200 / 405
short mission 2 採集師は苦労とともに
祝! 生還!
しおりを挟む
Side-アーチ 3
「契約外のコカトリス狩りを強いたこと、さらに兄の身勝手な暴走で石にされたこと、本当に申し訳ありません!」
勢いよく頭を下げ、勢いのままテーブルに額を打ち付けるマシュー。微動だにしねぇが結構いい音出たよな?
うわーお…オレらを見回す女将の目線に熱を感じるわぁ…。もしかして女将、メデューサがご先祖にいたんじゃなかろうか?
「…依頼人が石にされたって?」
マシューの話に、女将が火のような目でオレらを睨み付けた。それを見て、慌ててマシューがとりなす。
「いえ、すいませんがそれは兄が身勝手な行動をしたせいです! そしてもと通りに戻して頂いてありがとうございます!」
「いやー、いい経験ができましたぞ! はっはっは、腕がいい薬師殿のおかげで元どおりです!素晴らしい!」
「兄さん、ちょっと黙っててよ!」
「そのことについては、あとで話し合うとするかねぇ?」
ひいいいいいぃぃぃぃ!
「あの、それでこれ…父から預かって来ました兄の依頼料と迷惑料、そして違約金です。本来ならばこんな形でお詫びするのは心苦しいのですが…」
テーブルに出された皮袋からは、相当に重そうな音がした。おいおいおいおい、ンな金額をポンと出すって何モンだよ親父って!
「申し遅れました。我が家は各種薬品を扱います、コンラッド商会と申します。兄は半分勘当されかけておりますが、採集師としては認められておりまして…」
「「「「コンラッド商会!?」」」」
オレら全員、絶句した。コンラッド商会と言えば、薬品業界ではトップクラスのところだ。女将から依頼を聞いた時は、ンなことひとっことも聞いてねぇし!
その事を聞くと、マシューは苦笑しながら答える。
「ええ…兄は先妻の子な上、普段から薬品の材料以外に興味がなさすぎて色々とやらかすことが多かったもので半分勘当の身なんです。コンラッド商会の関係者と思われたくないということで別居の上、名乗ることは許されておりませんで…」
そういってマシューは口ごもる。あ、これ以上聞いたらまずいやつだ。だが、デュエルは気になったようだった。
「貴方は彼と親しいようですが…」
「ええ、僕は後妻の連れ子なんです。家中では同じような日陰の立場として扱われていたもので、自然と距離が近くなっており放って置けなくて」
おーお、真面目だねぇ。
オレはついつい商売人やってた実家のことを考えちまった。たとえ扱いが日陰の立場っつっても、個人の才にゃ関係ねぇだろうによ…。別に飛び出して来たことにゃ後悔はねぇが、なんとなく共感するものはある。
まあ不真面目なオレは、彼らと違う立場じゃあったんだがな…。
「わかりました、ですが違約金や迷惑料は受け取れません」
………はぁ!?
オレの思考をぶった切ったのは、女将のあり得ねぇ一言だった。
「ど…ドミニク? 熱でもあるのか?」
「女将さん…悪いものでも食ったか?」
ラスファとデュエルがおののきながら同時に女将に問いかける。くそ、全く同感だが物思いに耽ってたおかげで出遅れちまった。
「あんたら、あたしをなんだと思ってんだい? 」
「「金の亡者」」
無言のまま二人をスリッパで張っ倒すと、何事もなかったように女将は続ける。黙ってて正解。
「お父様にはよろしくお伝えください。うちの冒険者たちにもいい経験になりました、と。そしてよろしければ、これからも何かありましたら白銀亭を思い出してくださいまし」
あ、女将…こりゃ金よりもコネを取ったな。
確かに単純な金よりも、コネは金で買うことはできねぇもんな。
完全によそ行きモードで微笑む女将。この分だと、石化事件ももみ消してくれるんだな…ちょっと助かった。
結局、マシューは金を全額置いていった。女将はホクホクしながら石化事件をもみ消しに入り、オレらにも緘口令を敷く。うん、そうなるだろうな…。
マシューによるラスファの引き抜き話もあったが、そっちは女将が笑顔でブロックして今に至る。
秘密部屋を出たオレたちは、揃って安堵のため息をついた。下手な依頼よりも気を使った数十分だったよなぁ。
ともかく、女将に殺されることもなく生還できた! オレ、一生マシューに足向けて寝れねぇわ。
そして翌日。
やあ諸君! いい天気だね、これは最高の採集日和だとは思わないかね?」
「「「帰れー!」」」
…今日も、エルダードは平和そのものだ…。
「契約外のコカトリス狩りを強いたこと、さらに兄の身勝手な暴走で石にされたこと、本当に申し訳ありません!」
勢いよく頭を下げ、勢いのままテーブルに額を打ち付けるマシュー。微動だにしねぇが結構いい音出たよな?
