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恋人関係
ゼブラさんは看病をします
しおりを挟むきちんと風邪を引きました。
「私は…!私は君に、君の家族に、なんと詫びれば良いのか…!もういっそこの命を差し出し「謝らなくて良いけど、どうしてもって言うなら、ちょっとデートではしゃいでしまいましたすみません。で良いんじゃない?」
はしゃぐ、という私の発言に、ゼブラさんは顔を真っ赤にして叫びそうになるのを両手で懸命に堪えた。
うん、はしゃいだのははしゃいだよね、私の手に。
私の手を愛で続けたことは、そんなに赤面して叫びたくなるほどのことじゃないんだけどなぁ…
初心なゼブラさんからすれば、どえらいことをした感覚なんだろうね。
いずれにしろ、私の風邪は私自身が招いたことだ。
寒いところと知っていながらいちゃいちゃする場所に森の日光があまりさしてこないところを選んだ私が悪い。
ゼブラさんは流石風邪をひかないくらい身体を鍛えていたようだ。いや、これは種族の違いなのかもしれないけど…
こういう屈強なところはカッコいいんだよね。
恋愛ってなったらポンコツだけどさ。
「ちょっと喉が痛くなって、ちょっとぼーっとしてるだけだよ。普通に話せるしご飯も食べれる」
そう、ただの微熱なのだ。
食欲がないなんてことはないし、喉も少し痛いくらいで話すのにあまり支障はない。
だが、ゼブラさんは鋭い眼光を私に向けた。
流石にちょっと怖い。
「ダメだ!きちんと寝なくては…!寒くないか?欲しいものは?身体に良いものを持ってこようか?」
二人目のお母さんみたいだ。
因みに一人目、本物のお母さんの方は私の風邪に「自業自得」と呆れて、一日休みをくれた。私がいない分お店の人出が足りないから、私の様子は見に来ない。
人出が足りてても看病はしないだろう。
風邪で死ぬような年齢じゃないし、本当に軽度の症状だから。
しかし、目の前にいる私の彼氏様は違う。
この世の終わりのように自分を責めているし、どのようにして償えば良いのかを考えている。
そんなに本気にならなくて良いのに…
これは、何かお願いしたほうが丸く収まるのかな。
「ゼブラさん、それじゃあ一つお願いしても良い?」
「何だ?何でも言ってくれ!国宝でもなんでも持ってくる!!」
国宝はいらないけどね。
そろそろ寝たいなーと思っていたので、ゼブラさんのギャップも見れるというちょうど良いお願いを思いついた。
その名も…
「絵本読んで」
ベッドサイドにある丸い木の椅子に腰掛けたゼブラさんは、身体を丸めてちいさくなりながら、棒読みで絵本を読んでくれた。
絵本は結構貴重なもので、これはゼブラさんのお父さんにもらったものだ。
種族を確認せずに息子の番が10代と聞いて、小さい女の子だと勘違いして急いで用意したらしい。
ゼブラさんの側近が渡してくれたのを、横にいたゼブラさんが持って帰ると言い出したのを慌てて止めて、折角なのでいただいたのだ。
この世界であまり見たことがなかったし、紙は平民でも手に入るけど結構貴重だしね。
珍しいものは貰っておくに限るし、何より私のために準備してくれたのが嬉しい。
「お姫様は、白馬に乗ってきた王子サマに連れられて、お城に行くことになりました。」
微妙に棒読みなので、なかなか眠たくならないけど…ゼブラさんが慣れないながらも一生懸命話してくれるのが嬉しい。
本当に私のわがままを聞いてくれて、頼み事を叶えてくれるんだから、本当に優しいよね。
ゼブラさんの姿を見ているだけで飽きない。あー本当、私も結構ゼブラさんのことが好きなんだなー。
「ゼブラさん、好きだよ。」
「な…!?」
思わず絵本を落としそうになるが、流石ゼブラさん、すさまじい瞬発力で絵本を再度掴んで、その絵本で顔を隠した。
「ふ、ふふふ不意打ちは卑怯だ…!」
「ゼブラさんは?」
ちょっと体調不良だからか、ちょっと甘えたくなる。
ゼブラさんからの愛情は毎日たっぷりもらっているけど、こうしている時にも言ってもらいたい。
ゼブラさんは、絵本を恐る恐る下ろして…私の目を見て、「私は、」と言葉を出してから一度口をつぐんだ。
「ゼブラさん?」
「…私は、好きじゃ足りない。愛してるの言葉でも足りない。…この思いを伝えられる言葉が見つからない。」
凄い殺し文句を投げてきた。
こんなことを言ってくれる人を、愛さずにいられるだろうか。
「ゼブラさん、いちゃいちゃしましょ。」
そのあと、私の発言に対して「これ以上罪を重ねられない!」と逃げようとするゼブラさんの手を握って逃げるのを阻止し、
寝るまで一緒にいて欲しいとお願いして、寝るまでゼブラさんに手を握ってもらった。
起きたら深夜だったので、いつまで一緒にいてくれたのか分からないけど…忙しいはずなのに、わざわざ来て看病してくれたのはとても嬉しかった。
風邪をひいてよかったなーと思いつつ、ゼブラさんを振り回してしまったので、今度お詫びにクッキーでも焼こうと思いました。
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