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mission 3 祝祭の神様

帰ってきた日常

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Side-デュエル 14

 数日後。
 俺たちが日常に戻る頃に、白銀亭にセラがお付きのマイルスとともに訪ねてきた。
「アローガから、エルダードに引っ越しました。セラ様にとっては、辛い思い出ばかりの場所にとどまるよりも新たな土地で出直したほうがよろしいかと思いまして」
 そう言いながら深々と礼を言うマイルス。
 確かに、彼女にとってはその選択は正しい。

 ここは、冒険都市であり観光都市だ。締め切った神殿に閉じこもるよりも風通しのいい場所でのびのびと音楽を奏でるほうが、彼女にとってはプラスになるだろう。
 淀んだ場所で芸術と向き合うなんて、もともとセラには合わなかったのだ。

 例えるとするなら、日向で育つ植物もあれば日陰で育つ植物もある。植物と違うところは、自分の居場所を決めることができると言う点だ。自分の生きる場所を自分で定めて赴く。そうやってエルダードの人々は集い、街を形作ってきたのだから。

 彼女のように、生きる場所を見つけた者が流れ着き街は大きくなる。歴史の上でもそうやって多くの街が、国が作られてきたのだ。

「宿は決まったのかい? エルダードには芸術神の神殿はないんじゃなかったかね?」
 いつのまにか女将さんがエプロンの裾で手を拭きながらやってきた。
「とりあえず芸術神の近親に当たる神、知識神の神殿に身を寄せるつもりです。住み込みできればいいのですが…」
 セラの言葉に、おかみさんは笑みをもらす。
「そうかい。部屋が空いてなかったら、うちに来るといいよ。まずはつなぎをつけようかね…ラグ、いるかい?」

 女将さんに呼ばれて出てきたラグは、兄妹神の使徒であるセラとすぐ打ち解けたようだ。共に知識神の神殿に行き、そのまま居つくことになったらしい。こっちもひと段落ついたな。

 ちなみに今回の犯人であるジョージとやらは、魔術師ギルドから除籍処分となった。もちろん杖も没収され、魔力封じの刺青も施されたそうだ。
 奇妙なことに事件の後は人が変わったように大人しくなり、この先は田舎に引っ込んで畑でも耕して過ごすといっていたそうだ。

 前回の事件の首謀者である、領主の弟親子とよく似た状態だ。
 もしかしたらこれが分割された邪神が転じたという魔王が、復活する伏線のためにばらまいたと言う『カケラ』に飲み込まれた状態だったのだろうか?
 真相は、神ならぬ俺たちの身ではわかりようもない。…なら、あの芸術の女神サマならわかるのだろうか?
 ただ、もしそれが『カケラ』のせいだとしたら…その『カケラ』は沈静化したのか消滅したのか…そうでないなら、どこに行ったというのだろうか?


 今日も冒険都市の日常は続く。相変わらず街には観光客が溢れ、お祭り騒ぎのような騒がしさと歓声が止む気配がない。
 新たに白銀亭の常連となったフレッドの話では、あのゴブリン掌握の杖も無事魔術師ギルドの封印倉庫に収められたという。
「次の研究課題は、魔王の『カケラ』にしようかと。時間はかかりそうですが、やりがいはありそうですよ!」
 こっちもいい方向に歩みだしている。

 長い間、歴史の中で大きな謎と言われていた『カケラ』。それを研究するというなら、相当なスケールのことになるだろう。だが、彼ならやり遂げるという確信があった。
 なにせ、杖の研究でわざわざ一日かかる距離を何度も往復しているのだ。この粘りはなかなか他では見られない。


 観光客の群れに混じって、次の仕事の依頼人が訪れるまで…しばらくこの日常は続く。
 それまで、束の間の休息…と言うには忙しい日々が待ち構えていた。

 冒険都市は、今日も元気に回っている。



_________________

 読んでいただいている読者天使の皆さまへ。

 いつもありがとうございます。杏仁霜です。
 ただいまもう一つ別のシリーズを書いている最中でして、そちらの方を急ピッチで仕上げようかと思っており、その後で、再びこの『かるファン!』 シリーズを再開するつもりです。

 実は彼らともこの街とも十年近い付き合いで書いているので、愛着はこの上なく深いです。そう時間をおかず再開するつもりなので、ほんの少しだけお待ちください。

 私事で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

 ちなみに次作は六月の、ホラー・ミステリー大賞に出品予定です。できましたらそちらもよろしくお願いします(*^ω^*)



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