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3章
16歳 -火の極日12-
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言葉では言い表せない程の罪悪感。
この時、私の心に湧き上がったのはそんな感情でした。
私に向かって投げつけられた扇は、緋桐殿下によって叩き落されてしまいました。ただ、その行為が火箭家の苧環姫の逆鱗に触れたようで、憤怒の形相で此方に向かって歩いてきます。
この時点でようやく皐月姫殿下の近くに控えていた護衛官が苧環姫に近づいて、行動の静止を求めました。反応が遅いと思ってしまいますが、彼らもまた経験を積む為に配置された新人です。しかも大華族の姫君と平民の娘のどちらかを静止させなければならないのだとすれば、平民のほうが後々問題になりません。事実護衛官たちは私の方を見て、此方に向かおうとすらしていました。でもそうならなかったのは緋桐殿下が私を庇った事と、皐月姫殿下が「苧環姫を落ち着かせて」と明確に指示を出したからです。
「無礼者!!」
苧環姫からすれば王族に次ぐ身分である自分が静止させられる側だという事に納得できる訳がなく、自分に向かって腕を伸ばす護衛官を叱責します。同時に苧環姫の同伴者の男性も
「我が従姉妹の苧環は火箭家の総領姫ぞ! 無礼にも程がある!!」
と苧環姫へと伸ばされた腕に対し、腰にさげた装飾過多な剣を抜こうとしました。ですがこの場で一番身分が高いのは、王族なことに加えて主催者の皐月姫殿下です。その殿下の命令なので護衛官は若干躊躇いつつも
「苧環姫、どうかお鎮まりください」
と静止を促しました。逆にいえば強制的に取り押さえることは出来ず、促すしかできないとも言えます。でもそうやって護衛官に静止されればされるほど彼女からすれば理不尽だと思えるようで、怒りを通り越して憎しみすら感じる眼差しで睨まれてしまいました。
「緋桐殿下、どうしてなのですか……。
私が幼少の頃より、ずっとお慕いし続けていた事を殿下もご存知のはず。
それに殿下も私の気持ちに応えてくださったではありませんか!」
私から緋桐殿下へと視線を移した苧環姫は、怒りの表情から一変して悲痛な表情となりました。
「俺が苧環姫の気持ちに応えた?
すまないが、俺には全く覚えがない」
ピシャリと言い切る緋桐殿下に、苧環姫は信じられないと言わんばかりの表情で固まってしまいました。
(あぁ、彼女は本当に緋桐殿下が好きなんだな……)
その気持ちが此方にまで伝わってくるほどで、なんだか申し訳ない気持ちになってしまいます。彼女の父親であったり親戚は緋桐殿下との婚姻による利益が目的なのかもしれませんが、彼女自身は本当にただただ緋桐殿下が好きなだけのようです。
そんな自分の恋心にまっすぐな彼女に対し、私は保身……つまり打算です。自分と家族を守るための作られた関係です。なんだか自分がどこまでも汚く、そして悪どく思えてきました。
ただ、それでも私にとって家族の安全は最優先事項で、自分の罪悪感より優先されます。叔父上が
「天都には近寄らず、碧宮家の復活も望まず……。
名も地位も捨てて隠れ住む我らを、それでも消し去りたい願う者が居る。
……ならば我らが取る道は一つ。
各国の王家や華族であっても簡単に手出しできぬだけの足場を固める。
我らに手を出せば自分の今の生活が立ち行かなくなると、そう思わせる」
と宣言し、山吹や兄上はもとより、私もそれに同意したのです。
私と三太郎さんが作り上げた道具や食品は、この世界の生活を一変させる可能性があるものばかりです。もちろん三太郎さんチェックが入るので、その全てを流通させる訳にはいきませんが、それでも生活の質の向上は相当なものになるはずです。
それに三太郎さんたちも、何も無かったところから作り上げた山の拠点を襲撃されてメチャクチャにされた事に思う所があるようで、艶糸の布を筆頭に少しだけチェックを緩めてくれました。
それらの品々のほとんどはヤマト国王家を介して広めていますし、これからもその予定ですが、肝心な部分の技術は私達が握ったままというものが多いのです。今度広める予定の手触りが良くて柔らかで丈夫な艶糸の布も、土蜘蛛の糸から艶糸にできるのは私達だけですし、醤油を作り出すことができるのも私達だけです。
