私の番はこの世界で醜いと言われる人だった

えみ

文字の大きさ
上 下
21 / 36
恋人関係

ちゃんと男の人でした

しおりを挟む
お風呂に入って、食後の紅茶を飲んで、ゼブラさんとゆっくりお話をしていたら、もう寝る時間になっていた。

侍女の人も執事の人もこの城にはたくさんいるはずなのに、まるでゼブラさんと二人きりで過ごしているかのようだった。
それはみんなが気を遣ってくれているからかもしれないけど、おかげでゼブラさんとゆっくりお話することができた。

明日の朝に私は家に帰って、その時にゼブラさんも一緒についてきてくれて、今回の外泊の件を説明してくれるらしい。その先触れをこれから送ってくれるらしい。
正直、ゼブラさんは竜王様だし、むしろ番の私をさらってさっさと手を出しちゃって城に監禁しちゃっても、私の家は全く文句を言えないんだけど・・・ゼブラさんは私の家族に対してかなり気を遣ってくれている。
「こういうことはきちんとしたいんだ」って言っていた。
結婚した後も、私の家族と良い関係を築くために、きちんと段階を踏んで結婚したいし、そのために段階的に両親に許可をもらいたいらしい。

・・・うん、お父さんお母さん、ついでにお兄ちゃん・・・
明日、一国の主が娘を外泊させてしまったお詫びに訪れるみたいだから、心の準備はあまりできないと思うけど、気持ちを確かに持ってね。
かなり恐縮しちゃうかもしれないけど・・・
とくにお父さんは頭がさらに寂しくなるかもしれないけど・・・


「ゼブラさん、明日は外泊したことの説明と、同棲の許可をもらうんだよね?」

「ああ、誠心誠意、ミーアを長期に渡り居座らせてしまった詫びをして、純潔を汚したわけではないと説明を「それはしなくて良いから!」

両親にそんな話をされるなんて、恥ずかしくて死んじゃうわ!
というか、私が勝手にお邪魔しちゃったんだから、謝るのは私のほうなんだけどなぁ・・・。
ゼブラさんはそこを全く譲ってくれない。

良く言うと、かなり真面目。悪く言うと、頑固だ。

「ゼブラさん、それじゃあいつになったら・・・結婚するの?」

「ごふっ!!!!」


ゼブラさんは飲んでいた紅茶を噴き出した。
うん、本当ピュアだなぁ・・・。
こういうところが好きなんだけどね。
でも、このままでは私はおばあさんにならないと結婚できないかもしれないよ。
人間の寿命は竜人とは違うんだからさぁ・・・。


「み、みみみみミーア!そ、それは男の私から・・・!」

その男のゼブラさんが全く行動に移してくれないから、困ってるんだよ。
ゼブラさん、私と健全にお付き合いをするために番の本能を抑え込んで、身体まで壊しちゃってるんだから、どう考えてもさっさと一緒に住んだほうが良いでしょ。
両親としても、結婚まだなの?番って言っていたけど間違ってたのかな?事情でもあったりする?と心配してくれているくらいだ。

かく言う私も・・・

ゼブラさんが手を出してくれないのは、私に魅力がないからかなーとか思ったり思わなかったり・・・

実は、私のほうが積極的に結婚したがるのは、それはそれで悲しいからあまり言わなかった。
前世のことを引きずっている自覚はあるよ。
でも、やっぱり”結婚”とかは相手に望まれてしたいよね。

あと結婚してーとかあんまり言いすぎて重いと思われたくなかったし。


うーん。
初対面の時の強引なゼブラさんを、またここで見てみたいなー。
”もう結婚だ”とか”ここからもう出す気はない”とか、冗談でも良いから言ってくれないかなー。
・・・言いそうにないなぁ。
私のこと好きすぎて、嫌われないようにすることに100%意識を持って行っているから、手を出さないんだろうしなぁ。



「ミーア、だが、もう同棲してしまったら、私は自らを抑えられないだろう・・・」

あれ、言いそうにないことを言い出したよ。
お酒でも飲んだかな?
でも、ゼブラさんの右手にあるグラスの中って水じゃなかったっけ。

私たちはソファに並んで座っているので、手を伸ばせば容易に身体に触れることができる。
ゼブラさんは、グラスをテーブルに置いて、右手首を左手で握りしめた。


「明日、ミーアの両親に同棲の許可をもらってしまったら・・・独占欲を抑えられず、きっと私は君を・・・」

今まで慈愛に満ちた視線ばかりだったのに。
ゼブラさんはゆっくり私と視線を合わせて・・・私の唇に視線を向けて、小さく息を吐いた。
まるで、ごちそうを前に待てをされる怪物のよう。
初対面の時に見た彼がそこにいた。


