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short mission 2 採集師は苦労とともに

祝! 生還!

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Side-アーチ 3

「契約外のコカトリス狩りを強いたこと、さらに兄の身勝手な暴走で石にされたこと、本当に申し訳ありません!」
 勢いよく頭を下げ、勢いのままテーブルに額を打ち付けるマシュー。微動だにしねぇが結構いい音出たよな?
 うわーお…オレらを見回す女将の目線に熱を感じるわぁ…。もしかして女将、メデューサがご先祖にいたんじゃなかろうか?
「…依頼人が石にされたって?」
 マシューの話に、女将が火のような目でオレらを睨み付けた。それを見て、慌ててマシューがとりなす。
「いえ、すいませんがそれは兄が身勝手な行動をしたせいです! そしてもと通りに戻して頂いてありがとうございます!」
「いやー、いい経験ができましたぞ! はっはっは、腕がいい薬師殿のおかげで元どおりです!素晴らしい!」
「兄さん、ちょっと黙っててよ!」
「そのことについては、あとで話し合うとするかねぇ?」
 ひいいいいいぃぃぃぃ!

「あの、それでこれ…父から預かって来ました兄の依頼料と迷惑料、そして違約金です。本来ならばこんな形でお詫びするのは心苦しいのですが…」
 テーブルに出された皮袋からは、相当に重そうな音がした。おいおいおいおい、ンな金額をポンと出すって何モンだよ親父って!

「申し遅れました。我が家は各種薬品を扱います、コンラッド商会と申します。兄は半分勘当されかけておりますが、採集師としては認められておりまして…」
「「「「コンラッド商会!?」」」」

 オレら全員、絶句した。コンラッド商会と言えば、薬品業界ではトップクラスのところだ。女将から依頼を聞いた時は、ンなことひとっことも聞いてねぇし!

 その事を聞くと、マシューは苦笑しながら答える。
「ええ…兄は先妻の子な上、普段から薬品の材料以外に興味がなさすぎて色々とやらかすことが多かったもので半分勘当の身なんです。コンラッド商会の関係者と思われたくないということで別居の上、名乗ることは許されておりませんで…」
 そういってマシューは口ごもる。あ、これ以上聞いたらまずいやつだ。だが、デュエルは気になったようだった。

「貴方は彼と親しいようですが…」
「ええ、僕は後妻の連れ子なんです。家中では同じような日陰の立場として扱われていたもので、自然と距離が近くなっており放って置けなくて」
  おーお、真面目だねぇ。

  オレはついつい商売人やってた実家のことを考えちまった。たとえ扱いが日陰の立場っつっても、個人の才にゃ関係ねぇだろうによ…。別に飛び出して来たことにゃ後悔はねぇが、なんとなく共感するものはある。
 まあ不真面目なオレは、彼らと違う立場じゃあったんだがな…。
 
「わかりました、ですが違約金や迷惑料は受け取れません」
 ………はぁ!?
 オレの思考をぶった切ったのは、女将のあり得ねぇ一言だった。

「ど…ドミニク? 熱でもあるのか?」
「女将さん…悪いものでも食ったか?」
 ラスファとデュエルがおののきながら同時に女将に問いかける。くそ、全く同感だが物思いに耽ってたおかげで出遅れちまった。
「あんたら、あたしをなんだと思ってんだい? 」
「「金の亡者」」
 無言のまま二人をスリッパで張っ倒すと、何事もなかったように女将は続ける。黙ってて正解。

「お父様にはよろしくお伝えください。うちの冒険者たちにもいい経験になりました、と。そしてよろしければ、これからも何かありましたら白銀亭を思い出してくださいまし」

 あ、女将…こりゃ金よりもコネを取ったな。
 確かに単純な金よりも、コネは金で買うことはできねぇもんな。
 完全によそ行きモードで微笑む女将。この分だと、石化事件ももみ消してくれるんだな…ちょっと助かった。

 結局、マシューは金を全額置いていった。女将はホクホクしながら石化事件をもみ消しに入り、オレらにも緘口令を敷く。うん、そうなるだろうな…。
 マシューによるラスファの引き抜き話もあったが、そっちは女将が笑顔でブロックして今に至る。

 秘密部屋を出たオレたちは、揃って安堵のため息をついた。下手な依頼よりも気を使った数十分だったよなぁ。
 ともかく、女将に殺されることもなく生還できた! オレ、一生マシューに足向けて寝れねぇわ。


 そして翌日。
 やあ諸君! いい天気だね、これは最高の採集日和だとは思わないかね?」
「「「帰れー!」」」

  …今日も、エルダードは平和そのものだ…。
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