【本編完結済】未来樹 -Mirage-

詠月初香

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3章

16歳 -火の陽月4-

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叔父上と山吹が現れた途端に顔を引きつらせたのは、アイカ町の松屋という商人でした。ヒノモト国人の平均よりも遥かに体格の良い叔父上たちは威圧感があり、また叔父上は「何があったのか?」と怪訝そうな顔をしているせいで、余計に近寄りがたい雰囲気があります。

「こちらの商人の方と少し揉めてしまったのです。
 ただもう謝罪もして頂きましたし……」

兄上が叔父上に説明している間、チラリと松屋さんの顔を確認します。まるで張り付けたような笑顔になった松屋さんは、

「うちの奉公人が粗相をしてしまい、本当に申し訳ない」

なんて言っていますが、微妙にこめかみがピクピクと痙攣しています。先程うっかり見てしまった彼の敵愾心丸出しの眼差しから察するに、王族の緋桐殿下以外に頭を下げる事が癇に障るのだと思います。

そんな偽りの笑顔の商人と怪訝そうな叔父上、そして心配そうな山吹。そんな三者三様の表情は理解できるのですが、ただ一人。この場にはあまり相応しくない表情をしていた人が居ました。

それが緋桐殿下です。

緋桐殿下は何故か山吹を見たまま固まってしまっていて、目を真ん丸に見開いて何かに驚いているようでした。そのまま瞬きを数回してから、今度は叔父上を見て、兄上を見て、そして私を見ます。ジッと私を見ていたと思ったら、何かに気付いたようにハッ!とした顔になりました。どうしたのか尋ねたい気持ちになりますが、あまりにも挙動不審過ぎて声をかけられません。そんな私の視線に気付いたのか、緋桐殿下は一度コホンと咳払いをしてから

「俺は久しぶりに出会えた友人とゆっくり話しがしたいのに、
 松屋、お前が居ては落ち着いて話す事も出来ん。
 そうそうにこの場を去れ」

と松屋さんに向かって、手で去れというジェスチャーしつつ告げました。その傲慢な物言いや態度に驚いてしまいますが、この国の第二王子という地位を持つ緋桐殿下にはそういった言動が許されるだけの力があります。ただ5年前に私に舞を教えてくれた緋桐殿下や、さっき私を助けてくれた緋桐殿下とイメージが違いすぎて、自分の中に生じた違和感を処理しきれません。思い返してみれば再会直後の軽薄な言動も含めて、緋桐殿下に対するイメージのブレが酷いのです。

何故だろう??

そんな事を考えているうちにも、松屋さんは奉公人を引きつれて階段を再度上っていきました。確か奉公人たちは最上階、松屋さんは最上階より2つ下の階にある少し良い部屋を取っているらしいので、これから再びあの階段を上る事になります。

ちなみに、この宿が内階段より日射や気温の影響を受けやすい外階段な事には当然意味があります。商人の利用が多いこの宿では荷物の搬入も当然ながら考慮しなくてはならず、各階の入口に大きく作られた踊り場から縄を地上に垂らして引っ張り上げて搬入できるようになっているのです。商人には喜ばれる外階段ではあるのですが、万が一を考えると壊れやすい商品には向かない搬入方法なので、簪などを売る小間物屋のあの人たちは利用しなかったようです。

そして商人が多く泊まる宿だからこそセキュリティはしっかりとしていて、各階の入口には守衛室があり常時守衛がいます。更に階段自体も1階まで降りればエントランスに通じていて、そこにも守衛や宿の従業員が常に待機しています。

つまり、先程までのやり取りは結構多くの人が見ていたという事です。

「叔父上、部屋に戻りましょう。
 ここは人目が多すぎます」

兄上がそう叔父上に言えば、叔父上も頷いて

「櫻、もう熱は大丈夫か?
 あまり無理はするな」

と先程までの渋い顔とは打って変わって、心配そうに私の顔を覗き込みます。

「しっかりと休んだので、もう大丈夫です。
 それより……その、緋桐殿下が……」

私達が部屋に戻ろうと話している最中も、実は緋桐殿下はじっと山吹を見ていました。そして私が叔父上たちに緋桐殿下の事を伝えようとした時、当の緋桐殿下が動きました。

「貴方は山吹……ですよね?」

少し改まった口調で慎重に言葉を選び、更には周囲に聞こえないようにとても小さな声で話す緋桐殿下は、とても緊張した面持ちをしていました。自分の名前を呼ばれた山吹はギョッとした表情で緋桐殿下を見てから、さり気なく1歩後ろに下がって僅かに腰を落として何時でも動けるように構えます。同時に叔父上は私を背に庇うように動き、兄上は私よりも更に後ろに下がって私の背後を守るように動きました。