そしてソーラークッカーや新しい製塩法を通してヒノモト国に利益をもたらせば、この国とも懇意になっていけます。そうやってヤマト国やヒノモト国と親密な関係を築いていけば、たとえ敵がミズホ国の王族や華族であっても簡単に手出しはできないはずです。
だから苧環姫には心から申し訳ないと思うし罪悪感に心が痛みますが、緋桐殿下が想いを寄せている人という肩書きは外せませんし譲れません。私自身は「緋桐殿下を慕っている」とは一言も告げていませんし、恋人や婚約者とも言っていません。ですがそういった部分も含めて、保身と打算しかない自分が悪役のように思えてきますし、実際苧環姫からすれば悪女でしょう。
緋桐殿下は自分が想い人を作れば彼女が諦めてくれ、穏便に事が収まると思ったようですが、どうやら苧環姫の恋慕の感情はそんな簡単に消える炎ではないようです。
私は今この時、初めて苧環姫と会いました。なので当然ながら苧環姫から虐められり嫌がらせを受けた覚えも無く、彼女に悪い感情を全くといって良い程に持っていません。それだというのに彼女の恋路の邪魔をしなくてはならない事に、罪悪感が後から後から湧いて出てきてしまいます。
その間も苧環姫と緋桐殿下は
「私が文を出せば、いつもお花を添えてお返事をくださいました」
「文を貰えば返事を出すのは礼儀だ。ただそれだけだ」
「そんな!! 恋しいと文にも書いてくださったではありませんか!」
「いや、本気で覚えが無いが……。誰かと間違っていないか?」
「そんな訳ありません。間違いなく緋桐殿下からの文です!」
「そもそもだ! 俺は姫に文を出すのを控えてほしいと伝えたはずだ!
だというのに月に何度も文を届けるのは、どういう心づもりだ!」
「どういう心づもりも何も、
そう言われましたから毎日ではなく1旬間に一度に減らしました!
私が緋桐殿下のお言葉に逆らう訳が御座いません!」
なんてやり取りを続けています。どうやら二人は手紙のやり取りをしていたようですが、その際に行き違いがあったようです。二人の話を聞く限り「控えて欲しい」という言葉の選択が失敗だったようです。恋しいと言った言わないという謎に関しても、おそらく似たような行き違いがあったのでしょう。
そんな苧環姫と緋桐殿下のやりとりを、大勢の華族が遠くから息を呑んで見守っていました。緋桐殿下と苧環姫がどのような関係に落ち着くかによって国内の政治情勢が一気に変わってしまう為、彼らとしても注視せざるを得ないのです。
もう少し時間があればこんな大勢が注視する中、彼女を傷つけてしまうようなやり方ではなく、誰も傷つかないで済む方法を考えられたのかもしれません。
……ううん、時間の問題じゃなく私が浅慮だったんだ。
緋桐殿下だけの言葉を聞いて、解ったつもりになっていました。緋桐殿下は彼女の言動の背後に、親が見え隠れどころか丸見えになっている事に、
「彼女が俺に好意を持っていてくれているのは確かだが、
それは俺の地位がいずれ王太子に、そして国王になることが前提となっている。
俺が王太子には到底なれないような強さであれば、好きになっていないはずだ。
それに俺を好きになるように、幼少時に親から誘導せれた可能性も高い」
と、苧環姫の気持ちには政治的な判断が根底にあるのだと言っていたのです。
正直なところ、私には恋愛というものが解りません。
自分よりも大切だと思う相手に対する気持ちなのだと、誰よりも幸せであって欲しいと願う相手を思う気持ちなのだと人は言います。ですが私にとってそれは家族です。前世ならば祖父母がそれに当たり、今世ならば母上と兄上、叔父上の血縁ということになっている家族3人に加え、橡と山吹親子と、三太郎さんと二幸彦さんたちがそれに当たります。この前世・今世合わせて10数人が私にとって誰よりも大切で、幸せになってほしくて、いつも笑顔でいてほしいと願う人たちです。
そんな人が10人以上も居れば、これ以上は要りません。
これ以上は願い切れませんし、思い続けられません。
それにどれだけ大切に思っていたとしても…………
笑顔であるように、幸せであるようにと願っていたとしても……
意識が自分の内側へと向いていたら、いきなり私に向かって腕が伸ばされました。その腕の動きを視界の隅で捉えてハッと前を見れば、緋桐殿下に遮られつつも此方に腕を伸ばして私の髪を掴もうとしている苧環姫がいました。
「お前のような殿下に守られるばかりで、お守りする事もできないような女が!
