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皇太子殿下登場
しおりを挟むディナーもあとはデザートで終わり、というところに来て…、
皇后陛下が再度私に謝って来た。
「夕方、皇子があなたに無礼を働いたと聞きました。本当にごめんなさい。あの子にはきつく言っておきます」
あれか、
私を年増と言って、番を認めたくなかったあれか。
「いえ、仕方のないことだと思います」
そう、だって、両陛下とお会いして思ったよ。
皇后陛下って私より年下に見えるんだよ…。
とてもお若い。多分私より年上だろうけど…、可愛らしさと綺麗を両立させている方だ。
皇帝陛下も、体格が良くて若々しく見える。
私の方が、年上のおばさんに見えてもおかしくない。
「皇太子殿下は14歳と聞きました。私は彼の倍と少し、歳を重ねています。」
そこまで言って、私は言葉を切った。
そもそも、彼は私と結婚しないといけないのだろうか。
そんなこと、誰が分かるんだろう。
「…私と皇太子殿下は、本当に番なのでしょうか?」
ぽつりと呟いた疑問。
でも、落ち着いたからこそ、それを考えることができた。
この世界の常識に疎い私では、どんな方法で番を見分けるのか分からない。
私が番と思われていたけど、間違いだったということはないのだろうか。。。
その私の疑問に、両陛下は深く頷いた。
「私たち獣人は、番にだけ感じる匂いがあります。それは特徴的で、唯一無二なのです。あの子にも、それは確認できています」
皇后陛下の言う、あの子、は皇太子殿下のことだろう。
かなり拒絶していたけど、私が番と分かったって…それ本当?
たとえ番であっても信じたくないって思ってそうだったけど。
「私たちはかなり歳の差があります。番のことは分かりませんが、皇太子殿下は、私ではなくもっと綺麗で可愛らしい同年代の方と結ばれた方が良いと思うのですが…」
皇帝陛下は、私のその発言に深く頷いた。
「エミ殿が言うことは分かる。しかし、これは獣人の中でも、番との関係性が重要となる種族にしか分からない感覚なのだ。現に私も皇后と出会った時には、離れたくないと思い、その場で求婚してしまったほどだ」
その人の性格とか互いの価値観とかも分からないのに、告白して結婚してしまうのか…
それはそれですごい世界だ。
それでも、今仲睦まじく暮らしている両陛下はすごいと思う。
お二人とも、穏やかで人格者のように思えるから、それで良好な関係を築けるのだろう。
でも、皇太子殿下はそんな感じじゃなかったけどな…
かなり動揺して、私を拒絶していたように思う。
「あの子も、まだ幼いところがあり…、獣人の本能をどう扱って良いのかわからないのです。あなたにこんなお願いをするのは筋違いだと思いますが、どうかあの子と度々会ってもらえませんか?」
ここに来て、おそらく本題が来たのだと思った。
番である私と皇太子殿下が一度の対面で距離が出来てしまうのを望まないのだろう。
お二人とも、自分の息子が番とうまくいって欲しいという思いがあるのだ。
両陛下とも、良い方だと思うから私も断れないし…、
そもそもお城でお世話になる私に、拒否権などないよね。
「皇太子殿下がお嫌でなければ…」
「ありがとう。あぁ、きっとあの子も喜ぶわ」
喜ばないと思いますが…
その言葉はぐっと飲み込んだ。
私の了承の言葉を聞いて、両陛下はホッとした表情をして、運ばれてきたデザートを笑顔で共に食べた。
その後も少し雑談をして、話題が尽きないと思ったころ、執事さんが皇帝陛下に耳打ちした。
「この世界に来たばかりで心身共に疲れただろう。無理せず、今日は休んでくれ」
何か急ぎの用事ができたのだろうか。
時計を見ると、2時間近くも夕食を共にしていたことに気づいて、流石に時間を取りすぎたんだな、と察した。
「本日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「またお食事を共にしましょうね」
皇后陛下は笑顔で私を見送ってくれた。
その足で部屋に戻ろうとしたところで、私にあてがってくれた部屋の前で、ぽつんと立っている人物が見えた。
近づいたらすぐに分かった。
皇太子殿下だ。
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