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mission 4 ワンコ王国、建国のススメ!
古巣への帰還
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side-アーチ 13
建国予定地を離れる時が来た。
捕虜をまとめて馬車に放り込み、犬獣人たちには散々引き止められながらの慌ただしい旅立ちになっちまった。
「また来てください聖女さま!」
「美味しいスープの研究しながら待ってまーす!」
「今度稽古つけてくださーい!」
「娘の婿になってくださーい!」
…誰だ最後のセリフ言ったやつ? ま…まあとりあえず依頼はクリアされた。ジョナサンにアプローチされ、シメに来たバスチアンとも別れを告げてやっと馬車の旅に移れたぜ。慌ただしいよな、マジで。
余談だが今回はことに、デュエルの奴が大モテだった。
犬獣人族の女たちから次々と告られて、断るのが大変そうだったぜ。こりゃ、さすがに負けたぜオレは。どうも犬獣人族の女は『力強さ』を求める傾向があるようだ。 だからオレがここでモテなかったのは、種族的な問題であってオレのせいじゃねぇもんね! …犬は嫌いじゃねェんだがよ…。
明日のナンパを夢見つつ弟子の方を見ると、どうも様子がおかしい。顔色は蒼白だし、心ここに在らずといったように誰とも目を合わせたがらねぇ。
いつからこうなっちまったのか…そこまで考えて、オレはある事に思い至った。
そうだ、オプファー商会。その名を聞いた時からだ。
オレは元内通者のピーターに駆け寄ると、声をかけた。
「よお…オプファー商会のワンコロ。ちょっとお話し、よろしいですかぁ?」
「…ど…どうぞ…」
軽口とともに真っ直ぐ目を覗き込むと、ビクビクしながらピーターは垂れ耳をさらに垂れる。ンなビクビクすんなよ、すげー罪悪感がわくじゃねぇか。
「オプファー商会の怨恨ってやつは、誰に向けてのモンかってのは聞いてんのか?」
「…」
だんまりかよ。
だがまあ、それこそが答えってやつかね? 知ってて言わねェってこった。やれやれ、随分な忠誠心だ事で。
「へいへい。大方察した。まあいいぜ? 誰がその相手っつーこともな。元の場所に返される時が来たら言っといてくれや…返り討ちの覚悟しとけってよ」
正直言って…オレはオプファー商会の連中に覚えはあった。犯罪スレスレの事を平気でやらかす悪徳商会で、そこで働く連中も…まあお察しだわな。ロクでもねぇ連中ばっかだったが、怨みを買うことも別段してねェ。
だがこっちに手を出すってのはいただけねぇわな。誰を敵に回すか、身をもって教えてやらねェとな?
「来るなら来いや、後悔させてやる」
オレは蒼白な弟子を見て静かに闘志を燃やした。
エルダードに戻ってすぐ、捕虜はラスファがギルド本部に引っ張って行った。ピーターはこっそりと逃してたようだが、何事か言い含めているのをオレは知っている。まあそれは先に決めてたことだしな?
「女王様に奴隷を売った気分だ…」
「いいじゃねェの、尋問の手間が省けたぜ?」
帰って来るなりそう言って凹むラスファ。何事かあの女帝陛下と話したらしいが、どうもそっちからロックオンされたらしい。羨ましい…代わってほしいぜ畜生!
「次に行ったら、捕虜が犬小屋の鎖にまとめて繋がれてそうだ」
…前言撤回。
「なあオイ…あの女帝サマ、どんな趣味してんだ?」
違うイミでおっかねぇ事は伝わった。うん、触らぬ女帝に何とやらだ。
「アイツはどこ行ったんだろうな?」
デュエルはレックスたちを気にしていた。そういや今朝から見てねェ。
『んじゃ、またな!』
そう書かれた書き置きだけ残して、連中は姿を消していた。
「まあ、またひょっこり出て来るだろ」
「そうだな…」
オレたちはまた、元の日常に戻っていく。
その前に、立ちふさがる新たなる脅威は…!
