私の番はこの世界で醜いと言われる人だった

えみ

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恋人関係

誤解です

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気がついたら、窓から朝日が差し込む時間だった。

ずっと起きているつもりだったのに、うとうとしてしまっていた。
なんだかんだ、竜人の国まで来たからか、ちょっと疲れてしまったようだ。

ゼブラさんの腕に両腕を回して寝ていたけど、筋肉のしっかりついた腕だったから、ちょうど良い抱き枕だった。
いや、私が添い寝してるのに、なんで気を失ってるゼブラさんを抱き枕にしてるんだろう。
私って結構最悪なやつじゃない?

ゼブラさんに尽くしてもらってばかりなので、私も同じだけ返さないといけない。
好きって気持ちをもっと返したいんだけど…と、
ゼブラさんの様子を見ようと身体を腕に密着させて、顔を上に持ち上げた。


「あ、ぅ…っ、な、なぜこんな…っ」


ゼブラさん、顔を真っ赤にして震えてました。





いつもいつも気苦労をかけてるなーと思いながらも、また「また夢なのか、いや、夢と見せかけて真実なのか、それとも誰か私を騙して…」と混乱しだしたので、なんとか正気に戻ってもらおうと身体を起こしてベッドサイドに置いてた水を飲んでもらった。
少し緩いけど、喉を通る水の感触でゼブラさんは漸く目を覚ました。

「な、ななななぜミーアが私のベッドにいるのだ!?私は、何か大きな過ちを…!?」

だめだ、さらに混乱しただけだった。

取り敢えずゼブラさんの状況、私がここに来た経緯を簡単に説明した。
何度もゼブラさんが色んな意味で声を上げそうになったが、早朝からそれは流石にまずいと思って両手で口を塞がせてもらった。

最終的には消沈したように黙って、「俺はなんて無様な姿を…、これでは惚れてもらうどころか呆れられる…」とぶつぶつ呟きだした。
もうこっちは惚れてるし格好良いと思ってるから正気に戻ってもらいたい。

むしろ、こんなに尽くしてもらってたのにのほほんと生活していた私を誰か罵倒して欲しい。

取り敢えず、彼との今後を話し合わないといけないけど、目が覚めたら人を呼ぶように言われてる。
お医者さんとかに様子を見てもらった後、二人きりになれるように今のうちにゼブラさんにお願いしておこう。

「ゼブラさん、今からお医者さんを呼ぶけど、その後二人で話したいから時間もらえないかな?」

「医者?二人で話す…?わ、私は良いが…何の話をするのだ?」

なぜかすごく絶望した顔をしているけど、絶対これ誤解してるよなぁ…
別れ話じゃないからね。

誤解したままにすると、再びゼブラさんが無茶をしかねないので、今のうちに誤解を解いておこう。

「今後の二人のことだよ。ここまできたら、もう二人だけの問題じゃないよね。いろんなこと決めとかないと、種族も違えば文化も違うし、後で大変なことになっても困るからさ」

取り敢えず、早くみんなを呼ぼうと、テーブルに置いた鈴を手に取る。
これを鳴らすと、みんなが入ってきてくれることになってる。

ゼブラさん元気そうだけど、やっぱりお医者さんにちゃんと診てもらってからじゃないと安心できないし…

そう思って鈴を鳴らしたら、その音にハッとしたゼブラさんが高速でベッドの上に正座した。

「そんな…俺は…!取り返しのつかないことを…!!」

ゼブラさんは、ふるふると拳を震わせて、自らの膝に叩きつけた。
その行動に驚いて身体が少し跳ねた。
え、何!?
取り返しのつかないこと!?
そりゃ10日徹夜したことや体調を崩したことは良くなかったけど、取り返しはつくよ!?

ドアからソルトさんやお医者さん、侍女?の人たちが入ってきたので、そちらに私が視線を向けたところで…
なぜかゼブラさんは自らの頬を殴った。

「な、なにを!?」

お医者さんが思わず声を上げる。
そりゃそうだ、治療しようとしてるのに今もう一つ治療箇所を増やしたんだから。

他のみんなは驚きで言葉が出ない。
もちろん私も。

全員が制止したところで、ゼブラさんは大きく息を吸って、凄まじい眼光で私を見つめた。
こ、こわ…


「ミーアも、そのお腹の子も、必ず幸せにする!順番が逆になってしまったこと、一生をかけて償う!だから…、私と結婚してくれ…!!」

何やら盛大な誤解をしたゼブラさんの発言に、その場にいた全員が混乱を極め…
お医者さんは私のお腹に手を当てて、
ソルトさんは結婚準備と部屋を出ようとして、
侍女?さんたちは出産準備とか言い出して声をあげて…



事態の収拾に、1時間必要としました。
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