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mission 3 祝祭の神様

犯人と証言

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side-デュエル 10

「まずは魔術師ギルドに行くか」
 俺は肩を回しながら通りの雑踏を進んだ。迷子案内所にいる間中ずっと、登り甲斐のある置物と化していたのだ。多少のだらしなさは勘弁して欲しい。

「随分と懐かれてましたね」
 隣を歩くフレッドに苦笑する。ここまで戻った以上は実質フレッドについて来る必要もないのだが、成り行きのまま魔術師ギルドまで一緒に行くことになった。
 しかし…彼の場合は仮装が妙にしっくりきすぎて違和感がない。何せ、古代の大賢者風の格好だというのだから。
 古めかしいローブに三角帽子、さらにわざとらしい節だらけの杖と言う出で立ちだが、妙にしっくりと身についていた。一瞬これが通常運転かと、うっかり誤解しかけたくらいだ。 それを伝えると、彼は残像が出るくらいに首を振る。
「とんでもない! かの大賢者、オルガレフ様を尊敬してのことです!」

 その名前なら、俺も聞いたことがある。
 一千年前の魔導帝国に君臨したという、伝説の魔術女王イヴリーン・ローダーデイルのそばに仕えたことでも知られる古代の魔術師だ。子供向けの絵本にもなっているくらいだ、憧れる者も多かろう。なんとなく微笑ましい気分で、俺はいい加減取りたいクマ耳を手直しする。俺のご先祖に居たかもしれない熊獣人族には悪いが、正直言って周囲の視線が地味に痛い。

 魔術師ギルドでフレッドに件の彼を呼んでもらうか、噂を聞くくらいはしておきたい。そう思ってまず呼び出してもらおうとしたのだが…。

「いない!?」
「ええ。数日間ここの寮を空けるとかで連絡を受けております」
 事務的に答える寮の管理人の言葉に、俺たちは声を失った。
「いつ戻るかはわかりますか?」
  フレッドの焦り声に、管理人は手元のノートをめくって答える。
「…外部での実験の進み具合によって変動するとかで、正確にはわかりかねます」
 管理人は淡々と告げると、ノートを閉じて頭を下げた。これは…完全に、クロか?

「…フレッド。彼…ジョージの部屋を調べさせてもらうことはできるか?」
 管理人から少し離れて俺は小声でフレッドに囁く。
「出来ないこともないですが、相当な理由が必要ですよ?」
「そっちはなんとかしてみせる。とりあえずこう言ってくれ」
 俺はフレッドに耳打ちした。

「すいません! ジョージの部屋に、忘れ物しちゃって!」
「規則につき、中には…」
「急いでるんですよお! 彼に貸してたノート、置きっぱなしなんです! 次の試験が近いっていうのに、勉強できなくて本当に困ってるんです! なんで今、外になんか行っちゃうかなあ?」
 結構腹芸も利くフレッドの『必死の』頼みに、管理人も動かされたようだった。
「…仕方ないですね」

 
「十分だけですよ、それまでに探してくださいね」

 管理人の言葉が合図となり、俺たちはダッシュでジョージの部屋に飛び込んだ。
 俺は机中心に当たりをつけて捜索を開始する。
「協力しておいてなんですが、何も出てきませんって。ジョージの無実は証明できますよ!」
 フレッドはそう言うが、俺にも冒険者としての直感がある。書棚や引き出しを探ると、妙な手応えがあった。
「これは…!」
 アローガまでの地図にゴブリンの生息範囲の推測図、そして…杖についての資料がそこにあった。
「それ! その杖の資料…僕が作ったものです! 一度どこかで無くして、探していたんです。なんでこんなところに?」
 俺はため息をついた。…その時点で気付けよ、お前は…。

 その後は、聞き込みに終始した。証拠を押さえれば後は動機を探るだけ。
 ジョージの素行や最近の行動、そしてトラブルの有無など…。そのうち数人が有力な情報を持っていた。

「ジョージ? 確か、しばらく前から女を追い回してるってよ。誰かは知らないけど」

「なんでも、告白する前に振られたって。どうせあいつのことだから粘着してたんじゃないの?」

「前の彼女も、別れるときには随分とこじれたしたみたいね。嫌がらせもされたとかなんとか。少なくとも、私はあいつ無理」


 数々の証言を聞いて、フレッドはショックを受けたようだった。親しくしていた相手の、薄暗い一面。わからなくもないが、この場合はどうにも…。
 
 そんな中、通りの向こうから舞い上がる砂埃が見えた。どんどん近づいてくる!?
 身構えたそのとき、足元から「きゅー!」という鳴き声が聞こえた。
 黄色い地に水玉模様、風呂敷を背負ったつぶらな目の猫がお行儀よくそこに座っている。
「お前、アーシェの召喚獣…? どうした?」

 背負った手紙を見て、俺はそこからダッシュでアローガに戻ることになった。

『周辺に大量のゴブリンが集められている。大至急アローガに戻ってきてくれ!』

 思ったよりも動きが早い! どういうことだ!?
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