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2章
嫉妬と羨望と誓いと願い :槐
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あぁ、またこの夢だ……。
僕には小さい頃から何度も見る夢がある。
真っ暗な空間に飲み込まれそうになる僕と、そんな僕の手を掴んで目に涙を溜めて「あいうえ」と何度も僕を呼ぶ妹。毎回唐突にこの場面から始まる夢を何歳頃から見るようになったのかは覚えていない。ただかなり小さい頃から見ている事は確かで、その証拠に夢の中の妹は全く成長しないから赤ん坊のような姿のままだ。対し僕は年相応の姿になっているので、最近では妹の小さすぎる手を掴む自分の大きな手を見て、「あぁ夢だ」と直ぐに気付けるようになった。
そしてこの夢は、どれだけ僕が努力をしても毎回同じ結末を迎える。パッと場面が変ったと思ったら僕が安全な場所に居て、妹が……櫻が真っ暗な空間に飲み込まれてしまうのだ。その時の絶望や罪悪感は言葉では言い表せられない程だ。そんな気持ちで迎える目覚めは当然ながら最悪で、小さい頃は恐怖もあって飛び起きたものだった。今でも寝起きと同時に大きなため息をついてしまうし、特に今日は寝汗を大量にかいた事もあって今すぐに頭から冷水を浴びたい気分だ。
「槐、傷の具合はどう?」
僕が起きたことに気付いた母上が、小さな光を放つ桃様の霊石を手に囁くような声で問いかけながら近付いてきた。そして僕のすぐ横に腰を下ろすと、そっと僕の額に手を乗せる。母上の掌はひんやりとしていて、目を細めたくなる程に気持ちが良い。でもそれは僕が熱を出している証だ。
「傷の方は大丈夫なのですが、
どうも毒の影響があるようで少し吐き気と寒気がします」
「浦様の御力のおかげで毒の大半は浄化されているはずなのに、
かなり強い毒だったのかしら……」
母上の表情が心配そうに歪み、僕の額に乗せられた手はそのまま頭を優しく撫で始めた。流石にもう小さな子供ではないのだからと止めたい気持ちもあるのだが、同じぐらい今だけは甘えたいという気持ちもあった。それぐらいに今日は酷い一日だった。
昼間までは何時もと同じ一日だった。
畑仕事ができなくなった母上や橡の代わって、僕が畑仕事を手伝った事以外は特にこれといって変化のない一日だった。
それが一変したのは、突如現れた桃様に連れられて桃様の部屋へ隠れなくてはならなくなってからだった。そこからは逃げて逃げて逃げて……。気が付いたら肩と太ももに矢を受けて動けない僕を桃様が抱えて逃げてくださっていた。
あの時、僕は見捨てられる覚悟をしていた。
桃様は妹を守護する精霊様だ。余裕があれば僕たちの事も助けてけて下さるようだけど、余裕がなければ切り捨てられる。それは当然だ、三太郎様たちは妹を守る為にここに居られるのだから。
ただ小さい頃は、どうしても理解も納得もできなかった。
どうして妹だけが精霊様と一緒に暮らす事が出来るのか?
どうして妹だけが3柱もの精霊様がついておられるのか?
どうして妹だけが、櫻だけが特別なんだ!!
