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short mission 3 偽物・類似品にご注意!
一触即発!
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side-アーチ 3
…しばらく時は遡る。
待機組に連絡を取ったオレらは翌日、とりあえず酒場に足を運んだ。例の『居座り冒険者』に探りを入れるためだ。
目だ他ねぇ隅っこに陣取って観察するが…真っ昼間から酒クセェ男が五人、ゲラゲラ笑いながらジョッキを傾けて大騒ぎしてやがる。周囲の村人も、連中の顔色を伺っちゃビクビクしてるみてぇだ。ドランも弟子も一緒に連れてきているんだが、待機組と密かに合流すんのは正午ごろと伝えてある。オレ達は先にここに来て連中の様子を見ときながら、デュエル達の登場を待つってことで。
しかし、昼間っから泥酔ってのはねぇわ。
エルダードじゃ、いつ何時『空白地帯』からの魔物が来るかわかったもんじゃねぇ。自然災害みてぇなもんだが、ある程度は対処できるようにしとくってのがプロってもんだ。いざって時にベロベロで使いもんにならねぇって、目も当てらんねぇだろ…。
なに、オレだってたまにゃマトモなことも言うのよ? どう、惚れた?
決め手になることなんざ、今のオレにはわからねぇがよ。闇ギルドの構成員って可能性は、もはやオレの中じゃゼロに等しい。正規ギルドだろうが闇ギルドだろうが、こんな役立たずを受け入れるほど懐は深くねぇ筈だ。
だとしたらこいつらは、ただ『冒険者』を名乗るだけの偽物ってことになるよな?
その場合、結構なペナルティーが課せられる。考えてもみな、オレら冒険者の先人は血のにじむ思いで身一つから立ち上がり現在の制度を作ってるんだぜ? 仲間を集め組織を作って、時には白い目で見られながら今に至るまであらゆるものと戦い抜いてきたんだ。その制度を逆手に取ってバカやった挙句に冒険者の地位を危うくしたとあっちゃ…そりゃギルド全体を敵に回すことにならあ。
そう思ってるのはオレだけじゃねぇ筈だ。
現に弟子も好き放題やってるバカどもに悲しげな目を向けている。
「おい…ンな顔すんなよ」
「でも…でも師匠、こんなの…!」
目に涙を貯める弟子をそっと抱き寄せる。
「師匠じゃねぇよ。『今』は、違うだろが」
その一言に弟子…いや、新婚の妻は赤くなって黙った。
…ったく…柄にもねぇ…。
その間にも連中の好き放題は続いていた。
つまみを運んだ女給仕に絡み出したのだ。悲鳴をあげる女給仕の服を引きちぎる、ひときわ大柄な男。嫌がる彼女を容赦なく殴り飛ばすと、奴はさらに倒れた彼女に手を伸ばす。
「…もう見てられねぇだ!」
同感! 正直言ってオレも腰を浮かせた頃合いだ。だがその声はオレじゃねぇ。…ちっ、先越されたか…。
ドランは震える村人たちの前に出る。
ああ…予定より早いが、おっ始めようか。
ちょいと派手なパーティーをよ!
その時だった。
入り口に、ひょいとデュエルが顔を出したのは。
「あ、デュエル!」
ドランが うっかりと口走る。慌てた顔のアーシェが続くが『冒険者』たちは聞き逃さなかった。
「なんだ、お前ら知り合いか?」
緊迫した空気をとっさに読んだか、すかさずラスファがフォローを入れる。
「お前…傭兵部隊は退役したのか?」
その一言でドランは我に返った。
「お…おおう。こんなとこで会うとはな!」
なるほど…こう言っとけば、『護衛』とだけ知り合いってことにできるか。やるなこいつ!