「……警戒するのも仕方が無いとは思う。
 だが、俺には貴方達に対する敵意も害意もない。
 ただ幾つか確認したい事と、伝えたい事がある……それだけだ」

叔父上の背中越しに聞く緋桐殿下の声は小さくて良く聞こえないのですが、それでも先程までの殿下の声と違って傲慢さも軽薄さも無く、穏やかで真面目な響きを感じます。

少しの間、叔父上は悩んだようでした。ただ、それでも伝えたい事というのが気になったのか、

「解りました。ここでは人目がありすぎます。
 部屋へと来ていただけますか?」

そう緋桐殿下に伝えたのでした。




2階の部屋は地上の喧騒が伝わりやすく、結果として会話が喧騒に紛れて隣室に居ても聞こえづらいという利点がありました。

そんな部屋の中で叔父上と緋桐殿下が向かい合って座り、山吹は叔父上のすぐ後ろに控えて私と兄上は少し離れた場所に座ります。部屋の中の空気はかなり緊迫していて、正直胃がキリキリと痛みそうな程です。

「お初にお目にかかる、私はヒノモト国第二王子の緋桐と申す。
 貴方は碧宮家の令法りょうぶ殿……ですよね?」

「……その男性は既に亡くなったと記憶しています。
 そして私はヤマト国の商人で吉野家鬱金うこんにございます。
 して、緋桐殿下。何故私をその死人しびとだと思われたのか、
 理由をお伺いしても?」

吉野家というのは茴香ういきょう蒔蘿じら両殿下から叔父上に贈られた屋号です。王家御用達になってほしいという茴香殿下たちの要望を断り続けてきた叔父上たちでしたが、5年前の襲撃を機に考えを少し改めたのです。

当時はまだ成人していなかった私も含めて全員で相談した結果、隠れ住んでいても襲われるのなら、しっかりとした基盤を作って簡単に手出しができないだけの影響力を持った方が良いのではないかという意見が出ました。最終的にはその意見よりも、山以上に人が近づけない場所を見つけてそこに逃げるという意見が採用になったのですが、同時に「何時までも逃げ続ける事はできない」と誰もが思いました。

どうやら叔父上はその話し合いの事を両殿下に手紙で伝えたようで、その結果「王家御用達とは言わないから、せめてヤマト国の地名を使った屋号を名乗ってくれ。そうすれば王家が後ろ盾になっていると暗に示す事が出来るから」と言われたのだそうです。吉野屋の元となったヨシノという地は、茴香殿下が治めていたアスカ村よりも更に南にあった地域で、ヤマト国の中でもかなり南部にある山です。王家の避寒地ひかんちだったのですが、かなり昔に災害によって人が住まなくなった山なんだとか。その災害の時にヨシノ村の人は命をなげうって王家の人を守ったそうで、今でも王家の人は定期的に慰霊祭を行っているんだそうです。その山の生き残りの最後の子孫というのが叔父上が持つ戸籍で、そんな経緯のある商人に少しばかり王家が目をかけるのは仕方がないとヤマト国では思われていますし、珍しい品々もヨシノ村で代々受け継がれた秘伝という事になっています。そのヨシノという地名に吉野という字を当てて、吉野家と名乗るようになったのです。




吉野家の名前の由来に関しては置いといて、何故緋桐殿下が私達の事を碧宮家の者だと解ったのかは私も気になります。緋桐殿下の年齢だと、母上や叔父上たちと直接会った事は無さそうなのですが……。

「正確には令法殿をおぼえ」

「殿下、私は鬱金です。それから私はただの一平民ですから、
 言葉遣いはどうか先程までと同じように……」

名前を即座に訂正する叔父上です。そして今気づきましたが、叔父上は一度も自分が「碧宮家の令法」であるとは言っていません。その事に緋桐殿下は気付いているんでしょうか?

「……解りました。あー、いや。解った。
 鬱金殿を見て思い出した訳じゃなく、山吹を見て思い出したんだ。
 俺が5歳の時、天都で完膚なきまでに俺を叩きのめしたヤツだと」

「山吹を……?」

怪訝そうな顔をした叔父上は、そのまま後を振り返って「山吹。お前、5歳の子供相手に何をしてるだ?」という呆れたような表情になります。

「覚えがありません」

叔父上の視線に慌てて否定する山吹ですが、

「当時の俺は、国では神童ともてはやされていた。
 まぁ自分で言うのも何だが、同年齢の子供の中では剣の腕は優れていたと思う。
 ただそれでも神童なんて呼ばれる程のものじゃない。
 俺の母親は褒めて伸ばすという教育を実践していたようだが、
 分別のつかない年齢だった俺は、大人相手でも勝てると増長してしまって……。
 天都に連れて行ってもらった際に、たまたま通りすがりに見かけた私塾で
 子供相手に剣の稽古をしているのを見つけて、乱入したんだ。
 で、山吹にこっぴどくやられた……と。
 後になってその私塾が碧宮家の当主がやっている私塾だと知ったんだ」

何やってるんですか、緋桐殿下。と口に出しこそはしなかったものの、思いっきり呆れた視線を殿下に向けてしまいます。いや、でも5歳なら仕方ないのかも?
だって5歳って幼稚園児でしょ。なら周囲の大人の責任だわ。

