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恋人関係
竜王は醜いと思われています②
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ゼブラさんは、諦めた表情をしていた。
言葉が出なかった。
ひどい話である。
なぜ、あの親子の行いを、ゼブラさんが受け止めないといけないんだ。
諦めた表情ということは、あの親子だけじゃなかったんだろう。
さっきまであんなに幸せそうに笑っていたのに…何も悪いことをしていないゼブラさんは、不当な扱いを、受け入れている。
彼の権力があれば、あの親子なんてあっさり潰してしまえるだろうに…彼はそれをしないんだろう。
あの親子を見逃して、何事もなかったかのようにして欲しいと私に口止めして、部下とか側近には話さない。
きっとそれは、今まで何度もあったんだ…。
この人を甘やかしたい。
不意に、そんな気持ちが出てきた。
すると、動かなかった身体がすんなりと動いて、私は彼の手をぎゅっと握った。
「!?」
「今日はここらへんでお茶にしよう。」
「…だが、あまり景色は良くないぞ?君が望むところに私は連れていける、遠いところでも、もっと花があったり暖かい風の吹くところのほうが…」
今歩いているところは、林の中から少し光がさすくらいのところで、正直少し寒い。草がたくさん生えてるからあまり景色も良くないし…
でも、その分人が来にくいところだし、人が来てもすぐに気づける。
こういうところじゃないとできないこともあるよね。
「ここが良いの。ゼブラさん、今日はいっぱいわがまま言っても良い?」
「君が望むもので、私ができることはなんでもするよ。君のわがままは、私にとってとても可愛いお願いになるだろう。ご褒美でしかない。」
ゼブラさんは蕩けるような優しい顔を私に向けて、私と握った手に少し力を加えた。
よかった、ちょっと気持ちが私の方に向いたみたいだ。
この隙にということで、座ってお話ができるところを探す。
ゼブラさんがいつものように、どこからかピクニックシートを出してくれて、木々に囲まれた二人が座れる程度の場所を確保する。
ゼブラさんはもう少し広いところでも、と提案してきたが、私はむしろ狭いところのほうが好都合だと思ったので、わがままで押し通した。
そう、狭いところですることなんて一つだろう。
いちゃいちゃするのだ!
「ゼブラさん、座りづらくない?」
「大丈夫だ。問題ない。ミーアは大丈夫か?」
「ううん。ちょっと狭いかも…」
自分で狭いところを選んでおいて、なんて文句を言うのかと思うだろうが、これも作戦なのである。
ゼブラさん、ちょっと怒るかなーと思ったが、彼は本当にお人好しなのか私には特に甘いのか、私が狭い思いをしていることに心配してくれる。
「そうか、それでは私はもう少し端に行くので、こちらに寄って…」
ただ、ここで「じゃあもっとこっちに寄れよ」と言った男前発言はできない。経験値が低すぎるから。
それは読めていたので、いちゃいちゃするために私は行動に出た。
「私、良い方法考えた。」
「み、みみみみミーア…さん、…これは、我々の関係ではいけないことだと思うのだが…!?」
「なんで?お姫様抱っこは、恋人同士なら普通にするよ?」
「そ、そうなのか!?だが、こんなに密着しては…!」
ゼブラさんはそう言いながらも、私の身体をしっかり支えてくれて、私はゼブラさんの膝の上でお姫様抱っこのように抱き上げてもらっている。
私と顔の位置がとても近くなることに動揺して、顔を横に背けながら必死に素数を数え出した。
真面目な人だよね…
「ゼブラさん、私と密着するのは嫌?」
「嫌なわけがないだろう!むしろ、こんなに近づいては君が…!」
思わずと言ったように、ゼブラさんは私の方に顔を向けた。
しかし、顔の近さに気がついて、言葉を最後まで続けることができずにまた顔を背けようとする。
逃すわけないでしょ!
私は両手でゼブラさんの顔を包み込んだ。
荒療治かもしれないけど、そもそもペースがゆっくりすぎなのだ。手を繋ぐだけでどれだけ時間をかけてるのかってこともそうだし、女の子の勉強もちょっとズレてるし、これだと私が死ぬまでに結婚できるか微妙ラインだと思う!