うわーお…オレらを見回す女将の目線に熱を感じるわぁ…。もしかして女将、メデューサがご先祖にいたんじゃなかろうか?
「…依頼人が石にされたって?」
マシューの話に、女将が火のような目でオレらを睨み付けた。それを見て、慌ててマシューがとりなす。
「いえ、すいませんがそれは兄が身勝手な行動をしたせいです! そしてもと通りに戻して頂いてありがとうございます!」
「いやー、いい経験ができましたぞ! はっはっは、腕がいい薬師殿のおかげで元どおりです!素晴らしい!」
「兄さん、ちょっと黙っててよ!」
「そのことについては、あとで話し合うとするかねぇ?」
ひいいいいいぃぃぃぃ!
「あの、それでこれ…父から預かって来ました兄の依頼料と迷惑料、そして違約金です。本来ならばこんな形でお詫びするのは心苦しいのですが…」
テーブルに出された皮袋からは、相当に重そうな音がした。おいおいおいおい、ンな金額をポンと出すって何モンだよ親父って!
「申し遅れました。我が家は各種薬品を扱います、コンラッド商会と申します。兄は半分勘当されかけておりますが、採集師としては認められておりまして…」
「「「「コンラッド商会!?」」」」
オレら全員、絶句した。コンラッド商会と言えば、薬品業界ではトップクラスのところだ。女将から依頼を聞いた時は、ンなことひとっことも聞いてねぇし!
その事を聞くと、マシューは苦笑しながら答える。
「ええ…兄は先妻の子な上、普段から薬品の材料以外に興味がなさすぎて色々とやらかすことが多かったもので半分勘当の身なんです。コンラッド商会の関係者と思われたくないということで別居の上、名乗ることは許されておりませんで…」
そういってマシューは口ごもる。あ、これ以上聞いたらまずいやつだ。だが、デュエルは気になったようだった。
「貴方は彼と親しいようですが…」
「ええ、僕は後妻の連れ子なんです。家中では同じような日陰の立場として扱われていたもので、自然と距離が近くなっており放って置けなくて」
おーお、真面目だねぇ。
オレはついつい商売人やってた実家のことを考えちまった。たとえ扱いが日陰の立場っつっても、個人の才にゃ関係ねぇだろうによ…。別に飛び出して来たことにゃ後悔はねぇが、なんとなく共感するものはある。
まあ不真面目なオレは、彼らと違う立場じゃあったんだがな…。
「わかりました、ですが違約金や迷惑料は受け取れません」
………はぁ!?
オレの思考をぶった切ったのは、女将のあり得ねぇ一言だった。
「ど…ドミニク? 熱でもあるのか?」
「女将さん…悪いものでも食ったか?」
ラスファとデュエルがおののきながら同時に女将に問いかける。くそ、全く同感だが物思いに耽ってたおかげで出遅れちまった。
「あんたら、あたしをなんだと思ってんだい? 」
「「金の亡者」」
無言のまま二人をスリッパで張っ倒すと、何事もなかったように女将は続ける。黙ってて正解。
「お父様にはよろしくお伝えください。うちの冒険者たちにもいい経験になりました、と。そしてよろしければ、これからも何かありましたら白銀亭を思い出してくださいまし」
あ、女将…こりゃ金よりもコネを取ったな。
確かに単純な金よりも、コネは金で買うことはできねぇもんな。
完全によそ行きモードで微笑む女将。この分だと、石化事件ももみ消してくれるんだな…ちょっと助かった。
結局、マシューは金を全額置いていった。女将はホクホクしながら石化事件をもみ消しに入り、オレらにも緘口令を敷く。うん、そうなるだろうな…。
マシューによるラスファの引き抜き話もあったが、そっちは女将が笑顔でブロックして今に至る。
秘密部屋を出たオレたちは、揃って安堵のため息をついた。下手な依頼よりも気を使った数十分だったよなぁ。
ともかく、女将に殺されることもなく生還できた! オレ、一生マシューに足向けて寝れねぇわ。
そして翌日。
やあ諸君! いい天気だね、これは最高の採集日和だとは思わないかね?」
「「「帰れー!」」」
…今日も、エルダードは平和そのものだ…。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
異世界召喚された俺は余分な子でした
KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。
サブタイトル
〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる