古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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mission 4 ワンコ王国、建国のススメ!

『大掃除』だ、全員集合!

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side-デュエル 4

「さあ、『掃除』の時間だな」
 俺は軽く伸びをすると、指の関節を鳴らす。
「まずは、ここからか」
 俺は目の前にそびえる高い塔を見上げた。高さにして三~四階建てくらいだろうか?

「地下はどれくらいありそうだ?」
 そばのラスファに尋ねると、彼は地面に手を置き精霊魔法を使って探りを入れる。
「…思ったよりも深いな。地上部分と同程度の深さがありそうだ…。しかも、地下で別の建物と繋がっている」
 そこまでわかるのか。彼に残ってもらって良かった。周囲から感嘆の声が静かに上がった。どうも魔法が珍しいようだ。

「地上部分と地下、どっちから行くでありますか?」
 それを受けてギリアンという名のガチムチの戦士系鎧をまとった犬獣人が、俺に意見を求めた。直立したブルドッグのような容姿で、見るからに軍人を思わせる。傭兵時代によく見かけたタイプの獣人族だ。
 どうって、それは…。
「まずは地上部分。それが済んだら一旦休憩して、その後地下に突入だ」

  俺の言葉を受けるように、今度はラスファが犬獣人たちに尋ねる。
「今までに『掃除』した箇所での、魔物の傾向は?」
 彼の問いに、近くにいた『掃除』の参加者らしい若い獣人が背筋を伸ばして敬礼をする。人間っぽい外見に、長い垂れ耳と突き出た鼻を持つ青年だ。
「え…えと、確か雑魚が大半であります。中程度の大グモや大ムカデばかりでありました!」
「それは入り口から殺虫効果のある薬草で、まとめていぶしてもいいかも知れんな…効率的にも」
「…まさに大掃除だな」

 彼の提案通りに大量の殺虫薬草を集める事を別働隊の犬獣人族に頼むと、俺たちは建物の一つに向かった。流石に五十人ほどいると、誰かしら戦闘より別の作業が得意な者がいる。幸い近くには森もあったので、採集場所には困りそうもない。

「殺虫作戦は明日以降だとして。その間にでも別の箇所を片付けるか? 」
 採集担当への采配を終えたラスファは、辺りを見回しながら俺に尋ねる。
「そうだな。できるだけ厄介な魔物がいる場所を先に片付けておこうか」
 出発が夜明け前だったせいもあり、まだ日も高い。早いうちに片付けておきたいところを聞いて、まずはそっちを優先する事にした。

 広げられた地図には、大まかな建物の位置と高さが描かれている。エルダードに近い構成をしているように思われたが…おそらく今のエルダードは改装や新築を施した家屋が大半なために、原型を留めてはいないだろう。
 外では軽快な金槌の音がこだましている。土木関係が得意な者もいたようだ。

「確か…こことここに厄介そうな魔物がいて、引き返してきたんでありました。あとこっちの…」
 そこまでギリアンが言った時、控えめな声がかけられた。
「あの…」
 振り返ると、犬獣人族の可憐な少女が立っていた。人間に耳と尻尾がついたような姿で、見るからに戦闘向きではない感じだ。

「フローネ…向こうのキャンプで待っているよう言っただろう?」
「でもお父様…キャンプの皆んなも何か役に立ちたいと言っております。私たちにも何かやらせて下さい!」
 え、む…娘さん?! ブルドッグのような父親には、カケラも似ていない。二人を見比べて、ちょっとだけ母親に興味が出てきたのは俺だけだろうか?

「…何か得意なことは? 他の人の特技も何かあるか?」
 ラスファは静かに尋ねた。フローネと呼ばれた彼女はパッと顔を輝かせると、大きく頷く。
「はっ…はい! 私や他の女性たちは布を織ることが得意です! あとは狩りが得意な方や皮の加工、あとは…えーと…」

 それを見てラスファは感心したように頷く。
「ギリアン、キャンプの非戦闘員をこっちに連れては来れないか?」
 その提案に、ギリアンは慌てたように振り返った。
「な、何をおっしゃいますラスファエル殿! 建国まではまだ間があります。ここはまだ危険で…」
 その意見に、俺も異を唱えた。
「いや、必要な措置だと俺も思う。何より戦えなくてもできることはあるし、何かせずにいられないんだろう? それに…」
 俺は再び彼女を振り返る。
「みんなで建国、したいよな?」
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