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intermission 7 神官少女の憂鬱
囮作戦、決行!
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Side-デュエル 3
アーチが盗賊ギルドに行った後、俺もできる事を探してみる。だがやはりラグたちが心配になり、そのまま街中に探しに行ってみた。
女子が好みそうな果実水の屋台にスイーツの店、果ては覗くだけでも勇気が試されるファンシー雑貨の店…。
かなり恥ずかしい思いをしながら心当たりを探し回り、最後に頼みの綱とばかりに自警団の詰所に顔を出してみた。実際に被害が出たわけではないが、一度相談実績を作っておけばいざという時の対応に差が出ると思ってのことだ。
「ちょっといいか、ラインハルト?」
勝手知ったる自警団の詰所。内勤の時にいる場所は、だいたい見当がつく。
ひょいと中に入ってみれば、意外な相手がそこにいた。
「ラスファ? なんだ、ラグたちもここに居たのか?」
「デュエル、来ていたのか?」
そこにいたのは彼らばかりではなかった。ラグたちから聞いた話で怒り心頭のラインハルトが、じっと黙り込み目が座っている。彼が本当に怒っている時のクセだ。
「デュエル…今回のこと、彼女から聞いた。これから全力で支援していくつもりだ」
「あっ…はい…」
この状態の彼には、どうも逆らえる気がしない。
アーチから聞いた話だけではなく、ラグからの話も聞いてみたが…そいつは相当な外道のようだ。
…野放しには出来ない…。
「…ところで、アーチはどこに?」
ラグを気にしてか、ラスファが小声で聞いてきた。ううむ…この状態のラグを最も安心させられるはずの男がこの場にいないというのが不自然だよな。
「オプファー商会のことを調べに、盗賊ギルドに向かった。ラグのことも気にしていたが、どっちみち情報屋にコンタクトが取れるのはあいつだけだからな…」
俺の答えにラスファはしばし考え込んだ。
「何か考えでもあるのか?」
結局彼は、ラグを自警団の詰所に預けたままで出て行った。
『ラグにちょっかいをかけて来た連中とのやりとりで、私がラグと付き合っていると思われた可能性がある』
出て行く前にそんなことを言っていたが、自ら囮を買って出たということか?
尾行されていたとも言っていたが…そこで自警団の詰所に立ち寄ったのは、彼の機転のおかげだ。
だが、危険なことに変わりはない。彼一人と見れば何らかの手出しをしてくるだろうし、彼からすればそれを期待している節が大きい。
はっきり言わせてもらうが、俺が心配しているのはラスファではない。オプファー商会のバカ旦那もろとも、ドンパチの巻き添え食らうかも知れない街の人々の方だ。彼がそんなヘマをすると思えないが、一般人の観光客だと万が一ということもある。
俺は少女たちをラインハルトに預けると、ラスファの後を追いかけた。ラスファの長い銀髪は、雑踏の中でもよく目立つ。お陰でそう苦もなく見つけることができた。
しかしなんというか、ものすごい勢いで注目を集めているのがわかる。特徴的な耳を隠してはいるが、流石にエルフ族というのは伊達ではない。
「デュエル、いるんだろ?」
路地裏に入りかけたところで、ラスファが立ち止まった。…流石に俺の体格で尾行はバレるか。
アーチが盗賊ギルドに行った後、俺もできる事を探してみる。だがやはりラグたちが心配になり、そのまま街中に探しに行ってみた。
女子が好みそうな果実水の屋台にスイーツの店、果ては覗くだけでも勇気が試されるファンシー雑貨の店…。
かなり恥ずかしい思いをしながら心当たりを探し回り、最後に頼みの綱とばかりに自警団の詰所に顔を出してみた。実際に被害が出たわけではないが、一度相談実績を作っておけばいざという時の対応に差が出ると思ってのことだ。
「ちょっといいか、ラインハルト?」
勝手知ったる自警団の詰所。内勤の時にいる場所は、だいたい見当がつく。
ひょいと中に入ってみれば、意外な相手がそこにいた。
「ラスファ? なんだ、ラグたちもここに居たのか?」
「デュエル、来ていたのか?」
そこにいたのは彼らばかりではなかった。ラグたちから聞いた話で怒り心頭のラインハルトが、じっと黙り込み目が座っている。彼が本当に怒っている時のクセだ。
「デュエル…今回のこと、彼女から聞いた。これから全力で支援していくつもりだ」
「あっ…はい…」
この状態の彼には、どうも逆らえる気がしない。
アーチから聞いた話だけではなく、ラグからの話も聞いてみたが…そいつは相当な外道のようだ。
…野放しには出来ない…。
「…ところで、アーチはどこに?」
ラグを気にしてか、ラスファが小声で聞いてきた。ううむ…この状態のラグを最も安心させられるはずの男がこの場にいないというのが不自然だよな。
「オプファー商会のことを調べに、盗賊ギルドに向かった。ラグのことも気にしていたが、どっちみち情報屋にコンタクトが取れるのはあいつだけだからな…」
俺の答えにラスファはしばし考え込んだ。
「何か考えでもあるのか?」
結局彼は、ラグを自警団の詰所に預けたままで出て行った。
『ラグにちょっかいをかけて来た連中とのやりとりで、私がラグと付き合っていると思われた可能性がある』
出て行く前にそんなことを言っていたが、自ら囮を買って出たということか?
尾行されていたとも言っていたが…そこで自警団の詰所に立ち寄ったのは、彼の機転のおかげだ。
だが、危険なことに変わりはない。彼一人と見れば何らかの手出しをしてくるだろうし、彼からすればそれを期待している節が大きい。
はっきり言わせてもらうが、俺が心配しているのはラスファではない。オプファー商会のバカ旦那もろとも、ドンパチの巻き添え食らうかも知れない街の人々の方だ。彼がそんなヘマをすると思えないが、一般人の観光客だと万が一ということもある。
俺は少女たちをラインハルトに預けると、ラスファの後を追いかけた。ラスファの長い銀髪は、雑踏の中でもよく目立つ。お陰でそう苦もなく見つけることができた。
しかしなんというか、ものすごい勢いで注目を集めているのがわかる。特徴的な耳を隠してはいるが、流石にエルフ族というのは伊達ではない。
「デュエル、いるんだろ?」
路地裏に入りかけたところで、ラスファが立ち止まった。…流石に俺の体格で尾行はバレるか。
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