「ただ、俺はその事にはとても感謝しているんだ。
 母親や周囲の褒めて伸ばすという教育方針をどうこう言うつもりはないんだが、
 俺にとってはあの日、初めて悔しいって気持ちと、
 次は勝ちたいという気持ちを知ったんだ。それが俺の原点となった」

そう言った緋桐殿下は、山吹へと視線を移し

「だから、山吹には礼を言う。お前のおかげ今の俺がある」

そして、と続けた緋桐殿下の視線が私へと向きます。

「5年前、色々とあって少々道を外れかけていた俺に
 道を示してくれたのが櫻姫、貴女だ。だから貴女にも感謝をしている」

そう言うと、綺麗な所作でスッと頭を下げます。自分より年上の男性に頭を下げられるとどうすれば良いのかわからず、アワアワと慌ててしまいます。それに心当たりがあれば「そんな事ないですよ」とか言えるのですが、そもそも道を示した覚えが欠片もありません。5年前、つまり天都で呪詛を止めた時は緋桐殿下には迷惑しか掛けなかったような……。

慌てる余り何にも言えなくなっている私に、

「櫻姫を困らせたい訳じゃないし、何か返事が欲しい訳でもない。
 だからそんなに不安そうにしないでくれ」

と少し困ったように笑って緋桐殿下が言います。とりあえず、一つだけ言えるとすれば

「私は感謝されるような事は何もしていません。
 あと、出来れば姫と呼ぶのは止めて頂けると……」

緋桐殿下が私を姫と呼ぶのは牡丹様の影響でしょうが、街中でいきなり姫呼びは目立って仕方がありません。

「あぁ、そうだな。では櫻嬢で……。
 そして槐殿。先程は話しを合わせてくれて助かった。貴方にも礼を言う」

「いえ、その……大した事では……」

兄上はどう返事をしたものか困ったようで、叔父上に向かって「どうしよう」と視線で訴えます。兄上からすれば、まだ名乗りもしていないのに名前を知られている訳で、困惑しかないと思います。

「はぁ……」

叔父上が盛大に溜息をつくと、キッと緋桐殿下を見据えます。

「良いですか、緋桐殿下。
 仮に私達が殿下の言う10年以上前に死んだはずの者だった場合、
 私達と関わる事で殿下にまで危険が及ぶ可能性があるという事を
 理解されていますか?」

「勿論だ。
 それでも俺は、俺という人間の根幹部分に影響を与えてくれた山吹や
 俺の未来が歪んだ方向へ延びようしていた時に正してくれた櫻嬢という
 大恩ある2人に危険が及ぶかもしれないというのに、
 我が身可愛さに素知らぬ振りをするような男にはなりたくない。
 それに山吹は自分の身を守る事ができるだろうが、櫻嬢は……」

その緋桐殿下の言葉に、叔父上や山吹は揃って私を見ると「あぁ……」といった諦めと納得が混じった溜息のような声を出しました。気にしているところを的確に射抜いてくる緋桐殿下に少々恨めしい気持ちになってしまいますが、私の自衛能力が低い事も確かです。危ない場所に行かない+全力で走って逃げるというのが、私にできる最大の防御ですから。

「緋桐殿下の覚悟は解りました。
 そして殿下がどこまでもヒノモト国の武人らしい人である事も……」

叔父上がやれやれと言わんばかりの表情でそう告げれば、緋桐殿下は「これ以上はない褒め言葉だ」と笑います。
 
「そこでなんだが、俺がこの宿を借り切ってしまうのはどうだろう?
 そうすれば不特定多数の者がこの宿に出入りする事はなくなる。
 更には俺の知り合いの女性の中でも、
 特に戦力の高い者を数人ここに呼んで護衛に当たらせよう。
 山吹や鬱金殿や槐殿は戦えるのだろうが、櫻嬢は女性だ。
 彼女たちを護衛にすれば、女性にしか入れない場でも彼女を守る事ができる」

かなり豪快すぎる提案ですが緋桐殿下には下心は全く無く、私達を本当に心配してくれているのだという事は良く解ります。とてもありがたいとは思うのですが、護衛の女性とはいえ、知らない人と一緒にいるのはちょっと嫌だなぁなんて思ってしまいます。この16年間で随分と人見知りになってしまいました。

それに知らない人が一緒だと、三太郎さんとコミュニケーションが取りにくくなりますし……。

「緋桐殿下のご提案は嬉しく思うのですが、
 例え殿下のご紹介とはいえ、見知らぬ者を家族の側に置きたくはないのです」

私の気持ちを汲み取ってくれたのか、不敬罪覚悟で叔父上が殿下の提案を却下してくれました。叔父上が断ってくれてホッと安堵の息を吐きます。ただ、その提案の却下はとんでもない結果となって返ってくることになりました。

「ふむ、そうだな鬱金殿の言う事も解る。
 女性護衛を1人付けるだけでも違うのではと思ったのだが、
 俺にとっては知人でも櫻嬢たちからすれば見知らぬ他人だ。

 ……そうだ、俺も此処に泊まる事にしよう。
 1人でも戦える者が側に多く居た方が安全だからな」

緋桐殿下の限りない善意が、想定外の形になって炸裂したのでした。
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