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恋人関係

お母さんとゼブラさん

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ゼブラさんは意外と負けず嫌い



なんと、先日の指相撲をきっかけに、ゼブラさんとデートで手を繋ぐことができた。
本当にちょっとだけだけど、ベンチに座ってお話していたら、私の手の上にゼブラさんが手を乗せた。
手は緊張で冷たくなってたけど、私は嬉しくて思わずその手を握ってしまって…

こういう恋人的なイベントは、ゼブラさんからしてもらいたくて我慢してたけど…私もいい加減手を繋ぎたかったので、仕方がないことにして欲しい。

ゼブラさんも、ちょっと驚いてたけど、赤い頬を隠さずにすぐに手を握り返してくれた。


そんなゼブラさんは、デートの時はいつもお迎えに来てくれる。
瞬間移動でゼブラさんのお城から私の家の近くまで来て、わざわざちょっと歩いて私の家まで来てくれるのだ。
いつもちょうどパンがあと少しで売り切れるというところで来るので、どうやってタイミングをはかっているのか気になるけど…

「今日のパンもとても美味しいな。残りは全て、城に送っておこう。」

皇帝とはいえ、きちんとお金を払ってパンを購入しているのは偉いと思う。
こう、権力者って結構わがままなイメージがあったし…300年も生きてて、私たち人間のの生き方にもきちんと合わせてくれるのはちょっと意外だったりする。
私にはとっても優しくて甘いくらいだけど、デートでも飲み物だったり食べ物だったり買うもの全てにきちんと自分でお金を払ってるし…横暴な態度をとることもない。
今も、私にそう言いながら、お金を私の母に渡してるし…

あ、そうそう、実は私たちが付き合いだした?あの日に、ゼブラさんは私の両親に挨拶してくれてます。
けじめはつける、と言って、馬鹿正直に私を殺そうとしたことも喋っちゃって、もうかなり場は混乱を極めたけども…
ゼブラさんの種族とかを話して、私をまだ嫁に出さないで暫くは清いお付き合いでいるという獣人にとって拷問のような条件を飲んでくれたら結婚を考える…という両親側の提案を、ゼブラさんはあっさり受けてしまった。
そんなゼブラさんの誠実さや私への思いを両親はもう認めていて、昨日なんて「結婚式はあちらでやるのかしら?」「移動が心配だな…。ゼブラくんに相談してみるか。」「パンの作り方なんかのレシピは作っておいてくれよ。あぁ、時々新作のアイディアがあったら手紙でも送ってくれ」という、完全に私が家から嫁に出る形で話が進んでしまっている。

家族としても、結婚するつもりがなかった娘が彼氏を連れてきて、尚且つその彼氏が竜人の皇帝ともなれば、ミミズで鯨を釣ったようなものだと思ってる。
私はともかく、皇帝を鯨扱いするのは不敬罪にあたるが…声に出してないから問題ないよね。

目の前で私の作ったパンを食べて「今日も番の手料理を…」とぶつぶつと呟く皇帝を見ていると、将来的に私がちょっと何か問題を起こしても、あっさり許してくれそうな気もする。
だって、普通皇帝ともあろう人が毎日パンを店先で立って食べる!?
焼き立てじゃないから冷めてるし…
そんなものを提供しても、いつもにこにこ微笑みながら食べてくれるんだから、懐が深いというか、器がでかいというか…

「皇帝、それでは私たちはこれで。」

「あぁ。」

ゼブラさんの側近?たちが帰って行ったのを見届けて、ゼブラさんは私のお母さんに頭を下げた。

「本日も、ミーアさんをデートに誘いに来ました。少々お出かけをする許可をいただけないでしょうか。」

「やだもう、そんなにかしこまらなくて良いんですよ!誠実な方なのは分かっているし、好きにお出かけしてきてくださいな。」

「いつもありがとうございます。必ず遅くならずに送り届けますので。それでは…。」

近所のおばちゃんが、近所の好青年に話しかけるように皇帝に話しかける我が母は、いつか絶対痛い目見るよ。
いつも胃がキリキリする私の気持ちになってほしい。

でもゼブラさんはこれを当たり前のようにしてるんだよね…もっと見下したりするもんだと思ってたけど、予想以上に良い人です。

ゼブラさんは私の方に顔を向けて、とても柔らかく微笑んだ。

「それでは、行こうか。」

相変わらずここで手を差し出してはこないけど、いつかデートの始まりから手を繋いでくれるだろう。
今はまだ詰めることができない距離に焦ったさを感じながら、私はゼブラさんの横に並んだ。
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