武力もなく、髪油を買う財力も無いような女が何故殿下の横にいるの!!」
「俺の大事な櫻嬢を侮辱し危害を加えようとするのらば、
たとえ火箭家の姫君であろうとも容赦はしない!!」
緋桐殿下に守られているからなのかもしれませんが、燃えるような憎しみの視線を向けられても怖いと思いません。同時に彼女を嫌う事も憎む事もありません。ただただ、苧環姫に申し訳ないという気持ちしか湧いてこないのです。
ただ、次の瞬間。
「殿下、どうか私を選んでくださいませ。
私ならば殿下の剣にも盾にもなれます、殿下の為ならばこの命を捧げられます。
殿下の横に立ち、殿下をお守りできるのならば私は命を惜しみませんわ!」
そう切々と緋桐殿下の胸にすがるようにして訴えたかと思うと、
「どうせお前は殿下のために死ぬ覚悟もないのでしょ!
そのような女が王族である殿下の横に立つなどありえないわ!!」
と私を嘲笑ってきました。
その時、私の中から何かがプチリと切れた音が聞こえた気がしました。
「緋桐殿下の為に死ぬ覚悟? そんなのあるわけないじゃない」
相手は王族に次ぐ高位華族の姫君だとか、皐月姫殿下主催の宴で騒動はマズイだとかそんな事を考えるよりも先に、私の口から本音が漏れ出てしまったのでした。
この時、私の心に湧き上がったのはそんな感情でした。
私に向かって投げつけられた扇は、緋桐殿下によって叩き落されてしまいました。ただ、その行為が火箭家の苧環姫の逆鱗に触れたようで、憤怒の形相で此方に向かって歩いてきます。
この時点でようやく皐月姫殿下の近くに控えていた護衛官が苧環姫に近づいて、行動の静止を求めました。反応が遅いと思ってしまいますが、彼らもまた経験を積む為に配置された新人です。しかも大華族の姫君と平民の娘のどちらかを静止させなければならないのだとすれば、平民のほうが後々問題になりません。事実護衛官たちは私の方を見て、此方に向かおうとすらしていました。でもそうならなかったのは緋桐殿下が私を庇った事と、皐月姫殿下が「苧環姫を落ち着かせて」と明確に指示を出したからです。
「無礼者!!」
苧環姫からすれば王族に次ぐ身分である自分が静止させられる側だという事に納得できる訳がなく、自分に向かって腕を伸ばす護衛官を叱責します。同時に苧環姫の同伴者の男性も
「我が従姉妹の苧環は火箭家の総領姫ぞ! 無礼にも程がある!!」
と苧環姫へと伸ばされた腕に対し、腰にさげた装飾過多な剣を抜こうとしました。ですがこの場で一番身分が高いのは、王族なことに加えて主催者の皐月姫殿下です。その殿下の命令なので護衛官は若干躊躇いつつも
「苧環姫、どうかお鎮まりください」
と静止を促しました。逆にいえば強制的に取り押さえることは出来ず、促すしかできないとも言えます。でもそうやって護衛官に静止されればされるほど彼女からすれば理不尽だと思えるようで、怒りを通り越して憎しみすら感じる眼差しで睨まれてしまいました。
「緋桐殿下、どうしてなのですか……。
私が幼少の頃より、ずっとお慕いし続けていた事を殿下もご存知のはず。
それに殿下も私の気持ちに応えてくださったではありませんか!」
私から緋桐殿下へと視線を移した苧環姫は、怒りの表情から一変して悲痛な表情となりました。
「俺が苧環姫の気持ちに応えた?
