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intermission 6 アイドルは辛いよ

芸能活動再開!

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side-デュエル 4

 あらかたの聞き込みを終え、俺は白銀亭の戸口をくぐった。大方の話は似たり寄ったり…と思いきや、少々気になることがあった。

 襲撃者の特徴が、一致しないのだ。
 大男に細身の男、たまに女とバリエーション豊富なラインナップは不自然にもほどがある。
 聞けば聞くほど不可解な状況に頭を抱えながら戻れば『白銀亭』はさらに不可解な状況に陥っていた。


「…なんだこりゃ?」
 所狭しと貼られたポスター、酒場の隅に作られたステージ。極め付けは、そこで歌って踊るジェインとファンらしき十数人の男たち。
「…もう一度言うぞ? なんだこりゃ?」
 傍に来たアーシェに状況を尋ねると、彼女はイタズラっぽく笑いながらハチマキを渡して来た。『アイラブ・ジェイン!』と書いてある。

「…三回目、言ってもいいか? なんだこりゃ?」
「アイドルのイベントに、参加してもらうことにしたの。もちろん、うちから」
「はあ?」
 そこに聞き込みからラスファも帰って来た。
「…なんだこりゃ?」
 …ああ、言うよなあ。誰だって、この状況を目の当たりにしたら。

 アーシェとラグに経緯を聞いて、やっと納得はできた。これで女将からアイドルの募集を仕掛けられずに済むということで安心はしたが…とりあえず疑問は一つ。
 どこから湧いた、この熱狂集団?

 手に手に魔術具らしき光る棒を持って激しく踊り狂う集団には、正直引いた。しかも全員目がヤバい。
「…大丈夫なのか、この集団?」
「…大丈夫…多分」
 うん…一瞬の間でなんか察した。護衛はしっかり勤めようと思う。

「…アイドルの才能は十分あるようだよな…」
 イっちゃってる目で踊り狂う熱狂集団を見ながら呆然とラスファが呟くと、歌い終わってこっちに気づいたジェインが彼に手を振った。
「お帰りなさーい、ラスファ!」
  途端に、彼に殺気が集中する。

「ジェインたんに、声をかけてもらっただと…?」
「何者だ、あいつ…?」
「万死に値するでありますよ!」
「ジェインたーん! こっちにも笑顔プリーズ!」

 仕事上で慣れっこになっているせいか、この程度の殺気ではラスファは全く動じない。動じているとすれば、明らかに別の要素だと思う。
 「…なんか、えらいことになってるな。話は聞いた…頑張れよ」
「はーい、頑張りまーす!」

「我らの女神に気安く!」
「殺す! あいつ絶対殺ーす!」
 
 ちょっとばかり殺伐としたその空気に、ジェインは彼らをなだめにかかる。
「はーい皆さん! 彼はジェインの恩人です! 護衛とかもしてくれるので、おかしな手出ししたらお仕置きしちゃいますからね! めっ!!」
「「「「「はーい!」」」」」

「いや…大した手助けしてないから…」
 マジで困ったように手を振るラスファ。心持ち青くなっている。
「…えらいことになってしまった…」
 ぐったりと疲れた様子の彼に、容赦無く現実は襲いかかる。俺も疲れた。

 その場はアーシェとラグに任せて、俺たちは例の隠し部屋にこもった。それぞれの情報をすり合わせて作戦会議だ。逃亡とかじゃない、決して。
「まず、襲撃者の件だが…」
 話そうとした俺に被せるように、ラスファは断言した。

「一人や二人じゃないな。そこそこの数がいる、複数犯だ」
 無言で俺も頷いた。全くもって同意見だ。
「手口もプロのようだし、組織的に行なっていると見て間違いなさそうだ」
 やはりか。

「だが、動機は? 何が目的だと言うんだ?」
 何気ない俺の疑問に、ラスファは天井を仰ぎ見る。
「それなんだが…考えられるのは八百長や賭け、あとはイベントそのものの妨害か観光局への怨恨ぐらいか?」
「そうだな。悪意の対象がイベントそのものか観光局か、それがわかればだいぶ違うだろうな」

 あえて言わなかったが、一番厄介なケースが『賭け』絡みのいざこざだ。
 賭けだとしたら胴元が誰か、参加者は誰かという事まで絡んでくる。そうではないことを祈りつつ、今後のことを考える。
 
「どちらにしろ、ジェインが芸能活動を再開しているとわかればまた狙われる可能性が高いな…」
 
 …やっぱそうだよな…。
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