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mission 4 ワンコ王国、建国のススメ!
忠誠と疑惑
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side-アーシェ6
「オメーだろ? 留守を狙うように襲撃者たちを引き込んだのは?」
「?!」
アーちんの爆弾発言に、あたし達は絶句した。もしかしてさっき言ってた『居る』って、この内通者のことだったの?
さりげなくドアの間に入って退路を断つと、慎重にデュエルは尋ねる。尋問慣れしてるよね…。
「あんたに主人は居るのか?」
…この人見たことある。兄貴の言う殺虫薬草を取りに行ってくれた人だっけ? えと…名前はピーターだったと思う。見つかったのにおとなしいのは有り難いけど、何考えてるかわからないや。急に暴れたりしないでね?
その質問に、彼はおとなしく答えた。
「ああ…オレのマスターは別にいる」
あらら、意外とあっさり認めちゃったわ。いいのホントに?
「オプファー商会の若旦那。あんたらいい奴ばっかだったけど、マスターの命令には逆らえない…。本当にごめん、もっと早く出会いたかった」
なんで…?
なんでそんなややこしい種族なの?
「い…今からでも遅くないじゃん! そのマスターの契約か何かを破棄しちゃえば、自由になれるんだよ? ね? そうしようよ!」
あたしの勧めに、彼は黙ってかぶりを振る。
「一度誓った忠誠は、そう簡単には覆せない。それに…向こうには兄弟がいる。オレ一人の問題じゃないんだ…」
「なにそれ、人質ってこと? ダメだよそんな!」
言い募るあたしに肩に手が置かれた。
「…彼にしかわからない事だ」
兄貴のその言い草に、あたしは言い返した。
「何よそれ、気の毒とか思わないの?」
「忠誠を誓ったまでの過程というものがあるだろう?」
そのやりとりに、ピーターが頷いた。
「はい…兄弟共々、命を救われました…」
その事実に、あたしは黙るしかなかった。なにか言いかけて、結局言うべき言葉も見つけられず沈黙が流れる。
「その商会の若旦那のことは、話せるのか?」
アーちんが、いつになく真剣な顔でピーターを覗き込む。どうしてだろ? こんなマジになってるアーちんは見たことないや。
「…こちらの冒険者のどなたかに、昔から関わりがあるとしか…」
うん、それほぼ答えだよね?
「兄貴、なんかやらかした?」
半眼で睨みながらあたしは兄貴に向き直る。
「いや、オプファー商会なんて名は初耳だ」
「本当に?」
「商人のコネもないのに、知るわけないだろ」
…んー、そりゃそうか。なら…。
あたしが振り返ると、デュエルと目が合った。
「じゃあデュエル?」
「傭兵のコネならともかく、商会には縁も所縁もないぞ」
「昔、護衛したとか…そういうのは?」
「だとしても、相当前だ。推理されても、何も出ないぞ」
…確かにそうね。
だったら残りは…アーちんか。あんなにずっとマジになってるし。
その結論に納得しながら、あたしはオプファー商会の名前を心に刻み込んだ。
この先何かで関わりそうな気がして…。
「オメーだろ? 留守を狙うように襲撃者たちを引き込んだのは?」
「?!」
アーちんの爆弾発言に、あたし達は絶句した。もしかしてさっき言ってた『居る』って、この内通者のことだったの?
さりげなくドアの間に入って退路を断つと、慎重にデュエルは尋ねる。尋問慣れしてるよね…。
「あんたに主人は居るのか?」
…この人見たことある。兄貴の言う殺虫薬草を取りに行ってくれた人だっけ? えと…名前はピーターだったと思う。見つかったのにおとなしいのは有り難いけど、何考えてるかわからないや。急に暴れたりしないでね?
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なんで…?
なんでそんなややこしい種族なの?
「い…今からでも遅くないじゃん! そのマスターの契約か何かを破棄しちゃえば、自由になれるんだよ? ね? そうしようよ!」
あたしの勧めに、彼は黙ってかぶりを振る。
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「なにそれ、人質ってこと? ダメだよそんな!」
言い募るあたしに肩に手が置かれた。
「…彼にしかわからない事だ」
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「何よそれ、気の毒とか思わないの?」
「忠誠を誓ったまでの過程というものがあるだろう?」
そのやりとりに、ピーターが頷いた。
「はい…兄弟共々、命を救われました…」
その事実に、あたしは黙るしかなかった。なにか言いかけて、結局言うべき言葉も見つけられず沈黙が流れる。
「その商会の若旦那のことは、話せるのか?」
アーちんが、いつになく真剣な顔でピーターを覗き込む。どうしてだろ? こんなマジになってるアーちんは見たことないや。
「…こちらの冒険者のどなたかに、昔から関わりがあるとしか…」
うん、それほぼ答えだよね?
「兄貴、なんかやらかした?」
半眼で睨みながらあたしは兄貴に向き直る。
「いや、オプファー商会なんて名は初耳だ」
「本当に?」
「商人のコネもないのに、知るわけないだろ」
…んー、そりゃそうか。なら…。
あたしが振り返ると、デュエルと目が合った。
「じゃあデュエル?」
「傭兵のコネならともかく、商会には縁も所縁もないぞ」
「昔、護衛したとか…そういうのは?」
「だとしても、相当前だ。推理されても、何も出ないぞ」
…確かにそうね。
だったら残りは…アーちんか。あんなにずっとマジになってるし。
その結論に納得しながら、あたしはオプファー商会の名前を心に刻み込んだ。
この先何かで関わりそうな気がして…。
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