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恋人関係
ゼブラさんは無理をします
しおりを挟むゼブラさんと同棲するために親を説得するけど、一先ずは今日一日、ゼブラさんは身体を休めるために、お仕事を休むことになった。
私がいるとゼブラさんは仕事よりも私をかまいたがるので、ゆっくり休んでもらうために、私は一度、侍女人たちとお話をする名目で部屋を辞した。
私が部屋を出る時に、ゼブラさんはちょっとだけ悲しそうな顔をしていたけど…ゼブラさんに少しでもゆっくり休んでもらうためだ。私もゼブラさんとお話するのは我慢するので、ゼブラさんもちょっとだけ我慢してもらいたい。
ゼブラさんの部屋の隣、同棲を始めた時に入る部屋を早速教えてもらった。
今日明日で工事をして部屋の内装を整えるらしいので、一度客室に案内されて、着替えをさせてもらった。
シンプルなのが良いと伝えたら、シンプルだけど綺麗なドレスを用意してもらった。
貴族のドレスがどういうのか私は分からないけど、借りたものはシュッとしたドレスだ。裾は広がらずに、身体のラインが出るもの。
平民が着ているものとあまり変わりがない。
うーん、ゼブラさんの統治の仕方が出てるのかも…装飾を増やして貴族が贅沢三昧に過ごさないように。
ただ、質が良いことは見ただけでわかる。
無駄遣いをせずに、お金は必要なところで使ってるんだろうなぁ。
私に良いものを着せてくれるのは、必要なことかは分からないけど…
「この服は、ゼブラさんが選んでくれたのでしょうか」
「えぇ、番様と交際が始まった折に、いつか着てもらいたいと張り切って購入されたものです」
服の色は、ゼブラさんの瞳の金色が刺繍で使われている。
普段彼の纏っている深いブルーのマントと同じ色だ。
ゼブラさん、このドレスを買う時は、私のこといろいろ考えてくれたのかな…。
自分の色を纏わせるっていうのは、独占欲が見えてちょっと嬉しい。
「皇帝と、お昼をご一緒されると良いと思います。皇帝も大変喜ばれるでしょう。」
ゼブラさんは、私がどんな服を着ていても照れたり褒めたり、私が喜ぶ反応をしてくれる。
私の姿を見て、少しでも元気になってくれるなら、いくらでも見せたいと思う。
「喜んでもらえたら、嬉しいです。」
侍女さん達は、とても微笑ましそうな顔を私に向けて、お茶と朝食を持ってきてくれた。
昨日は夕食を食べてなかったからとてもお腹が空いていたんだ。
お腹が鳴ってしまう前に、食べ物を口に運んだ。
お昼ご飯まで、ゆっくり紅茶を飲んだり、ゼブラさんが用意してくれていた洋服を見せてもらったりしていたら、あっという間に時間が来てしまった。
ゼブラさん、ゆっくり休めただろうか…
少しソワソワしてしまう気持ちをそのままに、ゼブラさんの寝ている医務室に向かった。
すると…
「ミーア!あぁ、とても綺麗だ…!」
ゼブラさんは、何故か右手にペンを、左手に書類を持って、私を迎えた。
ペンと書類、それだけでわかる。
この人…仕事してたな!?
私が鬼の形相をしているからだろう。
ゼブラさんは、とろけるような表情から、怯えたうさぎのような表情へと一変した。
誰がゼブラさんに仕事をさせたのか、
周囲に視線を向けたら、全員が戸惑った顔をしていた。
いや、どちらかというと助けて欲しいという表情だった。
その表情を見ると、ゼブラさんが自ら仕事をしようとしたことが分かる。
標的が分かったので、彼の元に歩みを進める。
一歩一歩近づいて行くと、彼は嬉しそうな顔をしたり青い顔をしたり忙しそうだ。
「ゼブラさん、なんで休んでないの?」
目の前まで来たところで、まずは彼にそれを問うた。
「ね、眠気がなかったので、少しでも仕事をしようと…もう元気になったのだ、だから大丈夫だ」
「何が大丈夫なんですか?昨日、倒れたんですよ」
ゼブラさんは、少しよく分からないといった顔をして、もう大丈夫なんだが…と、当たり前のことのようにそう呟いた。
「竜人は頑丈なんだ。昨日たっぷり寝たから、もう十分体力も気力も回復したし…「お医者さんがそう言ったんですか?」い、いや…」
ゼブラさんの横にいる人に目を向けたら、あっさりと「1日は安静にするよう言っておりました」と白状した。
ゼブラさんはキッとそちらに視線を向けたが、私がゼブラさんの書類とペンをひょいと取り上げたことで、彼の視線は再び私に向けられた。
「私、ゼブラさんのこととても心配してるんですよ。今日は休んでもらいます!」
わかった、私の今日の仕事は、ゼブラさんを寝かせることだ。
そう使命感を抱いて、周囲の人に仕事道具を片付けてもらう。
本当に急がないといけない仕事があったら、部下の人が進言するだろう。
何も言わずに、寧ろ私の言葉に意気揚々と片付けを始めている時点で、みんなの心は私と共にあると思っても良いはずだ。
「な、待て、どこへ行く!?」
私とゼブラさんを置いて、みんなで部屋を出て行く。
ゼブラさんの静止の声にも振り返らずに、ソルトさんが最後に「こちら眠気を誘うアロマです」と私にアロマセットを渡して、しっかり扉を閉めて行った。
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