すまないが、俺には全く覚えがない」
ピシャリと言い切る緋桐殿下に、苧環姫は信じられないと言わんばかりの表情で固まってしまいました。
(あぁ、彼女は本当に緋桐殿下が好きなんだな……)
その気持ちが此方にまで伝わってくるほどで、なんだか申し訳ない気持ちになってしまいます。彼女の父親であったり親戚は緋桐殿下との婚姻による利益が目的なのかもしれませんが、彼女自身は本当にただただ緋桐殿下が好きなだけのようです。
そんな自分の恋心にまっすぐな彼女に対し、私は保身……つまり打算です。自分と家族を守るための作られた関係です。なんだか自分がどこまでも汚く、そして悪どく思えてきました。
ただ、それでも私にとって家族の安全は最優先事項で、自分の罪悪感より優先されます。叔父上が
「天都には近寄らず、碧宮家の復活も望まず……。
名も地位も捨てて隠れ住む我らを、それでも消し去りたい願う者が居る。
……ならば我らが取る道は一つ。
各国の王家や華族であっても簡単に手出しできぬだけの足場を固める。
我らに手を出せば自分の今の生活が立ち行かなくなると、そう思わせる」
と宣言し、山吹や兄上はもとより、私もそれに同意したのです。
私と三太郎さんが作り上げた道具や食品は、この世界の生活を一変させる可能性があるものばかりです。もちろん三太郎さんチェックが入るので、その全てを流通させる訳にはいきませんが、それでも生活の質の向上は相当なものになるはずです。
それに三太郎さんたちも、何も無かったところから作り上げた山の拠点を襲撃されてメチャクチャにされた事に思う所があるようで、艶糸の布を筆頭に少しだけチェックを緩めてくれました。
それらの品々のほとんどはヤマト国王家を介して広めていますし、これからもその予定ですが、肝心な部分の技術は私達が握ったままというものが多いのです。今度広める予定の手触りが良くて柔らかで丈夫な艶糸の布も、土蜘蛛の糸から艶糸にできるのは私達だけですし、醤油を作り出すことができるのも私達だけです。
そしてソーラークッカーや新しい製塩法を通してヒノモト国に利益をもたらせば、この国とも懇意になっていけます。そうやってヤマト国やヒノモト国と親密な関係を築いていけば、たとえ敵がミズホ国の王族や華族であっても簡単に手出しはできないはずです。
だから苧環姫には心から申し訳ないと思うし罪悪感に心が痛みますが、緋桐殿下が想いを寄せている人という肩書きは外せませんし譲れません。私自身は「緋桐殿下を慕っている」とは一言も告げていませんし、恋人や婚約者とも言っていません。ですがそういった部分も含めて、保身と打算しかない自分が悪役のように思えてきますし、実際苧環姫からすれば悪女でしょう。
緋桐殿下は自分が想い人を作れば彼女が諦めてくれ、穏便に事が収まると思ったようですが、どうやら苧環姫の恋慕の感情はそんな簡単に消える炎ではないようです。
私は今この時、初めて苧環姫と会いました。なので当然ながら苧環姫から虐められり嫌がらせを受けた覚えも無く、彼女に悪い感情を全くといって良い程に持っていません。それだというのに彼女の恋路の邪魔をしなくてはならない事に、罪悪感が後から後から湧いて出てきてしまいます。
その間も苧環姫と緋桐殿下は
「私が文を出せば、いつもお花を添えてお返事をくださいました」
「文を貰えば返事を出すのは礼儀だ。ただそれだけだ」
「そんな!! 恋しいと文にも書いてくださったではありませんか!」
「いや、本気で覚えが無いが……。誰かと間違っていないか?」
「そんな訳ありません。間違いなく緋桐殿下からの文です!」
「そもそもだ! 俺は姫に文を出すのを控えてほしいと伝えたはずだ!
だというのに月に何度も文を届けるのは、どういう心づもりだ!」
「どういう心づもりも何も、
そう言われましたから毎日ではなく1旬間に一度に減らしました!