そう思った事は1度や2度じゃない。嫉妬や羨望の気持ちが強すぎて、心の中が焼け焦げてしまったように感じた日もあった。だって考えてみても欲しい。当時の僕は十三詣りを終えていなかったので仕方がないが、天女の母上ですら守護精霊は二柱しかおられず、その二柱の精霊様たちとは一緒に暮らすどころか会話すらした事がないというのに、櫻は抱き上げてもらったり一緒に遊んだりしているのだ。
また三太郎様は櫻が安全快適に暮らせるようにと、とても立派な邸を建てられた。他にも様々な精霊様のお知恵や御業が籠められた家具や道具、施設といったモノを惜しみなく与えてくださった。七五三の為に山を下りて初めて知ったが、僕たちの生活の恵まれかたは高位華族どころか王族ですら手の届かない水準だった。ただその精霊様のお知恵と御業は全て櫻の為に用意されたモノで、僕たちは櫻の家族だから一緒に使う事を許されているに過ぎない。
それでも僕が「櫻はずるい」と言動に表さなかった理由は、母上や叔父上、橡や山吹が決して櫻を特別扱いしなかったからだ。もし母上たちまでもが櫻を特別扱いしていたら、僕は櫻を傷つけるような言動を取っていたかもしれない。それに当の櫻が僕の事を本当に慕ってくれるのだ。自分を慕って後を付いてくる小さな女の子を傷つけるなんて事、どれ程劣等感に悩まされても出来る訳がない。
「夢を見ていたのです。
小さい頃から時々見ていた夢で、僕の代わりに櫻が暗闇に飲み込まれる夢です。
櫻はとても小さくて、そんな小さな櫻が僕を助けようとして代わりに……」
僕は今まで一度もこの夢の話しを誰かにした事はない。
夢は神様の管轄だ。自分の願いに対し神様が「こうしなさい」というお告げを伝える為のモノだと言われている。つまり僕の心の中に、櫻を消してしまいたいという気持ちがあるということになる。こんな事、誰かに話せる訳がない。
だけど今は母上の手の優しさと、頭がクラクラとするほどの熱に少しだけ話してしまいたくなってしまった。
「まぁまぁ。とても小さい頃の事なのに槐は覚えていたのね。
昔、貴方を助けようとして櫻が洞穴の大穴に落ちた事があったのよ。
幸いにも三太郎様の御尽力で大きな怪我をせずに済んだのだけど、
その場面を見た私は衝撃のあまり気を失ってしまったし、
貴方や櫻は高熱を出して寝込んでしまったの」
「…………は?」
母上の言っている意味が解らない。
アレは夢じゃなくて本当にあった事だとでもいうのだろうか?
夢に出てきた赤ん坊のように小さな櫻が、僕を守るために大穴に落ちた??
僕たちの行動範囲にある大穴といえば塩汲み場に続く階段か、動く床と滝のある洞穴の二つだ。夢の印象だと足元は階段ではなく、底の見えない真っ暗な穴だった。つまり動く床の大穴だという事だ。あんな大穴に僕の所為で落ちたというのなら、夢の中で感じた謎の罪悪感にも納得がいく。
そしてそんな小さな頃から櫻は自分の事より僕の事を優先しようとしていたのか。
それを思うと情けなくて情けなくて……、余りの情けなさに腹まで立ってくる。
「その、櫻は……。他のみんなは大丈夫ですか?」
一つ大きく息を吐いてから話題を変える。近くで僕と同じように櫻や橡が横たわっている姿が視界に入っていたけれど、2人とも寝息が少し苦しそうで心配になってしまう。そんな唐突すぎる話題転換に母上は少し面食らったようだけど、熱の所為だと思ったのか特に気に留める事なく、
「櫻は相当疲れていたみたいで、まだ眠っているわ。
それにあんなに泣いたのは初めてだから、泣き疲れてしまったのね」
そう、櫻が泣いたのだ。僕は櫻が涙を流すのを、声を上げて泣くのを初めて見た。
あの時……
