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恋人関係
竜王は醜いと思われています①
しおりを挟むゼブラさんは、私の家族にもう認められています。
ゼブラさんは竜王であるにもかかわらず、後宮に妃や妾がいない。むしろ、後宮を廃止した珍しい竜王様らしい。
後宮の廃止に反対する貴族とか諸外国の王なんかもいたらしいけど、ゼブラさんと身体の関係を持ちたい人があまりいなかったから、後宮の廃止は成し得たそうだ。
ゼブラさんの見た目が、この世界で醜いと言われるものだった。その事実が幸か不幸か、ゼブラさんが賢王と呼ばれる今の彼を作ったと言っても過言ではないらしい。
現在の竜人の国は、民にもお金が回り、商売もしやすく、汚職も少ないと言われている。
貴族や平民といった階級社会はあるが、貴族も権力を振りかざすことなく、余るお金は周辺の土地を住みやすい地域にしたり交通などの整備に回したりと、地域貢献に使っているようだ。
そういった民に対する善行、身分による差別をしないことが、貴族としての品位を示す。そんな意識を貴族全体に持たせるように持っていったのだという。
ゼブラさんが皇帝になっておよそ200年。
200年もかかってしまった、と苦笑するゼブラさんに、尊敬の念しか抱かない。
200年という長い年月をかけて、貴族たちを説得してまわったのだと思ったら、この人は本当に竜人の国に尽くしたのだと思う。
…だから、なんだろう。
部下の人たちに聞いたところ、ゼブラさんは生まれてからおよそ360年、女性と接する機会も無ければ、考えるような機会もない。
ずっっっと仕事人間だったらしい。
だから、私と手もなかなか繋げなくて、そこから先にまだ進めない。
どうして良いか分からなくて、今城で時間のある時に女の人のことを勉強中らしい。
…参考までに、どんな勉強をしているのか聞いたけど、「優しくしましょう」「か弱いので無闇に手を出してはいけません」「手作りのものは必ず肯定的な感想を伝えましょう」などだった。
先生は女の人ではなく(長時間一緒に入れる人がいないため)、男の人で側近たちのため、経験談を語る形の授業なのだとか。
多分、手作りのものに肯定的な感想を言わなくて怒られた過去があったんだろう。
また、がっついて押し倒したりした時に怒られたり…
なんかアドバイスがズレている気がするけど、ゼブラさんそれを忠実に守っている。
でもなぁ…
「ゼブラさん、女の人のこと、今日も勉強したの?」
「あぁ!今日は、”花言葉”をいくつか覚えた。今度、花を見に行こう。君にいくつか見繕いたいんだ。」
何?女子の勉強をするんじゃなくて、女子力を育ててるの?
私花言葉全くわからないんだけど…
それとも、貴族とかだったら覚えてないといけないのかな。
「花言葉は知っていると、ここぞという時に想いを伝えるのに良いらしいんだ。」
「そうなんだ。でも…」
私も勉強しないといけないわけじゃないようだから良かったけど、これ、ゼブラさん私に話したらだめなんじゃないの?
だって、口説く勉強してるってことでしょ。
私の視線に気がついたのか、ゼブラさんは少し困ったように笑った。
「君に質問されるのが嬉しくて…つい話してしまう。…幻滅しただろうか?」
厳つい顔をしている年上の男の人が、とても困ったような顔で私を見つめている。
見下ろされているのに、上目遣いで見られているように感じるのはなんでだろう。
「そんなことで幻滅しないよ。」
「本当か?君は優しいからそう言ってくれるが…もし、俺に嫌なところがあったら、必ず言ってくれ。君に認めてもらえる男になるために、何だってする。」
男前なことを言って今よりも惚れさせようとしているのかな?
かなりきゅんときた。
認めるも何も、私はゼブラさんのこと、最高の彼氏だと思ってるよ。
どうしたらこの思いが伝わるのだろうか…。
その時、近くを歩いていた親子連れが視界の端に見えた。
「ひっ…!」
「お、おかあさ…っ、あのおばけ…!」
「やめなさい!早くこっちにくるのよ!」
林を歩いていたら、運悪く人に出くわした。
しかも相手が悪い。見目麗しいエルフ族の親子だった。
美醜に対する意識がとても強いので、世間的には醜いと言われているゼブラさんの顔を見てとても驚いたようだ。
ちょっと大袈裟に思うくらいの驚きで、親子は走って私たちの視界に入らないところまで逃げて行った。
何あれ、最低!
驚いたのかもしれないけど、やりすぎではないだろうか?
これはかなりあの親子が失礼だったので、追いかけて文句を言ってやりたいが、横にいるゼブラさんは立ち止まってしまったことで、私も動きそうになる身体を無理矢理留めた。
「ゼブラさん、だいじょ…」
全部言い終わる前に、ゼブラさんの表情を見て、言葉が詰まった。
彼は怒っていない。
悲しんでもいない。
諦めていた。
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