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mission 4 ワンコ王国、建国のススメ!

蘇る記憶

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side-デュエル 5

 とりあえず、例の遺跡(地上部分)の掃除は終わった。拍子抜けするほど何もなく、報告通りの虫ばかりな状況だ。

 少しばかり休憩すると、大量の殺虫薬草が早速届いていた。いぶすための乾燥作業も始まりつつある。仕事の早さに、俺もラスファも感心しきりだった。
「早速明日には殺虫の作業ができそうだな、これなら」

 ひと抱えほどもありそうな薬草の山は、犬獣人たちの手で束ねられて天日干しにされている。遺跡の入り口でこれを燻して、風の魔法で奥に広げるそうだ。
 確かに中程度とはいえ大型の虫を多数相手にするよりも、はるかに効率が良くなることだろう。この殺虫薬草の効果には、虫の多さに辟易していた犬獣人たちも期待を寄せているようだった。

「まだ必要でありましょうか?」
 そこに先刻の垂れ耳獣人が敬礼しながらやって来た。採集班の隊長に就任したらしい彼は、ピーターと言うらしい。特に熱心に薬草の話を聞いていたのが印象に残っている。

 彼には再び、採集を手伝ってもらうことにした。愚直なほどに真っ直ぐで好感が持てる彼は、仲間からの信望も厚いようだ。多くの人が抱くイメージ通りの、犬獣人族らしい性格だと言えるだろう。
 そんな中でも、ある程度の例外は存在する。一応の戦闘要員としてここに来てはいるが、建国までの流れに少々反発をしているらしい若い一派もいることに気がついた。

  人間に近い容姿に耳と尻尾。ピンと立った黒い耳は、先っぽが少し切れている。年の頃は、人間でいうと十四、五…成人するかしないかの頃だ。そいつをリーダーにした三人組が、ニタニタしながらこっちに来た。
「ようよう、なにでかいツラしてくれちゃってんの、おたくら?」
「建国なんざ、オレらがいたら十分だっての! さっさと帰ったほうがいいんじゃねぇの?」

 そう言って俺やラスファに絡んでくる。周囲の者はたしなめるが、彼らには効いた風もない。
「無礼だぞ、貴様ら!」
 バスチアンに見つかって怒鳴られると、彼らは身を縮めて逃げて行った。

「申し訳ない。彼らはそこそこ戦闘力はあるので連れて来ているが、口の聞き方がどうにも…」
 申し訳なさそうに、バスチアンが頭を下げる。
「いや、若いようだしな。反抗心が強くなる年頃だろう? 気にすることはない」 
 俺の言葉に、バスチアンが恐縮する。
「しかし、ここにいる皆んなは統率が取れているな。俺も元は傭兵で身を立てていたが、一緒に戦ってきた犬獣人族はその中でも特に優秀だった印象があるよ」

 それを聞いて彼は誇らしげに笑みを浮かべた。
「それはありがとう。獣人族というのは、ベースの動物の本能が大きいが、犬獣人は特にその傾向が強くてな。それ故に統率する主人リーダーの資質が問われる。彼らは特に優秀なリーダーに仕えられて幸せだろうな」

 その台詞で、俺は思い出してしまった。自分が傭兵としての地位を捨てて冒険者になるきっかけになった事件を。
 自分の判断ミスで、率いていた部隊を全滅させてしまった忌まわしい記憶。

 立ち上る炎と血でどこまでも赤い世界の中、倒れた多くの仲間たちには数人の犬獣人が含まれていた。

「優秀なわけがないさ…。当時、俺は…」
「…デュエル…?」
 自嘲的な笑みを口元に刻み…暗い記憶に沈みかけた俺は、訝しむラスファの声で我に返った。
「…気分でも悪いのか?」
「あ、ああ…大丈夫だ、すまない」

 それに応える俺の声は、震えたままだった。
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