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intermission 7 神官少女の憂鬱

師匠と弟子

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Side-デュエル 2

 気づかなかった俺は大バカ者だ。
 ここしばらくラグが塞ぎ込んでいたのも、オプファー商会の名前を聞いてからだったとは…!

 アーチはそんな俺を見ていたが、いつものにやけた笑みはない。
「知っちまった以上、黙っちゃいられねェよな?」
 俺は黙って頷いた。当然だ、仲間を傷つけられて黙ってる奴は冒険者じゃない! いや…たとえ一般人でも、看過できるはずもない。

 件のバカ息子は、エルダードに来ているらしい。もし奴が、ラグに接触してきたら? そしてもしラグが、その時一人でいたなら? 
 俺は即座に戸口に足を向けた。今、奴をラグと接触させるわけにはいかない!
「落ち着けよ、デュエル」
「これが落ち着いていられるか! 一人の時に接触されたら…」

 「…あ」

 そうだった。ラグはアーシェに引っ張られて外出して行っていた。少なくとも一人でいるとは考えづらい。
「アーシェが一緒なら少なくとも、最悪の事態は避けられるだろ? ああ見えて魔術師だ、一般人にどうこうできねぇよ」

 アーチはそう言うが、少女二人では心許ないのも事実だ。
「…最悪の事態って、何を想定してのことだ?」
 不機嫌がにじむ声で問うと、アーチは肩をすくめた。
「無理矢理の誘拐か、路地裏に連れ込まれるか…もしくは、脅迫の一つもかけられるか…」

 どの事態が起きても、心配が減ることはない。何らかの脅迫という選択肢を取られても、真面目で内向的なラグのことだ…最悪、俺たちを巻き込むまいと人知れず姿を消す可能性だってあるだろう。
「相手のこと、他にわかることはないか?」
「いい評判はきかねぇな、少なくとも。…言っとくがオレだって黙っとくつもりはねェぜ? なんたって、オレにとっちゃ弟子だからな」

 俺は黙って頷いた。知ってるさ、そんな事。
 いい加減なように見えてアーチは、面倒見はいい。なんだかんだ言いながら、弟子と認めたラグのことは大事に扱っている。
「デュエル、弟子たちのことを探してやってくれ。オレはちょっくらオプファー商会の弱みを調べてくる」
「おい、どうせならお前が探してやったほうが…」
 そう引き止めた俺に、アーチは苦笑いで答えた。

「おいおい、オメー盗賊ギルドの場所と合言葉わかんのか?」
「ああ…それは無理か」
 何事にも適材適所というものはある。奴の言う通り、俺が盗賊ギルドに行ける訳がない。運営の性格上、どうやっても極秘の場所に存在する事ぐらいは俺でも知っているつもりだ。

「なあ…なんでスイーツ持ってくんだ?」
 アーチはラスファ作の悪魔絶品のスイーツをいくつか取り出している。女将さんが休憩でいないからって、堂々としすぎだろ! しかもこいつ、そんな甘党だったか?
「なに、ちょいとばかり情報料ってヤツよ。銀貨カネよりもはるかに効果あるぜ?」

 どこまでマジかわからないが、アーチはさっさとスイーツを用意して持って行った。
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