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short mission 3 偽物・類似品にご注意!

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side-アーチ 4

 あれから。
 結論から言や、今回の事件は解決しちまった。

 例の連中もただのニセ冒険者ってだけで、正規ギルド闇ギルドなんつーご大層な肩書きもなし。 
「予定より早く終わって良かったね!」
 マジで風呂借りたアーシェは上機嫌で言うが、こっちとしちゃ複雑だ。

「ただチヤホヤされたかった。ラクしたかった」
「村人たちを好き放題にこき使いたかった。贅沢できた」
「冒険者のフリしてりゃ、村人もビビって何も言われないかと…」

 ってよ。なんだこの動機? これって、オレらが何かと想定した上で策練ってスタンバイしてたのバカバカしくね? 

 まあ、あの『魔王サマ』のおかげで尋問はラクに済んだけどな。最初は『背後バックに大物がいる』なんつー清々しい寝言もあるにはあったが、奴のひと睨みで全員黙った。『なら、その後ろ盾ごと消し飛ばす』って言い草が効いたらしい。何しろ、人の背丈ほどの直径を持つ魔力弾を見た後だ。説得力がありすぎる。この先何があっても魔王サマラスファだけは敵に回したくねぇ。

 おかげで村人からも最初は腫れ物扱いされちまった。唯一、逃げずにあの場にいた女給仕は『スカッとした!』って興奮気味に触れ回っちゃいるようだがよ。
 
 村人たちにはオレらの正体も明かし、ソッコーで大体の事情を話しておいた。コイツらが完全な偽物だってことも含めてな。コイツらの逗留中の費用も計算してもらい、迷惑料も上乗せで請求させる事で話はついた。請求額を見て全員青くなってたのはいい気味だ。自業自得だがな。

 村の状況を考えると、請求額はいったん冒険者ギルドが立て替えてコイツらに返済させるという形に落ち着くだろうよ。けけけ、返済が滞りゃ、ナニが差し向けられるんだろうな~?

 この時点で日が落ちてしまっている。オレたちは村に一泊させてもらうことにした。
 その間は冒険話や武勇伝をせがまれたりと和やかに過ごし、デュエルなんかまた子供達によじ登られたりしていた…コイツ、チビどもにとっては登りがいのある置物って認識なのかね?
 
 ドランは酒が入ってここぞとばかりに武勇伝を披露していた。ってかこいつの武勇伝って、大半がゴブリン相手のもんだと思うんだけどな? おいおいおい、なんでオメーがドラゴン退治とかしたことになっちまってるんだよ? 盛るな盛るな新入りルーキー
 
 流石に言っとくが、オレも今回ばかりはナンパは封印だ。激しくイメージダウンさせられちまってる冒険者の地位を回復させにゃならんのよ…。そりゃオレだって涙を呑んでだけどな。
 それ以上に村人からは未だに弟子と夫婦扱いされちまっていた。…まあ仕方ねぇか。弟子は飲み慣れねぇ果実酒でほろ酔いになってオレにくっついてきちまってる。…おいおい、オレも男だからな? しらねぇぞ弟子?

 アーシェは魔法を見せてというリクエストに答えてヘトヘトになるまで光の矢を放ち、見かねたラスファがバトンタッチさせられていた。何故か村人にまで『魔王様』と呼ばれてたのには笑えたぜ。

 翌朝。
というわけで、ただ今絶賛山歩き中だ。解決した以上、村に長居も出来ねぇしよ? 当然ながら、例の『冒険者』らも引きずっている。エルダードに戻ったら、さっさとコイツら引き渡すぞ!

 「まだ歩くんですか?」
 「休みましょうよ~」

 引き連れたニセ冒険者たちは、事あるごとにこんな寝言をほざくが、自業自得だろうが。酒浸りでろくに運動もせず、威嚇のために鎧も脱がねぇで過ごしてたんだから当然だ。
 ちなみにコイツらは武装解除した途端にアーシェやラグが悲鳴をあげるくらい臭ったので、川に放り込んで丸洗いにした。おかげで多少はすっきりしているぜ。
 …あまり臭うと、魔物を引き寄せることもあるんでな。そう脅したら、慌てて互いに体をこすりあっていた。

 

「ふうむ、コイツらがね…。ご苦労だったな」 
 ギルドにたどり着いてオズワルドのおっさんにニセ冒険者を引き渡すと、オレらは心底ホッとした。こんな面倒な連中に長いこと付き合ってきた村人たちには心底同情するぜ。 

「あんたたちが、ギルドの評判を落とした困った子ってわけね? どうお仕置きしようかしら…?」
 怖ええええ! マルグリット姐さん、目が笑ってねぇし。
「坊やたち、ご苦労だったわね。この悪い子たちの処分は、任せてちょうだいね? 」
「皆さま、お疲れ様でした。これが報酬です。上納金分は差引させていただきましたので、その辺りはお気遣いなく」

 上機嫌なチャールズのおっさんに、そこそこの重さの金貨袋を渡されて、報告書を書けと釘刺されてからオレらは宿に戻った。あのニセ冒険者たちがどんな末路を辿るのかなんて興味もなけりゃ知りたくもねぇ。だがまあ、ろくな目にあいそうもねぇな。

「この先、ギルド関連の依頼が増えたりしてな」
 帰り道、誰にともなくデュエルが呟く。
「縁起でもねぇこと言うなよ…」
 
 だが、確かにこれをきっかけにしたように冒険者ギルドの依頼がちょいちょい舞い込むようになっちまった。

 ま、ここからは別の話になっちまうがね…。
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