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両陛下と対面
しおりを挟む年齢のことはどう考えても解決できる問題ではない。
2倍以上も年上の女の人と結婚なんて、皇太子殿下からすればとんだ罰ゲームだろう。
かわいそうに。
理想のタイプもいただろうし、可愛らしい同年代の令嬢たちと私ではどう考えても月とスッポンだろう。
これからこんな老け顔のおばさんが横に立って、社交界とかいろんな場で嫁として振る舞うなんて、可哀想としか言いようがない。
とりあえず、皇太子殿下の心の傷を考えて、なるべく接触しないように今後の身の振り方を考えようと思った。
今の私にはこの世界の常識がなさすぎるので、まずは学ぶことからはじめて、どう生きていくかを考えるしかない。
そのタイミングで、食事の準備ができたことを侍女さんが知らせてくれた。
別室でとるらしい。
…ひとりでかな?
もしかすると、誰かと一緒かもしれない。
少し考えて、もし可能なら部屋でとりたいと伝える。
廊下に出て誰かに会うのは避けたい。
…流石に、老けてるおばさんという認識を周囲に持たれるのは当たり前のことかもしれないけど、私としては辛いものがある。
皇太子殿下も傷ついたけど、私も傷ついているのだ。
しかし侍女さんは、私の心中を察したようだけど、少し気まずそうにして「皇帝陛下と皇后陛下が、是非お会いしたい、と…」と目を伏せてそう告げた。
これ、拒否権ないやつだよね。
しかも、さっき会った皇太子殿下の両親ってことだよね?
気まずすぎるよ…!
息子を傷つけた張本人とご飯食べようって、どういう腹積りなの…
詰められるのかな。
というか、私礼儀作法知らないんだけど…!!
ここに来て、いびられるの!?
傷口に塩でも塗られるのかな!?
プチパニックを起こして黙る私を見て、侍女さんは私の前に来て「お待たせする方が無作法かと…」と、もっともなことを言って、私を部屋から連れ出した。
だめだ、夕食を食べられる気がしない…。
ガクガクと手足が震えてくるが、社会人として培ってきたポーカーフェイスでなんとか平常心を保っているように見せる。
見せられているのか分からないけど。
平然を装おうとしてるだけだけど。
侍女さんに連れられて来たら、とても豪華な部屋の中に長いテーブルがあり(ザ西洋貴族って感じの装飾ばかりついてる)そこにとても上品そうな女性と、体格ががっしりした男性が座っていた。
見たら分かる。
お二人が、皇帝陛下と皇后陛下だ…。
「あなたが異世界から来ていただいたお方なのですね」
優しそうな微笑みを浮かべて、皇后陛下が私に席を促す。
給仕さん?が私が座るであろう席を引いてくれたので、覚悟を決めてそこに向かった。
もう、ここまで来たら逃げられない。
何か言われても仕方ないという覚悟で、席の前で頭を下げる。
「作法等が分かりませんので、無礼なことをしてしまうかもしれません。ご容赦いただけると幸いです。エミ、と申します。よろしくお願いいたします」
名字は言わず、名前だけ伝える。
すると、皇帝陛下は「よい、よい。頭を上げなさい」とこちらも優しい声で下げた頭を上げるように言った。
皇帝陛下と皇后陛下に視線を向けると、2人とも声同様、優しい表情で微笑んでいた。
「突然のことで驚いたでしょう?あなたには申し訳ないことをしました。こちらの都合で、この世界に来ていただいて…」
食事は礼儀など気にせずとりましょう。自由に食べて良いのですよ。
との言葉に甘えて、一般庶民が培ってきた最低限のマナーの知識でなんとか目の前の食事に手をつける。
料理は絶品で、一口何を食べても美味しかった。
そして、料理に感動している私を見て、皇后陛下は申し訳なさそうにそう告げた。
皇帝陛下も私を気遣って、何か不自由をしていないか、もし困ったことがあったら相談するように。と言ってくれた。
とてもお優しい…。
お二人とも人格者である。
緊張していた私は、だいぶ緊張がほぐれて、両陛下が振ってくださる話題に動揺せずに返せるようになった。
「突然で驚きはしましたが、私はあの世界では死んだようです。この世界では、もう一度生きる機会を与えてもらったと思っています。なので、あまりお気になさらず…」
両陛下、特に皇后陛下はとても申し訳なさそうに私を気遣ってくださるから、私は気にしないで下さい、と伝えた。
すると、皇后陛下は少しホッとした顔をして、何かあればなんでも力になってくれると言ってくれた。
これは心強い!
皇太子殿下を傷つけた罰とか、いろいろいびられるのかと思っていたけど、全くそんなことはなかった…!
私のことを気遣ってくれているのが伝わる。両陛下とも、何処の馬の骨かもわからない私に親切にしてくれる、とても慈悲深い方々なのだと分かる。
「遠慮はしないでね」
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げると、そんなの良いのよ、と頭を下げないでと言ってくれた。
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