上 下
187 / 405
mission 3 祝祭の神様

盗賊の種明かし

しおりを挟む
Side-アーチ 11

 女神サマは聖女の誕生を見届けると、残った一人一人の修道女たちに声をかけて回る。ああ、そういや祝祭期間が終われば天界に帰るんだったな。
修道女たちに声をかけ終わると、今度はオレたちに向き直った。

 まずはデュエルに。
「うちの子が聖女になれたのも、貴方のおかげよ。気遣いの言葉をかけてくれなかったらあの娘ライラは立ち直れなかったわ。本当にありがとう」
「…それ、ライラに聞いたのか?」
「嬉しかったみたいよ?」
 そう言って笑みをこぼしながら、赤い…確か英雄の宝珠を手渡した。驚くデュエルにさらに語りかける。
「これを預けるわ。貴方ならこれを正しく使えるでしょうから」

 次はラスファに。
「あんたも苦労するわね。『彼女』が無茶言って来てもあたし、キミの味方してあげるからね? 強く生きるのよ」
「…そりゃどうも…」
 なんだそりゃ? 意味がわからねぇ。
「そうそう、これをお持ちなさいな。きっとキミを守ってくれるから」
そう言うと、青く澄んだ色合いの横笛を手渡した。

 最後はオレだ。
「あんた、厄介なものカケラ持ってるわね? くれぐれも、ようにね?」
 …あ、バレてた。
「まあ、セラを立ち直らせてくれたお礼がてら祝福の護符を授けようかしら。あと…」
 言いながらオレの首に護符をかけると、女神サマはずいっとオレに近づいた。なんだ? キスでもしてくれるのか? 嬉しいね♪
「うちの子たぶらかした、お仕置きも兼ねるわ。それに…」
 その先はオレの耳元で小さく言いながら、女神サマは…。
「あでッ!?」
 …オレに強烈なデコピンを食らわせた。

 そのまま彼女の姿は徐々に薄れていく。真面目な修道女たちは涙をこぼしながら見送る中、オレは額を抱えて別の意味で涙をにじませていた。
「っつぁ~!」
 デコピン、強烈にもホドがあるだろ…!


 さて、最後の後片付けだ。
 犯人のジョージは、ようやくのことで目を覚ましたようだ。容疑の内容はおおむね認め、あとは自警団に送ることになった。
 おおむねってのは、ただ一つ。例の欠けたまま行方不明だった女神の左手についてだ。アレだけは、奴は知らねぇだとよ。

 そりゃそうだ、オレが持ち出したんだからな。

 長いこと盗賊やってりゃ、それなりに鑑定眼も身につく。あの旧神殿で見つけた女神像の、折れた左手部分はとんでもねぇ値打ちもんだと気づいたんだよ。
 一目見てわかった。あの女神像は、芸術神の信者の中でも特に有名な彫刻家の作だった。ゴブリンどもの乱暴な扱いでちっとばかり傷はついたが、美術品としての値打ちはそうかわらねぇ程度だ。
 
 盗賊ギルドに行った時、こっそりとこいつを持ち込んでやったんだ。 案の定、あの御前様ギルドマスターは目の色変えてやがった。
 残りの部分を探そうと躍起になったんで、オレに尾行をつけさせたんだ。

 だがオレも、尻尾はつかませねぇ。あれからずっと神殿跡には足を向けなかったし、蔦で偽装された入り口は熟練の盗賊でも見つかりっこねぇよ! 
『御前様』が残りの部分を探そうと躍起になるだけの理由にはなった。

 そこまでやって盗賊を引き込んだ理由は、ちゃんとあるんだぜ?
 オレはこう吹き込んだんだ。

「ゴブリンが持っていた」
 
 ってな。案の定、今回のゴブリン掃討作戦に人員を割いたようだった。そんでこの先も、この辺りのゴブリンを討伐し続けてくれるだろうよ。

「うちの子の作品を勝手に使ったでしょ?」
 
 さっき女神サマにもそう言われてデコピン食らったんだが、アレは効いた! まあ「あたしの像」じゃなく「うちの子の作品」ってところは、あの女神サマらしいっちゃらしい。
 今頃は、雲の上にでもいるのかねぇ?
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

闇の吸血竜王に嫁入りします!

彩世幻夜
ファンタジー
神竜が創った世界、ラゴニアには六つの国がある。 エルシエルはそのうちの一つ、光の国セイン・ライトランドの男爵家の次女。 国の民の食料供給の安定を担うプランツ男爵家で研究者として日夜元気に働く彼女に王宮から夜会への招待状が届く。 それは、闇の国ダルク・アンダーの新竜王の花嫁を選ぶ宴への招待状。 かくして。 家族に嫁き遅れを心配されたお嬢様らしくないお嬢様の運命の歯車が回りだす。 ※毎日正午に一話ずつ公開! ※ファンタジー小説大賞エントリー中! ※9月1日、第一部完結!

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

能力者主義と無能力者正義の世界へようこそ

高桐AyuMe
ファンタジー
 人間と共に進化していった能力。次第に強力になっていくに連れ、世界は能力者主義に変貌した。 そんな中、世界の無能力者の中でも異端児、イレギュラーとも言える無能力者、零はのんびりと少し変わった学校で過ごしていた。  だが、そんな平穏は事件に巻き込まれるうちに失われていく。  更に、零をつけ狙う組織にも狙われながら、能力者VS無能力者の反乱に参戦していく。  反乱の先に零が求めるものとは一体……?  そして、零の抱える秘密とは……?  それが明かされるとき、二人の少年少女の活躍は限りある人にしか知られることとなる。  史上最高で最悪の戦いが、今始まる……!

処理中です...