無事に脱出し、拠点に残っている僕たちの痕跡を消す為に三太郎様が向かわれた後。少ししてから気を失っていた橡が目覚めた。最悪の事態にならなかった事に、母上をはじめとした大人たちは安堵したようで、明らかに室内……ここは室内と言って良いのか? まぁとにかく、安心したからか雰囲気が一気に明るくなった。僕自身、橡が目覚めた途端に気が抜けて、一気に身体を襲うあらゆる痛みが酷くなったぐらいだ。
ところが、そこで櫻がポロポロと涙を零しだしたのだ。それに慌てたのは僕だけじゃなかった。母上や叔父上も慌てて
「何処か痛めたのか?」
「怪我をしたの? どうしたの??」
と櫻の怪我を確認し始めた。何せ櫻が泣く所なんて、全員が今まで一度も見た事がなかったのだ。櫻自身も涙を流している事に驚いていて、最初は「あれ?」なんて言いながら涙を拭っていたのだが、途中から堪えきれなくなったようにしゃくりあげ始めた。
「わからない。ぐちゃぐちゃなの。
橡が助かって良かった。みんなが無事で良かった。
それを嬉しく思う気持ちが一番大きいんだけど、
みんなで過ごしたあの場所が無くなっちゃった事が悲しくて……
兄上と一緒に遊んだ場所も、母上と一緒に過ごした部屋も、
橡や叔父上、山吹と一緒に過ごした色んな場所が
全部、全部、無くなっちゃったぁ」
ヒクッ、ヒクッと何度も何度も息を激しく吸い上げながら、どうにか自分の気持ちを言葉にした櫻。そんな櫻に釣られるように僕の目までもが熱くなってきてしまう。そんな事を言われたら僕だって同じ気持ちだ。あの場所は確かに三太郎様が櫻の為に用意した場所ではあるけれど、そこには僕たち家族の思い出がいっぱい詰まっていた。
「それに黒松や王風を、助けられなかったっっ」
更にはトドメとばかりに放たれた櫻の言葉に、僕の方の涙腺も限界を突破した。僕は男だ。それに兄だ。人前で泣くなんて絶対にできないと必死に涙を堪えようとしたけれど、僕を守って火に包まれた黒松や、どんどん遠くなっていく王風の体が血で赤く染まっていく様が脳裏をよぎって堪える事ができなかった。あの二頭は僕に良く懐いてくれた。一緒に湖へ遊びにも行ったし、世話だって僕が率先してやっていた。僕たち家族だけが暮らすこの山で、あの二頭が僕の初めての友達だった。その友達を同時に失ってしまったのだ。
そんな僕を背中にそっと隠してくれたのは叔父上だった。
「男はつらいよな。だが大人になったらもっと泣けない。
今なら誰も見ていないし、櫻の声で槐の声は誰にも聞こえない。
だから……」
僕にだけ聞こえるように囁く叔父上は、皆の視線から僕を守るようにその大きな背中で僕を隠してくれた。櫻はといえばどうやら涙を堪える事を諦めたようで、先程までと違ってわんわんと声を上げて泣きだしていた。叔父上の言う通り、今なら櫻の泣き声で僕の声は誰の耳にも届かないだろう。僕は叔父上の背中にもたれるようにして顔を隠すと、声を必死に殺しながら泣いた。
僕がもっと強ければ黒松や王風は死なずに済んだのだろうか。
そう思うと涙が止まらず、僕は叔父上の背中を濡らしながら泣き疲れて眠ってしまうまで声を殺して泣き続けた。
今になって思い返せば十三詣りを終えた男として恥ずかしいが、思い存分泣いた事で心の整理は出来たように思う。
「もう少し寝ていなさい。
母は皆と今後の相談をしてきますね」
母上は僕を撫でていた手を止めると、そう言って立ち上がった。その言葉を聞いた僕は無理矢理身体を起こすと母上の手を掴んで引き留めた。
「僕も行きます」
「何を言っているの、無理をしては身体に悪いわ」
「でも僕も十三詣りを終えた大人です。確かに経験も何もかもが足りませんが、
母上たちがどういう相談をするのかぐらい、僕だって知っておきたいです。
今回は大人しく見学するだけにしますから」
