私の番はこの世界で醜いと言われる人だった

えみ

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出会いはもっとロマンチックに

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いろいろあって、前世はアラサーと言われる歳で交通事故で死んでしまったけど、私が転生した世界は、獣人も人間も共存している世界だった。

初めは混乱するし、元の世界に未練もあったけど、16年も生きていると、もう今の人生で天寿を全うすることを考えるようになった。

前世で失敗した恋愛をこの世界でも…とは思ったけど、この世界では私が好みとしているタイプの人は、「醜い」「ブサイク」の部類に入るので、なかなか出会えないし、出会っても相手が消極的すぎて恋愛に発展しない。
前世で失敗してきた恋愛も、なぜか両想い後には私が追いかける形の恋愛にしかならなかったから、最後には冷めちゃってたわけで…
また恋愛でこちらから追いかけたりするのは避けたい。虚しいだけなので、同じことを繰り返したいとは思わない。

もう面倒くさくなった私は、この世界でも仕事一筋で生きていこうと思った。


パン屋さんをしている両親の手伝いをしている中で、前世の知識を生かしていろんなパンを開発した。
初めは上手くいかなかったこともあったけど、次第に私が作ったパンを好んでくれる人がたくさん出来て、両親にもパン作りは認められるようになった。
この街だけでなく、隣の街から買いに来るお客さんがいるくらいには有名な店になったと思う。
いずれはお兄ちゃんがお店を継ぐことにはなるけど、パン職人として私がずっとお店で働くことは、家族全員の総意でもあった。

そんな時、私はいつものように夕方にお惣菜パンに必要な材料を買いに、市場に出た。

いつもと同じだったはず。
ルートも、時間帯も、何か特別なことをしたわけではなかった。

なのに、私はいきなり誰かに抱き上げられて、見知らぬ部屋に入れられた。
抵抗する余裕も暇もなく、驚いた顔を目の前の男に向けることしかできなかった。


「すまない…っ、怖いよな。でも、どうしてもなんだ…。君じゃないと、私は…っ」

あまり日が入らない部屋で、外も薄暗くなってきている。
相手の顔がぼんやりと見える中で、男は何故かぼろぼろ泣きながら、私にひたすら謝罪の言葉を述べた。

意味がわからない。

状況もよく分からないけど、なんとなくこの目の前の人が私をここに連れてきたのだけは分かったので、落ち着いてもらおうと肩に手を伸ばした。

「あの、落ち着い」
「あぁ、あぁ…っ!この香り…!!だめだ、もう、君なしじゃ私は…!」

はぁはぁと息が荒くなった男は、少し顔を上げた。
その時に目が見えて、それが…

「あなた、もしかして獣…」

私が言い終わる前に、男は私の目を塞いだ。
突然のことにビックリしたけど、男は突然追い詰められたように早口で捲し立てた。

「だめだだめだっ!見ないでくれ!見たか?見てないよな?あぁ、頼むから、見ないでくれ。君の瞳に映るのは、私であってはならないんだ。声だけなら、まだ大丈夫だから…変じゃないだろう?本当は、君の瞳を見ていたいのに…でも、仕方ないんだ。君に拒絶される言葉を吐かれるのは、嫌なんだ。愛してくれるとは微塵も思っていないけれど、君の最期は、誰かわからないけど獣人の番に殺されたという事実だけ残れば良いんだ。来世には一緒になろう?そう、来世なら、こんな世の中でなければ、私と君は結ばれる運命なのだから…!君も、私を見ても嫌いにはならないと思うんだ…!あぁ、本当は、もっと君と話したいけど…それは、来世まで我慢しよう。少し待っていてくれたら、とても深く愛し合える仲として出会えるのだから…。大丈夫、痛くしないよ?一瞬だ。すぐに私が後を追うから寂しくもない。だから、ね?安心して、目を閉じて…?最期に君の綺麗な姿を見せておくれ?」


いきなり死亡フラグが立ちました。
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