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Intermission 5 田舎大将、出陣!

田舎大将、戦闘終了!

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side-ドラン 7

 目を開けると、空は夕焼けに彩られていた。
 ありゃ、いつの間に寝てたのかおらは…。寝過ぎたせいなのかふらつく頭を抱えながら起き上がろうとすると、さっきの神官娘がおらを覗き込んで来た。リドはいかにもなセクシー美人が好みだったが、おらはこんな清楚な娘の方がいいべ。都会風に言えば、どストライクってとこだろうか?

「いけません、まだ安静にして下さい!」
 目の端に薄っすら涙を浮かべておらに懇願してるが、何かあったっけかな?
  その声に引かれたように、周囲からお仲間たちが姿を見せた。ああ、さっきの弓使いの…。

「…無茶をしたな。たかが蜂と舐めていたのか?」
  座り込んだおらに、木の腕を押し付ける。中にはどろりとした緑の液体が入っていた。
「飲みにくいが、一気に飲み干せ。毒消しの助けになる」
 おおう…飲むモンなのかこりゃ? ちっとばかし勇気がいりそうだ。しかし、蜂の毒? おらは一体…?

 そこで一気に記憶が蘇った。巨大な女王蜂に立ち向かい、全員で攻撃を仕掛け…。
「そうだ、女王蜂! あれからどうなっただ!?」
 一気に問いかけると彼は呆れ半分に答えた。
「…覚えてないのか? あんたの最後の一撃がトドメになって倒した。その直後にアンタも毒に倒れてな。この場に神官が少なかったから、ラグが苦労してたぞ」

 ラグってのか、あの可愛い神官娘は。世話かけちまったな、あとで何か礼をしねぇと。
 見回せば辺りはさながら野戦病院のような有様だった。うなされながら地面に寝かされて、青い顔をした連中が十人近くいる。ん? なんでリドも混じってるだ?

「近くにある施療院から、やっと応援が来たぞ」
 そう言いながら鼻先に傷を持った、歴戦の戦士然とした大男がやってきた。入れ替わるようにして弓使いが「飲んでおけよ」と釘を刺しながら去って行く。同じ薬湯を配るんかな? おらはまだ、手の中の薬湯を飲む勇気が出せねえ。
「いい一撃だったな」
 大男が拳を突き出してくる。おらはまだはめたままだったナックルを外すと、その拳に自分のそれを軽くぶつけた。どちらからともなく笑みがこぼれる。

「しかしあんた、タフだな。あれだけもろに毒を受けたというのに、真っ先に起きると思わなかった」
 感心したように彼は言う。そういや、おらの曾祖父さんがドワーフ族って聞いたことがあった。そのせいかやたらと頑丈で、病気ひとつしたことがねぇのが自慢だ。
 それを話すと大男は納得したように頷いた。
「道理で。あんた以外はまだ起きてなくてな、下手に動かすこともできずにその場に寝かせるしかなかったんだ」
 なるほどな。せめてもの配慮で、その辺からかき集めたらしい毛布に寝かされてるが…なかなか壮観だ。

  そこで意を決して手の中の薬湯を一気に流し込む。うげえええ、苦くて青くさい! 
「ラスファの薬はどぎついからな。料理は絶品なんだが。…水飲むか?」
 おらは顔をしかめて必死で頷いた。いかにも効きそうな味だが、確かにどぎつい!
 
「よお! あんたの連れ、起きたぜ」
 そこにひょいと金髪男が顔を出した。水を飲みながらそっちに目をやる。確か最初におらたちにこの街のことを教えてくれた…?
「運がねぇよな、ヤツが毒吐いた時の風下に居たんだぜ? 今薬湯を配られたとこだ」

 おーお、起き抜けにあの味は厳しいだなぁ…。
 おらは金髪男と同じ苦笑いを浮かべると、咳き込みながら薬湯を飲まされているリドを眺めた。

 …真っ先に逃げた報いかもな。
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