必死に母上にそう伝えると、母上は困ったような表情になった。母上を困らせたい訳じゃないけれど、何時までも子供のままでは駄目なんだ。
山の生活はとても穏やかで、僕や家族を傷つける第三者は存在しなかった。幼い頃には火の妖が丁度今の時期に現れて困っていたけれど、何時の頃からか現れなくなって本当に穏やかで平和な日々を送っていた。
ただ同時に僕が十三詣りを迎えた時に、叔父上から僕の父親や生まれに関する秘密を聞かされていて、今後どうしたいのか考えておいてくれとも言われていたし、僕が選ぶ選択次第では平和な生活が送れなくなる事は知っていた。
「私は決して勧めないし、姉上も全力で反対するだろうが
槐が天都に戻って華族として身を立てたいと言うのであらば、
それに相応しい教育を施すつもりではある」
と叔父上は言ってくれたが、僕は以前から叔父上たちのように皆に喜ばれる品々を売りに行く行商人になりたいと思っていた。何より僕が天都に行けば、そして華族として生きようとしたら家族を再び危険に晒してしまう可能性がとても高いって事ぐらい僕にだって解る。
まぁ……行かなくても危険だったんだけど……。
ただ、守られる側ではなく守る側になりたいという思いは変らない。だからやれる事を少しずつやっていきたいのだと母上に伝えれば、母上は困ったように、でもどこか誇らしげに微笑んでくれた。
「仕方がないわね。
でも自分の体調を最優先するのよ?」
そう言うと僕は母上に連れられて、几帳で仕切られた簡易寝室を出たのだった。
「今回の襲撃者は、十中八九ミズホ国の者です」
そう仰ったのは浦様で、金様や桃様は無言で頷いて同意を示された。几帳で仕切られた向う側では櫻や橡が寝ている為に小さな声で行われた相談は、浦様の衝撃的な一言から始まった。
「ミズホ……。それは本国ですか?
それとも蒼宮家ですか?」
「私にその違いは解りませんが、全員が水の守護を持っていた事は確かです。
そして更には全員が火の加護も持っていました」
「それも霊格の低いヤツだったら守護と間違えそうなぐらいに
何重にも重ねた加護だったな。胸糞わりぃったらねぇぜ」
叔父上の問いかけに浦様と桃様が苦々しい顔をしてお答えになった。それは襲撃者をヒノモト国人に見せかける為の策という事なのだろうか?
「あ奴らは常に火や爆発を用いた襲撃をするのであろう。
仕事の度に火の加護を掛け続けた結果、
それらが重なってまるで火の守護を持っているかのようであった」
「ならばミズホ国から極力遠い場所に移動するべきでしょうか?」
「その方が良いっちゃー良いんだが、その前に気になる事がある。
何であの場所がバレたんだ??」
山吹の質問に疑問で返した桃様に全員が言葉に詰まってしまう。この問題を解決しなければ、再び居場所を特定されて襲撃されてしまう。そうなれば僕たちはこの先、常に逃亡生活を余儀なくされて安住の地は二度と持てないだろう。
「それなのですが、恐らく水鏡が使われたのだと思います」
「水鏡ですか?」
「えぇ、水鏡は水の神が御作りになられた神器です。
水の波動を周囲に放ち対象物を見つけ出す神器で、
原初の大陸からの船旅の道しるべとして水の民に与えられました」
浦様が仰るには大きな水盆の形をしたその神器は周囲の地形だったり島だったりを水盆に映しだし、精霊力を発動させれば波紋が広がって対象物の所で波が乱れるのだそうだ。あの呪詛騒動の直後、馴染みの無い水の波動を感じた事が何度かあったそうで、恐らく呪詛の波動に紛れさせて水鏡を使ったのではないかという事だった。
「あの時は皆を呪詛から守るために、強固な結界を拠点に張り続けていました。
その結界に水鏡の放つ波動がぶつかり、
水鏡に異物として映し出されたのだと思います」