捕食者の目。


本能で身体が僅かに震える。
心臓が驚いたように跳ねて、身体中が熱くなる。
のどが渇く。
でも、ここで何か言葉を発しないと、このまま食べられてしまいそうな気がしてとっさに口を開こうとした。

けれど、私の口が音を発する前に、ゼブラさんは右手で私の頭をぽんぽんと撫でた。


「すまない、怖がらせて・・・。君が嫌がることはしない。同棲しても、結婚しても、君の意思を無視することはしないと誓う。だからどうか、逃げないでくれ。」


うん、ゼブラさんに対する認識が間違っていた。
彼は確かに純粋ピュアだけど・・・


ちゃんと男の人でした。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

俺の番が見つからない

Heath
恋愛
先の皇帝時代に帝国領土は10倍にも膨れ上がった。その次代の皇帝となるべく皇太子には「第一皇太子」という余計な肩書きがついている。その理由は番がいないものは皇帝になれないからであった。 第一皇太子に番は現れるのか?見つけられるのか? 一方、長年継母である侯爵夫人と令嬢に虐げられている庶子ソフィは先皇帝の後宮に送られることになった。悲しむソフィの荷物の中に、こっそり黒い毛玉がついてきていた。 毛玉はソフィを幸せに導きたい!(仔猫に意志はほとんどありませんっ) 皇太子も王太子も冒険者もちょっとチャラい前皇帝も無口な魔王もご出演なさいます。 CPは固定ながらも複数・なんでもあり(異種・BL)も出てしまいます。ご注意ください。 ざまぁ&ハッピーエンドを目指して、このお話は終われるのか? 2021/01/15 次のエピソード執筆中です(^_^;) 20話を超えそうですが、1月中にはうpしたいです。 お付き合い頂けると幸いです💓 エブリスタ同時公開中٩(๑´0`๑)۶

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

私の上司は竜人で私はその番でした。

銀牙狼
恋愛
2021年4月、私は仙台HBG(星川バンクグループ)銀行に就職。優しい先輩にイケメン上司、頑張るぞと張り切っていたのにまさかこんなことになるなんて。

王命で泣く泣く番と決められ、婚姻後すぐに捨てられました。

ゆうぎり
恋愛
獣人の女の子は夢に見るのです。 自分を見つけ探し出してくれる番が現れるのを。 獣人王国の27歳の王太子が番探しを諦めました。 15歳の私は、まだ番に見つけてもらえる段階ではありませんでした。 しかし、王命で輿入れが決まりました。 泣く泣く運命の番を諦めたのです。 それなのに、それなのに……あんまりです。 ※ゆるゆる設定です。

獣人公爵のエスコート

ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。 将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。 軽いすれ違いです。 書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。

リス獣人のお医者さまは番の子どもの父になりたい!

能登原あめ
恋愛
* R15はほんのり、ラブコメです。 「先生、私赤ちゃんができたみたいなんです!」  診察室に入ってきた小柄な人間の女の子リーズはとてもいい匂いがした。  せっかく番が見つかったのにリス獣人のジャノは残念でたまらない。 「診察室にお相手を呼んでも大丈夫ですよ」 「相手? いません! つまり、神様が私に赤ちゃんを授けてくださったんです」 * 全4話+おまけ小話未定。  * 本編にRシーンはほぼありませんが、小話追加する際はレーディングが変わる可能性があります。 * 表紙はCanvaさまで作成した画像を使用しております。

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

【完結】番が見ているのでさようなら

堀 和三盆
恋愛
 その視線に気が付いたのはいつ頃のことだっただろう。  焦がれるような。縋るような。睨みつけるような。  どこかから注がれる――番からのその視線。  俺は猫の獣人だ。  そして、その見た目の良さから獣人だけでなく人間からだってしょっちゅう告白をされる。いわゆるモテモテってやつだ。  だから女に困ったことはないし、生涯をたった一人に縛られるなんてバカみてえ。そんな風に思っていた。  なのに。  ある日、彼女の一人とのデート中にどこからかその視線を向けられた。正直、信じられなかった。急に体中が熱くなり、自分が興奮しているのが分かった。  しかし、感じるのは常に視線のみ。  コチラを見るだけで一向に姿を見せない番を無視し、俺は彼女達との逢瀬を楽しんだ――というよりは見せつけた。  ……そうすることで番からの視線に変化が起きるから。

処理中です...