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intermission 8 新興国の新名物

魔女の噂

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Side-アーシェ 2

 もう! どうなってるのよ!?
 よりによって、魔法に耐性ないアーちんと戦闘に向かないラグちゃんがトラブルに飛び込もうとしてるなんて! せっかくのデート(仮)をどうしてくれるのよ!

 ラインハルトは魔女のいる場所を探りながら、あたしたちに指示を出す。あたしと兄貴、そしてデュエルがラインハルトについて行く形で大きな通りを進んでいく。早く見つけないと…ラグちゃんもアーちんも何も知らず巻き込まれるような気がして、気ばかりが焦る。

「その角を左だ!」
 ラインハルトの手には『ウィージャ盤』と呼ばれる魔術具がある。対象の手がかりを元に位置を探るものだ。小さめのノートくらいのサイズで、探し物の場所を指してくれるから便利なんだよね。たぶん手掛かりに、髪の毛を閉じ込めてた檻から拾ったんだろうな…。これからは、油断ならないよ犯罪者! (どや!)

 この前魔術師ギルドの先輩が完成させた最新の魔術具が、こんな形でさっそく役に立つとは思わなかったよ。先輩に頼まれて先週、あたしがお試しって形で渡したんだけど…自警団で近いうちに本格導入されるかもね!
「近いぞ! この先だ!」
 その上がっつり使いこなしてるラインハルト、頼もしい。


「いた…あれだ!」
 ラインハルトが示す先にいた、やけにゆっくりと人波をかき分ける黒髪の女。痩せ型で背が高く、肌は青白い。一見して不健康そうな雰囲気。あれが檻を吹っ飛ばして逃げたっていうのが信じられないわ。
 あたしもそのドリスって女の顔は知らなかった。ずっと広まってた、その噂だけは知ってたけどね。

 『恋多き魔女』とか聞いてたけど、それでもここまで派手なことをやらかすだろうか? ってギルド内でも疑問の声は上がったみたい。
 だってあくまで、魔術師ギルドの学生な訳だし。実践しまくりな冒険者じゃないんだよ? しかも専門は、古代文字の研究者だったって言うし。
 自警団に怪我人を多数出すほどの攻撃魔術だって、実はそう扱ったこともないだろうし。

  『学習した事を実践すべし』って冒険を推奨してる教授たちも、決してこんな事を望んでない。どこかで彼女自身にブレーキがかかるはずなのに、歯止めが効かなかった。
 何かがきっかけで彼女の心が壊れてしまったのか、それとも別の原因があるのか…? 

 雑踏の中に混じっていても、その姿はどこか異質だった。 だんだん、ドリスの周囲から人が離れていく。不気味がられているんだろうね。分からなくもないけどさ。
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感想 4

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