私の番はこの世界で醜いと言われる人だった

えみ

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恋人関係

ゼブラさんは大人の階段を登ります?

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ゼブラさんは、意識を飛ばしてしまった。


「ゼブラさん?あれ?聞こえてる??」

応答がない。
微動だにせず、意識がどこかへ旅立ったようだ。
にもかかわらず、私を抱える腕の力は緩まないので、そういうところは素敵だよ。


ゼブラさんが戻ってくるまで、せっかくなのでゼブラさんの胸筋を堪能させてもらおう。

がっちりとした筋肉はこの世界では醜いと言われる部位だけど、私からすれば男らしくてカッコ良いし、もろ好みである。
どくんどくんとうるさいくらいに心臓が動いていて、温もりも心地よいので、思わず胸に頬擦りした。
この心臓の音は、私の影響なのかな。
多分そうだろう。
さっきまであんなに動揺していたし…

ああ、愛されてるんだなぁと感じる。


「ふふ、好きだよ、ゼブラさん。」

その瞬間、びくりとゼブラさんの身体が跳ねた。


「あ、ゼブラさん、戻ってきた?」

「何かの間違いだ…」

「え?」

「これは、都合の良い夢だ。久しぶりに夢を見たが、こんなに良い夢を見られるなんて…」

「ゼブラさん??」

意識が戻ってきたと思ったら、ゼブラさんはぶつぶつと虚な目をしながら呟き出した。
夢じゃないんだけど…私を触ってる感触とかするだろうに…
ゼブラさんほどの人でも、混乱すると訳が分からなくなるんだなぁ。

「番がキスを強請るなんて、そんな奇跡のようなことが、私に起こるなんてありえない…たとえ夢でもこんなに幸せな思いをするなんて、私はどれほど徳を積んだんだ…?」

「…ゼブラさん、私にキスしても良いんだよ?夢の中だし。」

一先ず、これがリアルであると本人が認識したらまた意識を飛ばしてしまうと思うので、これは夢だと思ってもらおう。
一回手を出したらそれで慣れてくれるような気もするんだよね。
このままだったら、結婚するまでに年老いちゃいそうだし…

「夢…そうか、夢…。それなら…」

ゼブラさんは震える手で、私の肩に手を置いた。


真剣な顔をしているゼブラさんに対して、私はついにこの時が来たか、と安堵と共にやっぱり少しの寂しさを感じた。
これでもっと恋人らしいことができるようになるなら、ちょっとくらいの寂しさには目を瞑ろう。

ゆっくり目を閉じて、ゼブラさんのキスを待つ。

肩を抱いている方ではない手で私の右手を掬い上げて、指の腹で手の甲を撫でられた。
少し、くすぐったいなと思ったが、目を開けずに待つ。
直前に私が目を開けちゃったら、それでゼブラさんがキスを照れて諦めちゃうかもしれないし。

我慢だ我慢、と沈黙の中、ゼブラさんのキスを待っていると…


ちゅ、


「あぁ、ミーア、なぜこれほどまでに魅力的なんだ…」


手の甲にキスをされました。



ちがう、ちがうんだよ…!
手の甲に欲しかったわけじゃないんだよー!

思わず目を開けたら、ゼブラさんは私の手の甲に頬擦りをして、愛おしそうにまた唇を当てた。
私の手のひらに…!!

「ゼブラさん!?キスはそこじゃ…」

「ミーアの手、なんて綺麗なんだ…。愛おしくて、この手に触れることができるなんて、もう私は死んでも良い…!」

いやいや、たかが手にキスをしたくらいで大袈裟な…
しかし、女性経験がないゼブラさんからすると、番の私に触れるだけでも緊張するし、幸せなんだろうなぁ。
これでもかというほど、私の手を撫でたりキスしたり頬擦りしたり…
なんかその姿を見ていると、今までの彼の境遇に涙が出てきそうなんだけど……

何か言ってやろうかと思ったが、もう彼がこれでもかというほど楽しんでいるし、
当初の目的であるゼブラさんを元気にさせるという内容は達成したと思うので、今日は彼の好きにさせてやろうと思った。


「ミーア、君はなんて柔らかいんだ…」

今あなたが話しかけてるのはミーアじゃなくて、ミーアの手だよ。









あれからゼブラさんはずっと私の手に甘いセリフをたくさん吐いた。
スラスラ出てくるそのセリフを本体である私にきちんと伝えればそれで良いはずなのに、彼は夢と思っていてもそれが出来ないらしい。

帰る時になって、幸せが長く続くことと、感触などがしっかりするためか、夢ではなく現実であることに気がついて、全力で私に謝り倒した。
もうそれはどうでも良いし、これ完全にゼブラさんのとって黒歴史になるんだろうなーと思いながら、私はゼブラさんの膝の上で筋肉を堪能できたから良しとした。

ちょっとだけ身体が冷えちゃったけど、帰ってお風呂に入れば問題ないね!
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