217 / 405
short mission 3 偽物・類似品にご注意!
一触即発!
しおりを挟む
side-アーチ 3
…しばらく時は遡る。
待機組に連絡を取ったオレらは翌日、とりあえず酒場に足を運んだ。例の『居座り冒険者』に探りを入れるためだ。
目だ他ねぇ隅っこに陣取って観察するが…真っ昼間から酒クセェ男が五人、ゲラゲラ笑いながらジョッキを傾けて大騒ぎしてやがる。周囲の村人も、連中の顔色を伺っちゃビクビクしてるみてぇだ。ドランも弟子も一緒に連れてきているんだが、待機組と密かに合流すんのは正午ごろと伝えてある。オレ達は先にここに来て連中の様子を見ときながら、デュエル達の登場を待つってことで。
しかし、昼間っから泥酔ってのはねぇわ。
エルダードじゃ、いつ何時『空白地帯』からの魔物が来るかわかったもんじゃねぇ。自然災害みてぇなもんだが、ある程度は対処できるようにしとくってのがプロってもんだ。いざって時にベロベロで使いもんにならねぇって、目も当てらんねぇだろ…。
なに、オレだってたまにゃマトモなことも言うのよ? どう、惚れた?
決め手になることなんざ、今のオレにはわからねぇがよ。闇ギルドの構成員って可能性は、もはやオレの中じゃゼロに等しい。正規ギルドだろうが闇ギルドだろうが、こんな役立たずを受け入れるほど懐は深くねぇ筈だ。
だとしたらこいつらは、ただ『冒険者』を名乗るだけの偽物ってことになるよな?
その場合、結構なペナルティーが課せられる。考えてもみな、オレら冒険者の先人は血のにじむ思いで身一つから立ち上がり現在の制度を作ってるんだぜ? 仲間を集め組織を作って、時には白い目で見られながら今に至るまであらゆるものと戦い抜いてきたんだ。その制度を逆手に取ってバカやった挙句に冒険者の地位を危うくしたとあっちゃ…そりゃギルド全体を敵に回すことにならあ。
そう思ってるのはオレだけじゃねぇ筈だ。
現に弟子も好き放題やってるバカどもに悲しげな目を向けている。
「おい…ンな顔すんなよ」
「でも…でも師匠、こんなの…!」
目に涙を貯める弟子をそっと抱き寄せる。
「師匠じゃねぇよ。『今』は、違うだろが」
その一言に弟子…いや、新婚の妻は赤くなって黙った。
…ったく…柄にもねぇ…。
その間にも連中の好き放題は続いていた。
つまみを運んだ女給仕に絡み出したのだ。悲鳴をあげる女給仕の服を引きちぎる、ひときわ大柄な男。嫌がる彼女を容赦なく殴り飛ばすと、奴はさらに倒れた彼女に手を伸ばす。
「…もう見てられねぇだ!」
同感! 正直言ってオレも腰を浮かせた頃合いだ。だがその声はオレじゃねぇ。…ちっ、先越されたか…。
ドランは震える村人たちの前に出る。
ああ…予定より早いが、おっ始めようか。
ちょいと派手なパーティーをよ!
その時だった。
入り口に、ひょいとデュエルが顔を出したのは。
「あ、デュエル!」
ドランが うっかりと口走る。慌てた顔のアーシェが続くが『冒険者』たちは聞き逃さなかった。
「なんだ、お前ら知り合いか?」
緊迫した空気をとっさに読んだか、すかさずラスファがフォローを入れる。
「お前…傭兵部隊は退役したのか?」
その一言でドランは我に返った。
「お…おおう。こんなとこで会うとはな!」
なるほど…こう言っとけば、『護衛』とだけ知り合いってことにできるか。やるなこいつ!
