12 / 36
恋人関係
ゼブラさんは看病をします
しおりを挟むきちんと風邪を引きました。
「私は…!私は君に、君の家族に、なんと詫びれば良いのか…!もういっそこの命を差し出し「謝らなくて良いけど、どうしてもって言うなら、ちょっとデートではしゃいでしまいましたすみません。で良いんじゃない?」
はしゃぐ、という私の発言に、ゼブラさんは顔を真っ赤にして叫びそうになるのを両手で懸命に堪えた。
うん、はしゃいだのははしゃいだよね、私の手に。
私の手を愛で続けたことは、そんなに赤面して叫びたくなるほどのことじゃないんだけどなぁ…
初心なゼブラさんからすれば、どえらいことをした感覚なんだろうね。
いずれにしろ、私の風邪は私自身が招いたことだ。
寒いところと知っていながらいちゃいちゃする場所に森の日光があまりさしてこないところを選んだ私が悪い。
ゼブラさんは流石風邪をひかないくらい身体を鍛えていたようだ。いや、これは種族の違いなのかもしれないけど…
こういう屈強なところはカッコいいんだよね。
恋愛ってなったらポンコツだけどさ。
「ちょっと喉が痛くなって、ちょっとぼーっとしてるだけだよ。普通に話せるしご飯も食べれる」
そう、ただの微熱なのだ。
食欲がないなんてことはないし、喉も少し痛いくらいで話すのにあまり支障はない。
だが、ゼブラさんは鋭い眼光を私に向けた。
流石にちょっと怖い。
「ダメだ!きちんと寝なくては…!寒くないか?欲しいものは?身体に良いものを持ってこようか?」
二人目のお母さんみたいだ。
因みに一人目、本物のお母さんの方は私の風邪に「自業自得」と呆れて、一日休みをくれた。私がいない分お店の人出が足りないから、私の様子は見に来ない。
人出が足りてても看病はしないだろう。
風邪で死ぬような年齢じゃないし、本当に軽度の症状だから。
しかし、目の前にいる私の彼氏様は違う。
この世の終わりのように自分を責めているし、どのようにして償えば良いのかを考えている。
そんなに本気にならなくて良いのに…
これは、何かお願いしたほうが丸く収まるのかな。
「ゼブラさん、それじゃあ一つお願いしても良い?」
「何だ?何でも言ってくれ!国宝でもなんでも持ってくる!!」
国宝はいらないけどね。
そろそろ寝たいなーと思っていたので、ゼブラさんのギャップも見れるというちょうど良いお願いを思いついた。
その名も…
「絵本読んで」
ベッドサイドにある丸い木の椅子に腰掛けたゼブラさんは、身体を丸めてちいさくなりながら、棒読みで絵本を読んでくれた。
絵本は結構貴重なもので、これはゼブラさんのお父さんにもらったものだ。
種族を確認せずに息子の番が10代と聞いて、小さい女の子だと勘違いして急いで用意したらしい。
ゼブラさんの側近が渡してくれたのを、横にいたゼブラさんが持って帰ると言い出したのを慌てて止めて、折角なのでいただいたのだ。
この世界であまり見たことがなかったし、紙は平民でも手に入るけど結構貴重だしね。
珍しいものは貰っておくに限るし、何より私のために準備してくれたのが嬉しい。
「お姫様は、白馬に乗ってきた王子サマに連れられて、お城に行くことになりました。」
微妙に棒読みなので、なかなか眠たくならないけど…ゼブラさんが慣れないながらも一生懸命話してくれるのが嬉しい。
本当に私のわがままを聞いてくれて、頼み事を叶えてくれるんだから、本当に優しいよね。
ゼブラさんの姿を見ているだけで飽きない。あー本当、私も結構ゼブラさんのことが好きなんだなー。
「ゼブラさん、好きだよ。」
「な…!?」
思わず絵本を落としそうになるが、流石ゼブラさん、すさまじい瞬発力で絵本を再度掴んで、その絵本で顔を隠した。
「ふ、ふふふ不意打ちは卑怯だ…!」
「ゼブラさんは?」
ちょっと体調不良だからか、ちょっと甘えたくなる。
ゼブラさんからの愛情は毎日たっぷりもらっているけど、こうしている時にも言ってもらいたい。
ゼブラさんは、絵本を恐る恐る下ろして…私の目を見て、「私は、」と言葉を出してから一度口をつぐんだ。
「ゼブラさん?」
「…私は、好きじゃ足りない。愛してるの言葉でも足りない。…この思いを伝えられる言葉が見つからない。」
凄い殺し文句を投げてきた。
こんなことを言ってくれる人を、愛さずにいられるだろうか。
「ゼブラさん、いちゃいちゃしましょ。」
そのあと、私の発言に対して「これ以上罪を重ねられない!」と逃げようとするゼブラさんの手を握って逃げるのを阻止し、
寝るまで一緒にいて欲しいとお願いして、寝るまでゼブラさんに手を握ってもらった。
起きたら深夜だったので、いつまで一緒にいてくれたのか分からないけど…忙しいはずなのに、わざわざ来て看病してくれたのはとても嬉しかった。
風邪をひいてよかったなーと思いつつ、ゼブラさんを振り回してしまったので、今度お詫びにクッキーでも焼こうと思いました。
2
お気に入りに追加
641
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
リス獣人のお医者さまは番の子どもの父になりたい!
能登原あめ
恋愛
* R15はほんのり、ラブコメです。
「先生、私赤ちゃんができたみたいなんです!」
診察室に入ってきた小柄な人間の女の子リーズはとてもいい匂いがした。
せっかく番が見つかったのにリス獣人のジャノは残念でたまらない。
「診察室にお相手を呼んでも大丈夫ですよ」
「相手? いません! つまり、神様が私に赤ちゃんを授けてくださったんです」
* 全4話+おまけ小話未定。
* 本編にRシーンはほぼありませんが、小話追加する際はレーディングが変わる可能性があります。
* 表紙はCanvaさまで作成した画像を使用しております。
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる