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可愛い人

可愛い彼女

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  僕の彼女は、可愛い。



  僕の一目惚れで、晴れて恋人になれた僕の彼女は、とてもとても可愛い。



「ひぃーちゃん」
「…何?」
  ひぃーちゃんは、呼んだら必ず返事をしてくれる。可愛い。用もなく呼ぶと物凄く嫌そうな顔をされるけど。
「構ってよぉ…」
「寝言は寝て言え」
  そして、大抵構ってもらえない。でも大丈夫。そんなひぃーちゃんの瞳に一瞬でも僕の姿が映るだけで、僕は満足。

「おい」
「なーに?」
「離れろ」
「ふふふ、嫌だ」
  嘘。全然満足出来ない。ひぃーちゃんに引っ付きたくて、背中合わせに座る。
「仕事の邪魔だ」
「邪魔してないじゃん」
  髪の毛を触らせてもらってるだけ。本当はもっと色んな所を触りたいし、抱き付きたい。

  ひぃーちゃんの仕事は、フリーデザイナーで基本はおうちでしている。たまに外に打ち合わせとか息抜きで出てるけど、一ヶ月のほとんどの仕事はおうちでこなしている。それに対して僕は、音楽家として色々な所へ行かなければならない事が多い。他府県であったり、場合によってはそれが長期間であったりもする。
  だからこそ、二人で居れる時間は大事にしたい。というか、二人で居れる時は、ひぃーちゃんから離れたくない。

  ひぃーちゃんは、机の上に紙と色鉛筆を広げて、サッと次々とデザインを書き溜めていく。たくさん書いても、実際に作品として仕上げるのは極わずか。ほとんどの作品がゴミ箱へと消えていく。そんな厳しい世界で、仕事として成り立たせているひぃーちゃんは、純粋にすごいと思うし、尊敬している。

「あ、この色味好き」
「ん。どれ?」
  ひぃーちゃんが書き溜めた山から、一枚のデザインを手渡す。

  藍色と紅色の混ざった夕方の空みたいな色使いが、僕の目を惹いた。

「ん。なら、ファイルに入れておく」
  ひぃーちゃんは、そのまま透明なファイルに入れる。その中には、僕が好きと言った作品や、ひぃーちゃんのお気に入りの作品が入っている。
  
  ひぃーちゃんの作品は、全体的に色使いが独特で、暗い色合いの中に明るい色を混ぜたものが多い。理由を聞いてもいつも教えてくれないが、そんなひぃーちゃんの作品が僕は好きだ。



「晴樹」
  ひぃーちゃんが手を止めて、僕を振り返る。離れろ、て事だとは分かってる。離れないけど。そして無表情だけど、それもまた可愛い。
「……可愛い」
  僕は思わず呟くと、ひぃーちゃんは目を丸くする。

そして

「そりゃどうも」
と言い、僕の額に軽くキスをする。ぶわぁあ、と顔に熱が集まるのを感じる。
「晴樹の方が可愛いと思うけどね」
  ひぃーちゃんは、ニヒルに微笑むと仕事へ戻る。



  ズルくない…っ!?
  何!?今の何!?
  可愛い過ぎじゃない…!?




  僕の彼女は可愛い。
  僕は一生、彼女には敵わない気がした。
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