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泣かせてしまった
しおりを挟む14歳といっても、まだ子どもだ。
皇太子殿下はその中でもまだ幼いように見える。えーと、小学生高学年くらいかな。
可愛らしい目をした妖精のような見た目のあの子は、私の発言でたいそう悲しそうな顔をして泣いてしまった。
しかも、慣れない服と靴でそんな彼を追いかけようとしたけど見失ってしまった。
土地勘のない私が、この屋敷の中を闇雲に探しても見つけられる可能性は低いだろう。
むしろ、迷子になる確率の方が高い。
侍女さんが私にずっとついててくれてるけど、それでも、こんなに大きなお城では多分皇太子殿下を見つけることはできないと思う。
ということで、無理に探さずに部屋に戻ることにした。
今度会った時に謝ろう。。。
というか侍女さん!皇太子殿下がなんで泣いたのか教えてほしい…!
「エミ様が、他の女性を勧められたからでは…」
私にお茶を入れてくれる侍女さんは、流石にあれは…、と皇太子殿下に同情する素振りを見せた。
え、そんなに酷いことしたの…?私…
それに、皇太子殿下は私と結婚したくなさそうだったよ。
私がそう言っても、侍女さんは黙って首を振った。
「殿下は、仲良くしたい様子でしたよ」
どこが!?
「なかなかキツイ言葉を選んで言ってましたけど…仲良くしたかったら、あんなこと言わないと思いますよ」
侍女さんは、それ以上何も言わなかった。
ええ…
どうしたら良いんだ…
皇太子殿下、難しいな…
取り敢えず、これ以上泣かせないように、彼を傷つけたであろう言葉はなるべく控えよう。
えーと、他の令嬢を勧めるのはやめた方が良い、ってことだよね。
私は心のノートにメモをして、寝支度をした。
寝る直前まで、泣かせてしまったことを後悔して、次こそは泣かせないようにしようと誓って。
その次は、意外と早く来た。
次の日の朝、部屋で朝食を食べて、私はこの世界の常識を学ぶために蔵書室に向かおうと部屋を出た。
すると、ちょうど部屋のそばまで歩いて来ていた皇太子殿下に会った。
目が合った瞬間、とてもびっくりした顔をして、彼はすぐに目が泳いだ。
あぁ、まずい。
逃げられちゃうか?
でも、寄って行ったら余計に逃げちゃいそうで、私は皇太子殿下が落ち着くのを待つことにした。
彼は昨日泣いたからか、目元が赤かった。
ゴシゴシ擦ったのかな。
痛くないといいけど…
心配だけど、声をかけづらくて、そのまま様子を伺った。
「………………これ」
ずいぶん溜めて、彼が私に渡したのは、手紙だった。
「え?」
思わず受け取ったら、皇太子殿下はすぐに手を引っ込めた。
何度か口をぱくぱく動かすけど、うまく言葉が出て来ないのか…
やがて、背中を向けて、
「返事書けよ!」
とだけ言って、去って行った。
一度部屋に戻って、手紙を開封した。
文章はとても短くて、二文くらいだ。
でも、皇太子殿下が書いた手紙は読めなかった。
言葉が通じてるから気にしてなかったけど、この世界の文字は違うもののようだ。
新たな課題を見つけたところで、当面の目標が決まった。
「文字を勉強したいんですが、何か良さそうなものはありますか?」
この世界の常識を学ぶ前に、文字を学ぶ必要があるようだ。
早速、侍女さんが報告してくれて、手配してくれることになった。
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