「ふ…ふん、たかが二人増えたところで、数はこっちの方が多いんだ。なんとかなるぜ! かかれ! 殺す気でいけ!」
聞くだに陳腐な発言だが、こいつらは何もわかっちゃいねぇな。
戦いに足し算なんざ、役にたたねぇことをよ。
しかもこいつら、さらっとアーシェを数から外してやがる。
「来ていきなりどうなってんだ、こりゃ?」
誰にともなくボヤくデュエルに、オレは『商人』ヅラを崩さず静かに酒場の隅を指す。
そこにゃ、服をちぎられた挙句に殴られ怪我した給仕が弟子に介抱されていた。
…それ以上の言葉は、不要だった。
…しばらく時は遡る。
待機組に連絡を取ったオレらは翌日、とりあえず酒場に足を運んだ。例の『居座り冒険者』に探りを入れるためだ。
目だ他ねぇ隅っこに陣取って観察するが…真っ昼間から酒クセェ男が五人、ゲラゲラ笑いながらジョッキを傾けて大騒ぎしてやがる。周囲の村人も、連中の顔色を伺っちゃビクビクしてるみてぇだ。ドランも弟子も一緒に連れてきているんだが、待機組と密かに合流すんのは正午ごろと伝えてある。オレ達は先にここに来て連中の様子を見ときながら、デュエル達の登場を待つってことで。
しかし、昼間っから泥酔ってのはねぇわ。
エルダードじゃ、いつ何時『空白地帯』からの魔物が来るかわかったもんじゃねぇ。自然災害みてぇなもんだが、ある程度は対処できるようにしとくってのがプロってもんだ。いざって時にベロベロで使いもんにならねぇって、目も当てらんねぇだろ…。
なに、オレだってたまにゃマトモなことも言うのよ? どう、惚れた?
決め手になることなんざ、今のオレにはわからねぇがよ。闇ギルドの構成員って可能性は、もはやオレの中じゃゼロに等しい。正規ギルドだろうが闇ギルドだろうが、こんな役立たずを受け入れるほど懐は深くねぇ筈だ。
だとしたらこいつらは、ただ『冒険者』を名乗るだけの偽物ってことになるよな?
その場合、結構なペナルティーが課せられる。考えてもみな、オレら冒険者の先人は血のにじむ思いで身一つから立ち上がり現在の制度を作ってるんだぜ? 仲間を集め組織を作って、時には白い目で見られながら今に至るまであらゆるものと戦い抜いてきたんだ。その制度を逆手に取ってバカやった挙句に冒険者の地位を危うくしたとあっちゃ…そりゃギルド全体を敵に回すことにならあ。
そう思ってるのはオレだけじゃねぇ筈だ。
現に弟子も好き放題やってるバカどもに悲しげな目を向けている。
「おい…ンな顔すんなよ」
「でも…でも師匠、こんなの…!」
目に涙を貯める弟子をそっと抱き寄せる。
「師匠じゃねぇよ。『今』は、違うだろが」
その一言に弟子…いや、新婚の妻は赤くなって黙った。
…ったく…柄にもねぇ…。
その間にも連中の好き放題は続いていた。
つまみを運んだ女給仕に絡み出したのだ。悲鳴をあげる女給仕の服を引きちぎる、ひときわ大柄な男。嫌がる彼女を容赦なく殴り飛ばすと、奴はさらに倒れた彼女に手を伸ばす。
「…もう見てられねぇだ!」
同感! 正直言ってオレも腰を浮かせた頃合いだ。だがその声はオレじゃねぇ。…ちっ、先越されたか…。
ドランは震える村人たちの前に出る。
ああ…予定より早いが、おっ始めようか。
ちょいと派手なパーティーをよ!
その時だった。
入り口に、ひょいとデュエルが顔を出したのは。
「あ、デュエル!」
ドランが うっかりと口走る。慌てた顔のアーシェが続くが『冒険者』たちは聞き逃さなかった。
「なんだ、お前ら知り合いか?」
緊迫した空気をとっさに読んだか、すかさずラスファがフォローを入れる。
「お前…傭兵部隊は退役したのか?」
その一言でドランは我に返った。
「お…おおう。こんなとこで会うとはな!」
なるほど…こう言っとけば、『護衛』とだけ知り合いってことにできるか。やるなこいつ!
「ふ…ふん、たかが二人増えたところで、数はこっちの方が多いんだ。なんとかなるぜ! かかれ! 殺す気でいけ!」
聞くだに陳腐な発言だが、こいつらは何もわかっちゃいねぇな。
戦いに足し算なんざ、役にたたねぇことをよ。
しかもこいつら、さらっとアーシェを数から外してやがる。
「来ていきなりどうなってんだ、こりゃ?」
誰にともなくボヤくデュエルに、オレは『商人』ヅラを崩さず静かに酒場の隅を指す。
そこにゃ、服をちぎられた挙句に殴られ怪我した給仕が弟子に介抱されていた。
…それ以上の言葉は、不要だった。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~
空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。
どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。
そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。
ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。
スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。
※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。
なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。
女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました
初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。
ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。
冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。
のんびり書いていきたいと思います。
よければ感想等お願いします。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる