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mission 3 祝祭の神様
夕刻の鐘で戦闘開始!
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side-ラスファ 9
…参ったな、これは…。
あれからしばらく、門を挟んで膠着状態に陥っている。
すぐ見える位置にある森で、隠れてるつもりでバレバレなゴブリンはすでに視認できるまでに溜まっていた。
「…迎え撃つ準備をするか」
弓を最大限に活用するなら、出来るだけ高地に陣取ったほうがいい。地上で迎え撃つ地元自警団員に対する援護射撃も出来るだろう。私の他にも数人、弓などの飛び道具を使う自警団員がいる。その全員が、街の門の上にある見張り台を兼ねた通路に配備される予定となっていた。
すでに夕刻の鐘まで、秒読み段階になっている。開始を告げる音色は間もなく鳴り響こうとしていた。
その時…上に向かおうとする私と、アーチの後ろに誰かがやって来た。
赤く染まりかけた空に、夕刻の鐘が鳴り響いた。
森に陣取っていたゴブリンどもが一斉にこちらに走り寄る。外壁に沿って配置された篝火に、自警団たちの武器が照り返される。
戦闘が始まった!
打ち合わせ通り、最初に外壁沿いの篝火から精霊魔法で炎の矢を複数飛ばして牽制、外壁を登れない事を知らしめる! さらに敵陣の魔術師に、こちらにも術師がいると分からせるのが目的だ。迂闊に魔法は打ち込めないと思わせればこっちのもの、無茶な魔術攻めを防ぐためでもある。
歓声を上げる自警団員がテンションを上げる!
奇声をあげてやって来るゴブリンは数十匹単位。それぞれが粗末な武器を手にこちらに踊りかかって来ていた。立ち向かう自警団はそれを受け止め、一気に屠って行く。
上から戦況を見つつ援護に矢を放つ分にはよく見える。冒険者並みとまではいかないが、ここの自警団はなかなか訓練が行き届いていた。普段からよくゴブリンや野盗などを相手にしているのだろう。
第一陣が全滅すると、さらに次々と敵が追加投入されて来る。森に潜伏しきれないほどの数が集められているのだ、数で押されることは確定事項だろう…。今のところは戦陣は崩れていない。そう長くも持たないかもしれない…!
だが、やるしかなかった。我々の背後には、一般人が多く暮らす街がある。この街の存続は、この一戦にかかっていると言っても過言ではなかった。
数百にも上る矢に射抜かれ、敵は次々に数を減じていく。だが、まだまだゴブリンの投入は続いていた。
むせ返るような血の匂いを風が巻き上げる。今のところ自警団員に被害が出た様子はないが、倒れたゴブリンの死体は数知れず。その仲間の死体を踏み越えて、なおもゴブリンは挑みかかって来た。通常ではあり得ない闘志を見せる敵。
操られているせいで、一切怯む事はないのだろう。最初から逃亡という選択肢を奪われているゴブリンが、いっそ哀れに思える光景だ。
もちろん自警団も無傷とはいかない。大小取り混ぜた傷が彼らにも刻まれている。治癒魔法を使える者は、この場には乏しい。神殿にいる修道女たちは神聖魔法を使える者が少なく、いたとしてもほとんどが怯えて出て来たがらなかったのだ。
その時戦闘の雄叫びに混じって、かすかな旋律が背後から聞こえて来た。これはおそらく『治癒』の効果を持った呪歌だ。
派手なポンチョをまとった人影が門の内側でリュートを爪弾いている。その音色に乗って、治癒の効果が傷ついた自警団員たちの傷と疲れを癒していた。
だが、士気の回復までは手が回らない。
「隊長、一旦引いて態勢を整えましょう! 数が多すぎます!」
悲鳴交じりに誰かが放ったその一言をきっかけに、陣形が崩れ始めた。
悪いことは続くものだ、その時街道側から悲鳴が上がった。外から帰って来たらしい馬車の馬が、鋭いいななきとともにその場に棒立ちになる。
「ひいいいいいっ!? なんだ、どうなっているんだ!?」
街の外から戻って来る馬車が、この戦いに出くわしたのだ。外に出ることは制限されていたが、遅いこの時間帯に戻って来る馬車があることは計算外だったようだ。
___拙い、近くのゴブリンが彼らも敵とみなして襲いかかる素振りを見せた!
急遽数本の矢をつがえて放つが、群がるゴブリン全てを射抜くには至らない! 他の弓使いたちは馬車に当てる事を危惧して矢を放てずにいた。
___もう一度! 間に合え…!
再び数本の矢をつがえるが、間に合いそうもない!
その時だった。大きな人影が馬車の間に割り込み、手にした槍でゴブリンどもを薙ぎ払った!
…参ったな、これは…。
あれからしばらく、門を挟んで膠着状態に陥っている。
すぐ見える位置にある森で、隠れてるつもりでバレバレなゴブリンはすでに視認できるまでに溜まっていた。
「…迎え撃つ準備をするか」
弓を最大限に活用するなら、出来るだけ高地に陣取ったほうがいい。地上で迎え撃つ地元自警団員に対する援護射撃も出来るだろう。私の他にも数人、弓などの飛び道具を使う自警団員がいる。その全員が、街の門の上にある見張り台を兼ねた通路に配備される予定となっていた。
すでに夕刻の鐘まで、秒読み段階になっている。開始を告げる音色は間もなく鳴り響こうとしていた。
その時…上に向かおうとする私と、アーチの後ろに誰かがやって来た。
赤く染まりかけた空に、夕刻の鐘が鳴り響いた。
森に陣取っていたゴブリンどもが一斉にこちらに走り寄る。外壁に沿って配置された篝火に、自警団たちの武器が照り返される。
戦闘が始まった!
打ち合わせ通り、最初に外壁沿いの篝火から精霊魔法で炎の矢を複数飛ばして牽制、外壁を登れない事を知らしめる! さらに敵陣の魔術師に、こちらにも術師がいると分からせるのが目的だ。迂闊に魔法は打ち込めないと思わせればこっちのもの、無茶な魔術攻めを防ぐためでもある。
歓声を上げる自警団員がテンションを上げる!
奇声をあげてやって来るゴブリンは数十匹単位。それぞれが粗末な武器を手にこちらに踊りかかって来ていた。立ち向かう自警団はそれを受け止め、一気に屠って行く。
上から戦況を見つつ援護に矢を放つ分にはよく見える。冒険者並みとまではいかないが、ここの自警団はなかなか訓練が行き届いていた。普段からよくゴブリンや野盗などを相手にしているのだろう。
第一陣が全滅すると、さらに次々と敵が追加投入されて来る。森に潜伏しきれないほどの数が集められているのだ、数で押されることは確定事項だろう…。今のところは戦陣は崩れていない。そう長くも持たないかもしれない…!
だが、やるしかなかった。我々の背後には、一般人が多く暮らす街がある。この街の存続は、この一戦にかかっていると言っても過言ではなかった。
数百にも上る矢に射抜かれ、敵は次々に数を減じていく。だが、まだまだゴブリンの投入は続いていた。
むせ返るような血の匂いを風が巻き上げる。今のところ自警団員に被害が出た様子はないが、倒れたゴブリンの死体は数知れず。その仲間の死体を踏み越えて、なおもゴブリンは挑みかかって来た。通常ではあり得ない闘志を見せる敵。
操られているせいで、一切怯む事はないのだろう。最初から逃亡という選択肢を奪われているゴブリンが、いっそ哀れに思える光景だ。
もちろん自警団も無傷とはいかない。大小取り混ぜた傷が彼らにも刻まれている。治癒魔法を使える者は、この場には乏しい。神殿にいる修道女たちは神聖魔法を使える者が少なく、いたとしてもほとんどが怯えて出て来たがらなかったのだ。
その時戦闘の雄叫びに混じって、かすかな旋律が背後から聞こえて来た。これはおそらく『治癒』の効果を持った呪歌だ。
派手なポンチョをまとった人影が門の内側でリュートを爪弾いている。その音色に乗って、治癒の効果が傷ついた自警団員たちの傷と疲れを癒していた。
だが、士気の回復までは手が回らない。
「隊長、一旦引いて態勢を整えましょう! 数が多すぎます!」
悲鳴交じりに誰かが放ったその一言をきっかけに、陣形が崩れ始めた。
悪いことは続くものだ、その時街道側から悲鳴が上がった。外から帰って来たらしい馬車の馬が、鋭いいななきとともにその場に棒立ちになる。
「ひいいいいいっ!? なんだ、どうなっているんだ!?」
街の外から戻って来る馬車が、この戦いに出くわしたのだ。外に出ることは制限されていたが、遅いこの時間帯に戻って来る馬車があることは計算外だったようだ。
___拙い、近くのゴブリンが彼らも敵とみなして襲いかかる素振りを見せた!
急遽数本の矢をつがえて放つが、群がるゴブリン全てを射抜くには至らない! 他の弓使いたちは馬車に当てる事を危惧して矢を放てずにいた。
___もう一度! 間に合え…!
再び数本の矢をつがえるが、間に合いそうもない!
その時だった。大きな人影が馬車の間に割り込み、手にした槍でゴブリンどもを薙ぎ払った!
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