「じゃぁ、結界さえ張らなければバレねぇって事か?」
「断言はできませんが、通常の精霊力に反応するような構造ではありません。
それでは私達普通の精霊や、守護の強い人間にまで反応して使えませんからね」
特別に強い精霊力や澱みにしか反応しない水鏡という神器。ならば……
「あの……。それならば天都に行った櫻にも反応してしまったのでは?」
母上には見学だけだからと言ったのに、思わず疑問が口から出してしまった。
「勿論、その可能性はある。
だが人にあるまじき速度で天都へと移動する反応を見て
人の子が移動しているとは到底思わぬであろう、安心せよ」
僕の疑問に金様が穏やかに、そして明確な理由をつけて説明をしてくださった。櫻からは天都まで通常の半分以下の日数で移動したのだと聞いていた。確かにそれで人が移動しているとは誰も思わないだろう。
良かった。
もし櫻の存在を水鏡が捉えていたら櫻が危険だった。それに何より櫻の反応が山に続いた所為で僕たちの居場所が敵方に知られたのだとしたら、櫻は絶対に気に病んでしまうだろう。色々と思うところはあったけれど、それでもやっぱり櫻には笑っていてほしいと思う。
「その神器は何処にあるのだ?」
「ミズホ国ですね」
「じゃぁ、行先はミズホ国から一番遠い場所で決まりだな」
三太郎様がそうお決めになれば叔父上たちも従うしかない。ただ精霊様は櫻の為を思って、常に最善を尽くしてくださっている事は解っている。だから叔父上たちも反論せずに「はい」と了承した。
その後はより細かい相談になっていったが、その頃には僕の熱が再び上がり始めていたようで何時の間にか眠ってしまっていた。
何かが僕に触れる気配に目覚めれば、几帳の向う側で櫻と一緒に布団にくるまっていた。新鮮な空気を取り入れる為とかで天井部分から延びる筒を海面には出しているものの、避難船?の大半は海中にある為に室内は少し肌寒く。更には適温に保たれた柔らかい水の御帳台ではなく、固い床に旅の際に使う厚手の敷布を敷いて寝ているので寝心地は良くない。そんな事もあってか横で眠っていた櫻が僕にすり寄ってきていたらしく、仕方がないなぁと思いながら櫻を抱きしめた。今の僕の体温なら、櫻には温かくて丁度良いだろう。
櫻の事を羨ましいと思った事は数知れないし、これから先も思うかもしれない。
でもそれ以上に櫻の事が大切だし、守りたいのだと今回の事で再確認した。
僕は強くならなくてはならない。
覚えていない程に幼かったあの日も、今日も、櫻は僕を守るために無茶をする。
もちろん僕だけじゃなく母上だろうが叔父上だろうが無茶はするんだろうけど、どうも櫻は僕の事を自分より年下のように思っている節がある。最近ではそういった雰囲気は減ってきたけれど、数年前までは特に顕著だった。母上は女の子はそういうものよと言っていたが、僕が年上で兄なんだから僕が櫻を守るんだ。
櫻が二度と無茶をする事がないように。
「僕は絶対に強くなってみせるから、だからもう無茶はしないで。
それに、もう泣かないで、笑顔でいて。僕も頑張るから……」
それはこの先も絶対に揺らがない誓いであり、切実な願いだった。
僕には小さい頃から何度も見る夢がある。
真っ暗な空間に飲み込まれそうになる僕と、そんな僕の手を掴んで目に涙を溜めて「あいうえ」と何度も僕を呼ぶ妹。毎回唐突にこの場面から始まる夢を何歳頃から見るようになったのかは覚えていない。ただかなり小さい頃から見ている事は確かで、その証拠に夢の中の妹は全く成長しないから赤ん坊のような姿のままだ。対し僕は年相応の姿になっているので、最近では妹の小さすぎる手を掴む自分の大きな手を見て、「あぁ夢だ」と直ぐに気付けるようになった。
