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short mission 2 採集師は苦労とともに
レッツ、調合!
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Side-アーシェ 1
あたしが唱えた魔法は、今度こそうまくいった!
ちゃんと今度は、コカトリスを眠らせたもんね!
すかさず兄貴が、さっきと同じ精霊魔法付きの矢を放って仕留める。やったね!
「どうも、デュエルさんたちまで寝てしまったみたいですよ?」
「あ、ホントだ」
ラグちゃんの指摘通り、動かなくなったコカトリスの近くでデュエルたちも倒れている。うっかり巻き込んじゃったんだ…ごめん!
高台から降りると、とんでもないことに気がついた。
「オーエンさん!?」
彼は、きっちりと固まった石像になっていた。しかも、なんだろこの愉快なポーズ?
「…とりあえず起こすぞ」
アーちんは兄貴が蹴り起こし、デュエルはあたしたちが揺り起こす。
「…んあ?」
起きるなりデュエルは聞いてきた。
「コカトリスは!? オーエンさんは!?」
コカトリスは仕留めたこと、オーエンさんは石像になったことを告げるとデュエルは沈痛な面持ちで黙り込んだ。背景で兄貴とアーちんが言い合いしてるけど、そっちはどうでもいいや。
「…ヘンルーダだな」
しばらくしてオーエンさんが抱えたままの薬草を見ると、兄貴がその名を呟く。
「ヘンルーダ?」
兄貴が言うには、この薬草は石化するクチバシで食べても石にならないから、コカトリスの主食になるんだって。同時に石化に対する特効薬でもあるのか…レポートに追加しなきゃ。
いやいや、そうじゃなくて!
愉快なポーズの石像になっても離さなかったのは賞賛に値するけど、その結果がこれじゃあね。
「できるかどうかわからないが、調合してみるか」
「石化の特効薬、ここで作るんですか?」
兄貴の決断に、ラグちゃんが目を輝かせる。そうよね、材料はたっぷりあるんだし! 何より、石像抱えて街まで帰るのもねぇ…。
とりあえず摘んできたヘンルーダをすりつぶすと、他で摘んできた採集カゴの中の材料と混ぜてなじませる。分量なんて測りようがないから、全部目分量だけど…大丈夫かな?
デュエルとアーちんはコカトリスの解体をしながら、女将さんへの言い訳を必死になって考えているようだった。
「どうするよ、この報告書?」
「どうするったって…。とりあえずはラスファの薬がうまく出来るのを祈るしかないな」
「バレたらマズイぞ…」
ラグちゃんは兄貴の調合をメモして、レポートに加える気満々。あたしはその手伝いをしながら愉快な石像を眺めた。
ホントどうすんのよ? 依頼人が石になっちゃうって、前代未聞の不祥事じゃないの?
あたしは女将さんのお仕置きを思い出すと、身震いをした。初心者ならいざ知らず、筆頭冒険者の不祥事ってフォローの入れようがない。宿の看板にも関わる重大事なわけだし。
あたしが悩んでる間に、特効薬ができたみたいだった。いつも使ってる木のお椀に、たっぷりと入った緑色の液体。うわ、不味そう…。
「石化している部分…というか、全体に塗り広げてくれ。しばらくすれば、石化は解ける…はず」
「塗り薬なんだ。てっきりコレ飲ませるのかと思った」
「あのな。石像が薬を飲めると思うか?」
「あ、そりゃそうか」
どろりとした緑の塗り薬を全体に広げると、なんとも言えない物体が出来上がる。これで、元に戻るのかな?
薬を塗って数分。
「なあああぁぁぁぁあんとおおおぉぉぉ! …ありゃ?」
オーエンさんが悲鳴をあげながらいきなり動き出した。
「良かった、元に戻った!」
オーエンさんにとっては、石化した瞬間から今までのタイムラグがない状態なんだね。だからあたしたちの動きがどうなってたのかは、全くわからないわけで…。
「おお、皆さん! すいませんな、取り乱しまして。それでは改めてコカトリスの討伐に参りましょう!」
「…………」
今、兄貴たち三人の心は一つになってるに違いない。絶っ対、張り倒したい衝動と戦ってるわ…。
「えー…ご心配なく。コカトリスの討伐は終了しております」
「またまた、ご冗談を!」
咳払い一つで気分を落ち着けて、大人な対応をしたデュエル。多分、あたしじゃ無理だ。
笑い飛ばしたオーエンさんに、兄貴は黙ってコカトリスの残骸を見せる。続いて、切り出したトサカや心臓も。
「なんとおおお!?」
残骸を呆然と眺めるオーエンさん。そして綺麗に切り出された、でっかい心臓やトサカに大声で叫び倒した。
「す…素晴らしい!!!」
その声に、兄貴たちはホッとしたみたいだった。確かに、入手した材料に気を取られて石化してたことは綺麗さっぱりと忘れている。
…さては…なかったことにするつもりね、兄貴たち。でもさ…?
そのつかの間、オーエンさんは一言こう聞いてきた。
「ところで…我輩は何故、塗り薬まみれなのですかな?」
「…うん、誤魔化しきれるわけないよね…」
「「「…デスヨネー…」」」
あたしが唱えた魔法は、今度こそうまくいった!
