私の番はこの世界で醜いと言われる人だった

えみ

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同棲編

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ベッドの上にネグリジェを広げ(ゼブラさんが握りしめていたからしわくちゃになっている)て、私はそのネグリジェをベッドの上で吟味し・・・ベッドの下でゼブラさんは正座をしている。
言っておくけど、正座をしてねと私は言っていない。
彼は自ら正座したのだ。

何度かベッドに座るよう勧めたけど、ゼブラさんは頑なに動かない。

ちょっと話をして、私が怒っていないことを察してくれたらベッドに座ってくれるだろう。
そう思って、これ以上言わないことにした。

「それで、このネグリジェってどうしたの?」

「そ、それは・・・」

何と説明したものか、悩んでいる様子だった。
こういうときは言い繕うことなく事実を説明するのが一番話が収まるところなんだけどなぁ。

「ゼブラさん、嘘ついちゃだめだからね」

「これは、部下の一人が、婚約時期である今のうちに訓練してはと持ってきてくれたのだ」

竜人国の王は、ちょっと詰めたらあっさりしゃべった。

訓練とは、例の女の人に慣れるために練習しているアレのことだろうか。
前に花言葉を勉強していたけど、ここにきてネグリジェとは・・・だいぶレッスンは進んでいるようだ。

でも、ネグリジェを使った訓練とは・・・何をするんだろう。

私が疑問に思っていることを察してか、ゼブラさんは引き続いて説明をしてくれた。

「はじめは・・・ネグリジェを見る練習だったのだ」

曰く、ネグリジェを見れなければ、それを着ている私を見ることもできない。
初夜に私が着るであろう寝間着(ネグリジェ)をまず見るところから練習しましょうという話だったようだ。

そんな練習をする人っているんだね。
初めて聞いたわ。


「だが・・・、こ、この衣服をミーアが着るかもしれないと考えてしまい・・・私はなんて下劣なことを・・・」

ああ・・・。なるほど、それで、妄想しちゃったら罪悪感を覚えたわけだ。
それを下劣って言っちゃうのは、純粋に育ったからなのか、竜人の常識なのか・・・判断がつかない。
今竜人の常識をいろいろ勉強しているけど、こういう閨事までは聞いてないからなぁ流石に。
まあ、どちらにしても、私とゼブラさん二人の問題なのだから、常識に囚われすぎず、二人で考えれば良いか。


「ゼブラさん、妄想したらどきどきした?」

「な!!!」

直接的すぎたかな。
いや、でも遠回しに聞いたら変な誤解生みそうだもん。

「私で妄想したんでしょ?別に怒ってないから、純粋な感想を聞かせてもらいたいなぁ」

羞恥プレイになってしまうが、彼氏(未来の旦那様)が私でどんなえっちな妄想をしたのか気になるのだ。
いつもなら寝ている時間をとっくに過ぎてしまったが、ゼブラさんのせいで眠気は飛んでしまった。
責任?をとって、これくらいは教えてもらいたい。

目の前にいるゼブラさんは、顔を真っ赤にして、かなり動揺していた。
いまでもベッドの中で私に抱き着くのも恥ずかしがってるくらいだもんなぁ。
手をつないだり、ちょっとハグはできるけど・・・軽い接触以外はいまだに初心な反応を見せてくれる。

そんな彼が、私でいろんなことを考えてしまうだなんて・・・



ちょっとかわいいよね。





「ミ、ミーアが・・・」

「ミーアが?」

顔を下に向けているので、私からは後頭部しか見えない。
大きな身体を丸めて肩がぷるぷると震えている様は、彼を慕う国民には見せられない。
私だけが見ることができる、特別な姿のうちの一つだ。

ごくりを唾を飲み込む音が聞こえて、彼は膝の上に乗せたこぶしを強く握った。


「ミーアが、この服を・・・!手に取っている姿は、とても・・・魅力的、だった・・・」


妄想の私は着てすらなかったのか・・・!!!!


せめて着るところまでは妄想してほしかった。
それから先のことは今のゼブラさんには無理かもしれないけど、ネグリジェをマネキンに着せているくらいなんだから、私に着せる妄想くらいはさあ・・・!


「すまない、気持ちが悪くなってしまうよな・・・」

むしろもっと妄想してもらいたいくらいなんだけど。これで気持ち悪いとか言っていたら、世の中にいる18禁作品を読む人全員が変態になってしまう。
まあ、ゼブラさんの場合は、人に嫌悪される見た目の男が変な妄想しているから、って理由なんだろうけどさ。

ここは、真っ向から気持ち悪くないと否定しても、彼は信用してくれそうにないな。
であれば、反対にけしかけてみるか。


「ゼブラさん、私のこと、抱っこしてくれない?」

急に話を反らしたからか、ゼブラさんは不思議そうな顔をして顔を上げた。
よくわかってないけど、私にお願いされたら拒否することも理由を聞くこともせず、彼はゆっくり立ち上がった。
ベッドに座る私も、ベッドの下に降りて、両手を広げる。
ゼブラさんに真正面から抱っこされるのはあまりないことだけど、彼であれば簡単に私を抱っこできるだろう。

私の両脇の下に手をいれて、持ち上げる。
そのままだと私の脇が痛くなると思ったのか、彼は自らの右腕に私を座らせて、左腕でそれを支えるように腰に手を添えた。
小さい女の子がお父さんに抱っこされてるみたいな恰好だけど、ゼブラさんくらいがっしりした体格の人だと、これができちゃうんだよなぁ。

視界が高くなったので、私も少し怖くてぎゅっとゼブラさんに抱き着いた。
ゼブラさんの身体がちょっとだけ硬直したけど、それは気にしない。これから硬直する以上に動揺させるつもりなんだから。

「ゼブラさん、私が何をしても気持ち悪いと思ったり嫌いになったりしない?」

「ミーアのことを悪く思うなどあるわけがない!ミーアにされて嫌なことなど、あるはずもない!」

ちょっと音量を調整しながらも、全力で否定してくれる婚約者に、私の心臓がちょっと忙しくなった。
これから行うことを考えても、ちょっと心臓が煩いけど・・・私がここで行動しないとずっと清い関係が続きそうだから、ゼブラさんには悪いけど、大人の階段を登ってもらおう。


「じゃあ、ちゃんと目を開けて私を見ててね」

ゼブラさんの腕の中で、私はプチ、とボタンを外した。


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