「「「女将さんにまた、こき使われるのか…」」」
オレたちは冒険者。
情けないというなかれ。どこの宿屋でも言える事だが、女将さんはこえぇんだよ!
建国予定地を離れる時が来た。
捕虜をまとめて馬車に放り込み、犬獣人たちには散々引き止められながらの慌ただしい旅立ちになっちまった。
「また来てください聖女さま!」
「美味しいスープの研究しながら待ってまーす!」
「今度稽古つけてくださーい!」
「娘の婿になってくださーい!」
…誰だ最後のセリフ言ったやつ? ま…まあとりあえず依頼はクリアされた。ジョナサンにアプローチされ、シメに来たバスチアンとも別れを告げてやっと馬車の旅に移れたぜ。慌ただしいよな、マジで。
余談だが今回はことに、デュエルの奴が大モテだった。
犬獣人族の女たちから次々と告られて、断るのが大変そうだったぜ。こりゃ、さすがに負けたぜオレは。どうも犬獣人族の女は『力強さ』を求める傾向があるようだ。 だからオレがここでモテなかったのは、種族的な問題であってオレのせいじゃねぇもんね! …犬は嫌いじゃねェんだがよ…。
明日のナンパを夢見つつ弟子の方を見ると、どうも様子がおかしい。顔色は蒼白だし、心ここに在らずといったように誰とも目を合わせたがらねぇ。
いつからこうなっちまったのか…そこまで考えて、オレはある事に思い至った。
そうだ、オプファー商会。その名を聞いた時からだ。
オレは元内通者のピーターに駆け寄ると、声をかけた。
「よお…オプファー商会のワンコロ。ちょっとお話し、よろしいですかぁ?」
「…ど…どうぞ…」
軽口とともに真っ直ぐ目を覗き込むと、ビクビクしながらピーターは垂れ耳をさらに垂れる。ンなビクビクすんなよ、すげー罪悪感がわくじゃねぇか。
「オプファー商会の怨恨ってやつは、誰に向けてのモンかってのは聞いてんのか?」
「…」
だんまりかよ。
だがまあ、それこそが答えってやつかね? 知ってて言わねェってこった。やれやれ、随分な忠誠心だ事で。
「へいへい。大方察した。まあいいぜ? 誰がその相手っつーこともな。元の場所に返される時が来たら言っといてくれや…返り討ちの覚悟しとけってよ」
正直言って…オレはオプファー商会の連中に覚えはあった。犯罪スレスレの事を平気でやらかす悪徳商会で、そこで働く連中も…まあお察しだわな。ロクでもねぇ連中ばっかだったが、怨みを買うことも別段してねェ。
だがこっちに手を出すってのはいただけねぇわな。誰を敵に回すか、身をもって教えてやらねェとな?
「来るなら来いや、後悔させてやる」
オレは蒼白な弟子を見て静かに闘志を燃やした。
エルダードに戻ってすぐ、捕虜はラスファがギルド本部に引っ張って行った。ピーターはこっそりと逃してたようだが、何事か言い含めているのをオレは知っている。まあそれは先に決めてたことだしな?
「女王様に奴隷を売った気分だ…」
「いいじゃねェの、尋問の手間が省けたぜ?」
帰って来るなりそう言って凹むラスファ。何事かあの女帝陛下と話したらしいが、どうもそっちからロックオンされたらしい。羨ましい…代わってほしいぜ畜生!
「次に行ったら、捕虜が犬小屋の鎖にまとめて繋がれてそうだ」
…前言撤回。
「なあオイ…あの女帝サマ、どんな趣味してんだ?」
違うイミでおっかねぇ事は伝わった。うん、触らぬ女帝に何とやらだ。
「アイツはどこ行ったんだろうな?」
デュエルはレックスたちを気にしていた。そういや今朝から見てねェ。
『んじゃ、またな!』
そう書かれた書き置きだけ残して、連中は姿を消していた。
「まあ、またひょっこり出て来るだろ」
「そうだな…」
オレたちはまた、元の日常に戻っていく。
その前に、立ちふさがる新たなる脅威は…!
「「「女将さんにまた、こき使われるのか…」」」
オレたちは冒険者。
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