「ふ…ふん、たかが二人増えたところで、数はこっちの方が多いんだ。なんとかなるぜ! かかれ! 殺す気でいけ!」
聞くだに陳腐な発言だが、こいつらは何もわかっちゃいねぇな。
戦いに足し算なんざ、役にたたねぇことをよ。
しかもこいつら、さらっとアーシェを数から外してやがる。
「来ていきなりどうなってんだ、こりゃ?」
誰にともなくボヤくデュエルに、オレは『商人』ヅラを崩さず静かに酒場の隅を指す。
そこにゃ、服をちぎられた挙句に殴られ怪我した給仕が弟子に介抱されていた。
…それ以上の言葉は、不要だった。
…しばらく時は遡る。
待機組に連絡を取ったオレらは翌日、とりあえず酒場に足を運んだ。例の『居座り冒険者』に探りを入れるためだ。
目だ他ねぇ隅っこに陣取って観察するが…真っ昼間から酒クセェ男が五人、ゲラゲラ笑いながらジョッキを傾けて大騒ぎしてやがる。周囲の村人も、連中の顔色を伺っちゃビクビクしてるみてぇだ。ドランも弟子も一緒に連れてきているんだが、待機組と密かに合流すんのは正午ごろと伝えてある。オレ達は先にここに来て連中の様子を見ときながら、デュエル達の登場を待つってことで。
しかし、昼間っから泥酔ってのはねぇわ。
エルダードじゃ、いつ何時『空白地帯』からの魔物が来るかわかったもんじゃねぇ。自然災害みてぇなもんだが、ある程度は対処できるようにしとくってのがプロってもんだ。いざって時にベロベロで使いもんにならねぇって、目も当てらんねぇだろ…。
なに、オレだってたまにゃマトモなことも言うのよ? どう、惚れた?
決め手になることなんざ、今のオレにはわからねぇがよ。闇ギルドの構成員って可能性は、もはやオレの中じゃゼロに等しい。正規ギルドだろうが闇ギルドだろうが、こんな役立たずを受け入れるほど懐は深くねぇ筈だ。
だとしたらこいつらは、ただ『冒険者』を名乗るだけの偽物ってことになるよな?
その場合、結構なペナルティーが課せられる。考えてもみな、オレら冒険者の先人は血のにじむ思いで身一つから立ち上がり現在の制度を作ってるんだぜ? 仲間を集め組織を作って、時には白い目で見られながら今に至るまであらゆるものと戦い抜いてきたんだ。その制度を逆手に取ってバカやった挙句に冒険者の地位を危うくしたとあっちゃ…そりゃギルド全体を敵に回すことにならあ。
そう思ってるのはオレだけじゃねぇ筈だ。
現に弟子も好き放題やってるバカどもに悲しげな目を向けている。
「おい…ンな顔すんなよ」
「でも…でも師匠、こんなの…!」
目に涙を貯める弟子をそっと抱き寄せる。
「師匠じゃねぇよ。『今』は、違うだろが」
その一言に弟子…いや、新婚の妻は赤くなって黙った。
…ったく…柄にもねぇ…。
その間にも連中の好き放題は続いていた。
つまみを運んだ女給仕に絡み出したのだ。悲鳴をあげる女給仕の服を引きちぎる、ひときわ大柄な男。嫌がる彼女を容赦なく殴り飛ばすと、奴はさらに倒れた彼女に手を伸ばす。
「…もう見てられねぇだ!」
同感! 正直言ってオレも腰を浮かせた頃合いだ。だがその声はオレじゃねぇ。…ちっ、先越されたか…。
ドランは震える村人たちの前に出る。
ああ…予定より早いが、おっ始めようか。
ちょいと派手なパーティーをよ!
その時だった。
入り口に、ひょいとデュエルが顔を出したのは。
「あ、デュエル!」
ドランが うっかりと口走る。慌てた顔のアーシェが続くが『冒険者』たちは聞き逃さなかった。
「なんだ、お前ら知り合いか?」
緊迫した空気をとっさに読んだか、すかさずラスファがフォローを入れる。
「お前…傭兵部隊は退役したのか?」
その一言でドランは我に返った。
「お…おおう。こんなとこで会うとはな!」
なるほど…こう言っとけば、『護衛』とだけ知り合いってことにできるか。やるなこいつ!
「ふ…ふん、たかが二人増えたところで、数はこっちの方が多いんだ。なんとかなるぜ! かかれ! 殺す気でいけ!」
聞くだに陳腐な発言だが、こいつらは何もわかっちゃいねぇな。
戦いに足し算なんざ、役にたたねぇことをよ。
しかもこいつら、さらっとアーシェを数から外してやがる。
「来ていきなりどうなってんだ、こりゃ?」
誰にともなくボヤくデュエルに、オレは『商人』ヅラを崩さず静かに酒場の隅を指す。
そこにゃ、服をちぎられた挙句に殴られ怪我した給仕が弟子に介抱されていた。
…それ以上の言葉は、不要だった。
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