私が緋桐殿下のお言葉に逆らう訳が御座いません!」
なんてやり取りを続けています。どうやら二人は手紙のやり取りをしていたようですが、その際に行き違いがあったようです。二人の話を聞く限り「控えて欲しい」という言葉の選択が失敗だったようです。恋しいと言った言わないという謎に関しても、おそらく似たような行き違いがあったのでしょう。
そんな苧環姫と緋桐殿下のやりとりを、大勢の華族が遠くから息を呑んで見守っていました。緋桐殿下と苧環姫がどのような関係に落ち着くかによって国内の政治情勢が一気に変わってしまう為、彼らとしても注視せざるを得ないのです。
もう少し時間があればこんな大勢が注視する中、彼女を傷つけてしまうようなやり方ではなく、誰も傷つかないで済む方法を考えられたのかもしれません。
……ううん、時間の問題じゃなく私が浅慮だったんだ。
緋桐殿下だけの言葉を聞いて、解ったつもりになっていました。緋桐殿下は彼女の言動の背後に、親が見え隠れどころか丸見えになっている事に、
「彼女が俺に好意を持っていてくれているのは確かだが、
それは俺の地位がいずれ王太子に、そして国王になることが前提となっている。
俺が王太子には到底なれないような強さであれば、好きになっていないはずだ。
それに俺を好きになるように、幼少時に親から誘導せれた可能性も高い」
と、苧環姫の気持ちには政治的な判断が根底にあるのだと言っていたのです。
正直なところ、私には恋愛というものが解りません。
自分よりも大切だと思う相手に対する気持ちなのだと、誰よりも幸せであって欲しいと願う相手を思う気持ちなのだと人は言います。ですが私にとってそれは家族です。前世ならば祖父母がそれに当たり、今世ならば母上と兄上、叔父上の血縁ということになっている家族3人に加え、橡と山吹親子と、三太郎さんと二幸彦さんたちがそれに当たります。この前世・今世合わせて10数人が私にとって誰よりも大切で、幸せになってほしくて、いつも笑顔でいてほしいと願う人たちです。
そんな人が10人以上も居れば、これ以上は要りません。
これ以上は願い切れませんし、思い続けられません。
それにどれだけ大切に思っていたとしても…………
笑顔であるように、幸せであるようにと願っていたとしても……
意識が自分の内側へと向いていたら、いきなり私に向かって腕が伸ばされました。その腕の動きを視界の隅で捉えてハッと前を見れば、緋桐殿下に遮られつつも此方に腕を伸ばして私の髪を掴もうとしている苧環姫がいました。
「お前のような殿下に守られるばかりで、お守りする事もできないような女が!
武力もなく、髪油を買う財力も無いような女が何故殿下の横にいるの!!」
「俺の大事な櫻嬢を侮辱し危害を加えようとするのらば、
たとえ火箭家の姫君であろうとも容赦はしない!!」
緋桐殿下に守られているからなのかもしれませんが、燃えるような憎しみの視線を向けられても怖いと思いません。同時に彼女を嫌う事も憎む事もありません。ただただ、苧環姫に申し訳ないという気持ちしか湧いてこないのです。
ただ、次の瞬間。
「殿下、どうか私を選んでくださいませ。
私ならば殿下の剣にも盾にもなれます、殿下の為ならばこの命を捧げられます。
殿下の横に立ち、殿下をお守りできるのならば私は命を惜しみませんわ!」
そう切々と緋桐殿下の胸にすがるようにして訴えたかと思うと、
「どうせお前は殿下のために死ぬ覚悟もないのでしょ!
そのような女が王族である殿下の横に立つなどありえないわ!!」
と私を嘲笑ってきました。
その時、私の中から何かがプチリと切れた音が聞こえた気がしました。
「緋桐殿下の為に死ぬ覚悟? そんなのあるわけないじゃない」
相手は王族に次ぐ高位華族の姫君だとか、皐月姫殿下主催の宴で騒動はマズイだとかそんな事を考えるよりも先に、私の口から本音が漏れ出てしまったのでした。
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