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intermission 8 新興国の新名物
対魔女作戦
しおりを挟むSide-アーシェ 3
目的地の賢者の院には、だいぶ近くなってきた。
目の前には、うかつに刺激すれば何をするか分からないヤンデレ。なるべく穏便にご退場いただくためには、何が最善か考えなきゃだわ!
「まず作戦だが…」
兄貴が小声で指示を出す。あたしもデュエルも、やれる事があるのはありがたかった。
人波に紛れてそっと近づくと、あたしとデュエルがその背後にぴったりと張り付く。下手に刺激することは避けたいからね。
ちなみに兄貴とラインハルトは別行動。作戦通りに行ってみよっか!
「愛しき貴方…今、参ります。どうかもうしばし、お待ちくださいましね…」
恍惚そのものの目つきで、彼女がこぼした独り言。なんか本格的に病んでるっぽくて背中が冷たくなる。なんなのよそれ、気持ち悪い…。
あたしは一つ息を吸うと、そばにいるデュエルに大きめの声で呼びかけた。
「あー! そういえば今日、司書のユークリッドさんいないんだった!」
出来るだけ自然に、気づかれないように…。
すぐ前を歩くドリスがピクリと反応する。手ごたえあり!
「今日に限って、何があったのか?」
ちょっと棒読み気味なデュエルの声に、どきりと心臓が跳ねる。気づかれたら終わりなんだよ? もうちょっと演技力身につけてよデュエル…!
「うん、確か町外れの土手で植物採集だって。いい薬草でも見つかったんじゃないかな? 返す本持ってたのに、無駄足じゃん!」
やたらゆっくりと目の前の女が振り返った。べったりとした狂気が張り付いた顔つき。真っ赤な口紅を歪ませてにったり笑うと、たった一言つぶやいた。
「ありがとう…」
女はその後、土手の方向に向けて歩き出す。相変わらずゆっくりとした足取りが、余計に怖い。
本当に怖い時って、声も出ないんだね…。同年代に比べて、今まで結構な修羅場くぐってきたとは思うんだけどさ。魔物どころか魔神と対決したこともあったのに、今ほど怖いと思ったことはないよ!
何あれ…どうやったらあんな人間が出来上がるの? なんていうか…生きてる感じが全くしないだなんて!
あたしはそっとドリスの後をつけた。デュエルが頷いてあたしから離れる。次の仕込みに行ったんだ。引き続きあたしは彼女を監視する。
さて、あたしはあたしの役目を果たさなきゃ!
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