ならば、私のわがままで彼には大人の階段を登ってもらおう。
「ゼブラさん、ちゅーして。」
言葉が出なかった。
ひどい話である。
なぜ、あの親子の行いを、ゼブラさんが受け止めないといけないんだ。
諦めた表情ということは、あの親子だけじゃなかったんだろう。
さっきまであんなに幸せそうに笑っていたのに…何も悪いことをしていないゼブラさんは、不当な扱いを、受け入れている。
彼の権力があれば、あの親子なんてあっさり潰してしまえるだろうに…彼はそれをしないんだろう。
あの親子を見逃して、何事もなかったかのようにして欲しいと私に口止めして、部下とか側近には話さない。
きっとそれは、今まで何度もあったんだ…。
この人を甘やかしたい。
不意に、そんな気持ちが出てきた。
すると、動かなかった身体がすんなりと動いて、私は彼の手をぎゅっと握った。
「!?」
「今日はここらへんでお茶にしよう。」
「…だが、あまり景色は良くないぞ?君が望むところに私は連れていける、遠いところでも、もっと花があったり暖かい風の吹くところのほうが…」
今歩いているところは、林の中から少し光がさすくらいのところで、正直少し寒い。草がたくさん生えてるからあまり景色も良くないし…
でも、その分人が来にくいところだし、人が来てもすぐに気づける。
こういうところじゃないとできないこともあるよね。
「ここが良いの。ゼブラさん、今日はいっぱいわがまま言っても良い?」
「君が望むもので、私ができることはなんでもするよ。君のわがままは、私にとってとても可愛いお願いになるだろう。ご褒美でしかない。」
ゼブラさんは蕩けるような優しい顔を私に向けて、私と握った手に少し力を加えた。
よかった、ちょっと気持ちが私の方に向いたみたいだ。
この隙にということで、座ってお話ができるところを探す。
ゼブラさんがいつものように、どこからかピクニックシートを出してくれて、木々に囲まれた二人が座れる程度の場所を確保する。
ゼブラさんはもう少し広いところでも、と提案してきたが、私はむしろ狭いところのほうが好都合だと思ったので、わがままで押し通した。
そう、狭いところですることなんて一つだろう。
いちゃいちゃするのだ!
「ゼブラさん、座りづらくない?」
「大丈夫だ。問題ない。ミーアは大丈夫か?」
「ううん。ちょっと狭いかも…」
自分で狭いところを選んでおいて、なんて文句を言うのかと思うだろうが、これも作戦なのである。
ゼブラさん、ちょっと怒るかなーと思ったが、彼は本当にお人好しなのか私には特に甘いのか、私が狭い思いをしていることに心配してくれる。
「そうか、それでは私はもう少し端に行くので、こちらに寄って…」
ただ、ここで「じゃあもっとこっちに寄れよ」と言った男前発言はできない。経験値が低すぎるから。
それは読めていたので、いちゃいちゃするために私は行動に出た。
「私、良い方法考えた。」
「み、みみみみミーア…さん、…これは、我々の関係ではいけないことだと思うのだが…!?」
「なんで?お姫様抱っこは、恋人同士なら普通にするよ?」
「そ、そうなのか!?だが、こんなに密着しては…!」
ゼブラさんはそう言いながらも、私の身体をしっかり支えてくれて、私はゼブラさんの膝の上でお姫様抱っこのように抱き上げてもらっている。
私と顔の位置がとても近くなることに動揺して、顔を横に背けながら必死に素数を数え出した。
真面目な人だよね…
「ゼブラさん、私と密着するのは嫌?」
「嫌なわけがないだろう!むしろ、こんなに近づいては君が…!」
思わずと言ったように、ゼブラさんは私の方に顔を向けた。
しかし、顔の近さに気がついて、言葉を最後まで続けることができずにまた顔を背けようとする。
逃すわけないでしょ!
私は両手でゼブラさんの顔を包み込んだ。
荒療治かもしれないけど、そもそもペースがゆっくりすぎなのだ。手を繋ぐだけでどれだけ時間をかけてるのかってこともそうだし、女の子の勉強もちょっとズレてるし、これだと私が死ぬまでに結婚できるか微妙ラインだと思う!
ならば、私のわがままで彼には大人の階段を登ってもらおう。
「ゼブラさん、ちゅーして。」
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