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mission 4 ワンコ王国、建国のススメ!

束の間の休息

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side-アーチ 7

 唐突に割り込んできた声。
 オレ知ってるわ、この声。ヤローの声は即忘れるが、女の声は忘れねぇ。

 振り返った背後にいた女は、ちょくちょく見かけた覚えがあった。それどころか、言葉を交わしたことも…!

「サリチェ…? 盗賊ギルドにいた、姐さんか? あの時助けてくれた?」
「うふふ、覚えててくれて嬉しいわ♪ だからアンタ好きよ」
 その言葉に弟子は複雑な表情の上目遣いでオレを見上げる。…なんだよ…。

 前言に補足だ。あの時と髪型が違うが、栗色の髪に色っぽい厚めの唇。盗賊ギルドでよく見かけたが、またこんなところで会うとは予想外だったぜ。神出鬼没ってのは、この事かよ?

 以前は病魔事件の時に、敵と街中で追いかけっこしてた時に助け舟出してもらったんだよな。
 それまで何度か盗賊ギルドで顔は見ちゃいたが、声をかける機会に恵まれなかったんでよ? お近づきになれたんだから、あん時の敵に感謝すらしたがね。

「…知り合いか?」
 警戒もあらわにデュエルが声を低める。
「まあ…ちょっとした、な」

「よお。サリチェ、元気そうで何よりだな!」
 そんな空気をぶっ壊すような、能天気な挨拶。ってかオメーも知り合いかよレックス!
「アンタがしょっちゅう行方不明になるから、こっちは年中捜索する羽目になるの! いい加減に腰を落ち着けたらどうなの? 目をつけてた候補たちにも、あっさり近づいてるし。…バカなの? 」

 彼女はツカツカとレックスに歩み寄ると、いきなりヤツの頭をはたき落した。
「…元だけど、国主って言ってなかったか? オレがいうのも何だが、扱いぞんざいだな」
 ポロリと出たオレの本音に、彼女は勢いよく振り返る。

「三歩歩いて忘れるトリ頭には、こうでもしないとどうにもならないのよ!」
「…さいですか」
 うん…とりあえずヘッドロックは勘弁してやってくれるか? そろそろ顔色ヤバいぜ…。


「…なるほど、密偵だったのかアンタ。しかし、なんのためにオレに声かけたんだ?」
「そこにいる達と同じよ。失った国の代わりに新しく国を立ち上げる時のために、アンタやアンタのお仲間達に手を貸してもらえないかと思ってね? 目をつけた相手をリストにあげてたのよ。もう少し観察を続けようかと思ってたら、こいつってばサクッと接触してるし! これから交渉を始めようかと思ってたのに、なんなのもう?」
 えらくあっさりとした口調で爆弾を投げ込んで来る姐さんだ。
「…むしろ、それはそこの王様が持ちかけるべき話じゃないのか?」
 デュエルが控えめに突っ込む。サリチェは肩をすくめた。

「それが理想なんだけどね? この王様ってば、その辺のいざこざにすぐ首突っ込むから。すぐ行方不明になっちゃうのよね」
 まあそれは分かる気がするが。だが、協力するかどうかは別問題だよな…。
「夕食できたぞー!」
 そこに厨房エルフの声が飛び込んだ。ってか、いねぇと思ったら飯作ってたのかよオメーは! 

 
「うっめええええぇぇぇ!」
  一気に人数が増えた事で、屋外で火を囲んでの夕食になった…まあ、オレらにとってはいつものことか。さっきの絶叫はもちろん、常にリアクションがデカいレックスのもんだ。
 こいつ、誰かに似てると思ったんだが…気のせいって気がして来た。こんな王様の身内なんて、その辺にホイホイいるわきゃねぇわな。

「おーお、王様のお口にゃ合ったみてぇだな。こりゃ王様専属の料理人に引き抜きされるんじゃね?」
「えー! 困りますわ、わたくしたち冒険者ですのに」
「大丈夫よ。兄貴、ああ見えて女将さんに頭上がらないし」
 好き放題に言ってるよな。給仕してるあいつが聞いたら、えらいことになりそうだ。

 そんな中、当のレックスが遠くを見る目で夜空を仰いだ。
「どうした? 食い過ぎたか?」
「いや…こんな空気、久しぶりだと思ってな。久し振りに家族とあった気分だ。両親に妹…もういないけどな」

 そのまま、静かに夜は更ける…と思ったが、無粋な闖入者はこの時点で近くまで来ていたようだった。
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