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intermission 7 神官少女の憂鬱

神官として

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Side-ラスファ 2

 応接室のテーブルを占領して、長々と横たわる人型ボロ雑巾。元婚約者であり親友の仇でもある男を目にして、ラグは黙って俯いていた。
「ほら、ラグちゃん行こう! わざわざ辛いもの見なくていいよ!」
 アーシェがラグの手を引いてその場を離れようとする。だが出てきたのは、意外な言葉だった。

「いいえ、わたくしが…治します」

 周囲の連中は驚いて一斉にラグを見つめた。彼女は決意を固めたような表情で、時折痙攣する元婚約者に歩み寄る。
 静かに流れる、癒しの聖句。柔らかな光が男を包み込むと、見る見るうちに傷や打撲の痕が消えていった。

「ラグちゃん…いいの?」
 光が消え、ボロ雑巾から人間に戻った元婚約者の姿を見てアーシェが言葉を押し出す。
「ええ。わたくしは神官ですから」

 葛藤はあったと思う。だが彼女は個人としてではなく、神官としての使命を全うした。他人事ながらその事が無性に誇らしく思えた。

 だからこそ、彼女の思いには応えなければならない!
 視界の隅で捉えた男の動きについていけたのは、おそらく私のみ。奴は起き上がると、ラグの背後から襲いかかろうとして…。

「?!」
 寸前で私が捕まえた。首筋に短剣を突きつけると、抵抗の動きが止まる。我ながらまるっきり悪役めいた行動だが、デュエルと違って非力な分揉み合いになると不利になるために致し方ないところだ。
 それに…抑えるのは一瞬でいい。何しろここは、自警団の詰所。

 体格の良いが、たぁくさん、遊んでくれるだろう。

「なっ…なんなんだテメェら! お、俺を誰だと思ってやがる!」
 騒ぎを聞きつけた自警団員が数名、この場に集まってきた。ラグを襲い損ね、出口を塞がれた形の状況。奴は本性むき出しの粗暴な喚き声を吐き散らしながら、奴は無駄に虚勢を張る。きっちりと囲まれたのを確かめると、私は短剣を収めた。いつまでもくっついていたい相手ではない。

 それまで何をやっても、金でもみ消して好き放題をやってきた男の幼稚さ。場所柄を一切わきまえることもなく、よくもまあこの年まで…。
 その時、戸口で呆れたようなボヤキが聞こえてきた。

「あー、はいはいオプファー商会のだっけ? 思い通りにいかねぇからって駄々こねてんじゃねぇ、いい歳こいてよ! あーあ…ったく! こんなの相手に駆けずり回ったオレって、バッカみてぇじゃね?」
 肩まで伸ばした金髪に無精ひげ、小馬鹿にしたようなタレ目に異国風のポンチョ。
「師匠?!」

 そう。今まで情報屋にコンタクトを取って不在だった、ラグの師匠ことアーチボルト・サーガがようやくの帰還を果たしていた。
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