質や流れなどが通常とは大きく異なっている。
「油断するなよ…」
 私はことさらに敵の気を引くべく、一歩前に出た。

 瞬間! 彼女の足元が盛り上がり、植物の蔓が数本飛び出し絡みつく。小声で詠唱しつつ対応した結果だ。もちろん古代語魔法に比べ、精霊魔法は詠唱が短い事を利用してのこと。アーシェとの発動時間の差を利用してのフェイントだ。

「あらあらユークリッド様…積極的ですのね…!」
 だが予想に反して魔女は動じる事なく絡んだ蔓を振りほどくと、即座に攻撃に転じてきた!

「なら私も、ちょっと激しく逝きましょうか!」
 瞬間、空が暗くなった。
 見上げると、背筋に冷や汗が落ちる。土手沿いのほぼ全域をカバーする範囲に、光弾が浮いていた。

 まさか、これ…全部落とすつもりか?!
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