ちゃんと今度は、コカトリスを眠らせたもんね!
すかさず兄貴が、さっきと同じ精霊魔法付きの矢を放って仕留める。やったね!
「どうも、デュエルさんたちまで寝てしまったみたいですよ?」
「あ、ホントだ」
ラグちゃんの指摘通り、動かなくなったコカトリスの近くでデュエルたちも倒れている。うっかり巻き込んじゃったんだ…ごめん!
高台から降りると、とんでもないことに気がついた。
「オーエンさん!?」
彼は、きっちりと固まった石像になっていた。しかも、なんだろこの愉快なポーズ?
「…とりあえず起こすぞ」
アーちんは兄貴が蹴り起こし、デュエルはあたしたちが揺り起こす。
「…んあ?」
起きるなりデュエルは聞いてきた。
「コカトリスは!? オーエンさんは!?」
コカトリスは仕留めたこと、オーエンさんは石像になったことを告げるとデュエルは沈痛な面持ちで黙り込んだ。背景で兄貴とアーちんが言い合いしてるけど、そっちはどうでもいいや。
「…ヘンルーダだな」
しばらくしてオーエンさんが抱えたままの薬草を見ると、兄貴がその名を呟く。
「ヘンルーダ?」
兄貴が言うには、この薬草は石化するクチバシで食べても石にならないから、コカトリスの主食になるんだって。同時に石化に対する特効薬でもあるのか…レポートに追加しなきゃ。
いやいや、そうじゃなくて!
愉快なポーズの石像になっても離さなかったのは賞賛に値するけど、その結果がこれじゃあね。
「できるかどうかわからないが、調合してみるか」
「石化の特効薬、ここで作るんですか?」
兄貴の決断に、ラグちゃんが目を輝かせる。そうよね、材料はたっぷりあるんだし! 何より、石像抱えて街まで帰るのもねぇ…。
とりあえず摘んできたヘンルーダをすりつぶすと、他で摘んできた採集カゴの中の材料と混ぜてなじませる。分量なんて測りようがないから、全部目分量だけど…大丈夫かな?
デュエルとアーちんはコカトリスの解体をしながら、女将さんへの言い訳を必死になって考えているようだった。
「どうするよ、この報告書?」
「どうするったって…。とりあえずはラスファの薬がうまく出来るのを祈るしかないな」
「バレたらマズイぞ…」
ラグちゃんは兄貴の調合をメモして、レポートに加える気満々。あたしはその手伝いをしながら愉快な石像を眺めた。
ホントどうすんのよ? 依頼人が石になっちゃうって、前代未聞の不祥事じゃないの?
あたしは女将さんのお仕置きを思い出すと、身震いをした。初心者ならいざ知らず、筆頭冒険者の不祥事ってフォローの入れようがない。宿の看板にも関わる重大事なわけだし。
あたしが悩んでる間に、特効薬ができたみたいだった。いつも使ってる木のお椀に、たっぷりと入った緑色の液体。うわ、不味そう…。
「石化している部分…というか、全体に塗り広げてくれ。しばらくすれば、石化は解ける…はず」
「塗り薬なんだ。てっきりコレ飲ませるのかと思った」
「あのな。石像が薬を飲めると思うか?」
「あ、そりゃそうか」
どろりとした緑の塗り薬を全体に広げると、なんとも言えない物体が出来上がる。これで、元に戻るのかな?
薬を塗って数分。
「なあああぁぁぁぁあんとおおおぉぉぉ! …ありゃ?」
オーエンさんが悲鳴をあげながらいきなり動き出した。
「良かった、元に戻った!」
オーエンさんにとっては、石化した瞬間から今までのタイムラグがない状態なんだね。だからあたしたちの動きがどうなってたのかは、全くわからないわけで…。
「おお、皆さん! すいませんな、取り乱しまして。それでは改めてコカトリスの討伐に参りましょう!」
「…………」
今、兄貴たち三人の心は一つになってるに違いない。絶っ対、張り倒したい衝動と戦ってるわ…。
「えー…ご心配なく。コカトリスの討伐は終了しております」
「またまた、ご冗談を!」
咳払い一つで気分を落ち着けて、大人な対応をしたデュエル。多分、あたしじゃ無理だ。
笑い飛ばしたオーエンさんに、兄貴は黙ってコカトリスの残骸を見せる。続いて、切り出したトサカや心臓も。
「なんとおおお!?」
残骸を呆然と眺めるオーエンさん。そして綺麗に切り出された、でっかい心臓やトサカに大声で叫び倒した。
「す…素晴らしい!!!」
その声に、兄貴たちはホッとしたみたいだった。確かに、入手した材料に気を取られて石化してたことは綺麗さっぱりと忘れている。
…さては…なかったことにするつもりね、兄貴たち。でもさ…?
そのつかの間、オーエンさんは一言こう聞いてきた。
「ところで…我輩は何故、塗り薬まみれなのですかな?」
「…うん、誤魔化しきれるわけないよね…」
「「「…デスヨネー…」」」
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