そしてこの夢は、どれだけ僕が努力をしても毎回同じ結末を迎える。パッと場面が変ったと思ったら僕が安全な場所に居て、妹が……櫻が真っ暗な空間に飲み込まれてしまうのだ。その時の絶望や罪悪感は言葉では言い表せられない程だ。そんな気持ちで迎える目覚めは当然ながら最悪で、小さい頃は恐怖もあって飛び起きたものだった。今でも寝起きと同時に大きなため息をついてしまうし、特に今日は寝汗を大量にかいた事もあって今すぐに頭から冷水を浴びたい気分だ。
「槐、傷の具合はどう?」
僕が起きたことに気付いた母上が、小さな光を放つ桃様の霊石を手に囁くような声で問いかけながら近付いてきた。そして僕のすぐ横に腰を下ろすと、そっと僕の額に手を乗せる。母上の掌はひんやりとしていて、目を細めたくなる程に気持ちが良い。でもそれは僕が熱を出している証だ。
「傷の方は大丈夫なのですが、
どうも毒の影響があるようで少し吐き気と寒気がします」
「浦様の御力のおかげで毒の大半は浄化されているはずなのに、
かなり強い毒だったのかしら……」
母上の表情が心配そうに歪み、僕の額に乗せられた手はそのまま頭を優しく撫で始めた。流石にもう小さな子供ではないのだからと止めたい気持ちもあるのだが、同じぐらい今だけは甘えたいという気持ちもあった。それぐらいに今日は酷い一日だった。
昼間までは何時もと同じ一日だった。
畑仕事ができなくなった母上や橡の代わって、僕が畑仕事を手伝った事以外は特にこれといって変化のない一日だった。
それが一変したのは、突如現れた桃様に連れられて桃様の部屋へ隠れなくてはならなくなってからだった。そこからは逃げて逃げて逃げて……。気が付いたら肩と太ももに矢を受けて動けない僕を桃様が抱えて逃げてくださっていた。
あの時、僕は見捨てられる覚悟をしていた。
桃様は妹を守護する精霊様だ。余裕があれば僕たちの事も助けてけて下さるようだけど、余裕がなければ切り捨てられる。それは当然だ、三太郎様たちは妹を守る為にここに居られるのだから。
ただ小さい頃は、どうしても理解も納得もできなかった。
どうして妹だけが精霊様と一緒に暮らす事が出来るのか?
どうして妹だけが3柱もの精霊様がついておられるのか?
どうして妹だけが、櫻だけが特別なんだ!!
そう思った事は1度や2度じゃない。嫉妬や羨望の気持ちが強すぎて、心の中が焼け焦げてしまったように感じた日もあった。だって考えてみても欲しい。当時の僕は十三詣りを終えていなかったので仕方がないが、天女の母上ですら守護精霊は二柱しかおられず、その二柱の精霊様たちとは一緒に暮らすどころか会話すらした事がないというのに、櫻は抱き上げてもらったり一緒に遊んだりしているのだ。
また三太郎様は櫻が安全快適に暮らせるようにと、とても立派な邸を建てられた。他にも様々な精霊様のお知恵や御業が籠められた家具や道具、施設といったモノを惜しみなく与えてくださった。七五三の為に山を下りて初めて知ったが、僕たちの生活の恵まれかたは高位華族どころか王族ですら手の届かない水準だった。ただその精霊様のお知恵と御業は全て櫻の為に用意されたモノで、僕たちは櫻の家族だから一緒に使う事を許されているに過ぎない。
それでも僕が「櫻はずるい」と言動に表さなかった理由は、母上や叔父上、橡や山吹が決して櫻を特別扱いしなかったからだ。もし母上たちまでもが櫻を特別扱いしていたら、僕は櫻を傷つけるような言動を取っていたかもしれない。それに当の櫻が僕の事を本当に慕ってくれるのだ。自分を慕って後を付いてくる小さな女の子を傷つけるなんて事、どれ程劣等感に悩まされても出来る訳がない。
「夢を見ていたのです。
小さい頃から時々見ていた夢で、僕の代わりに櫻が暗闇に飲み込まれる夢です。
櫻はとても小さくて、そんな小さな櫻が僕を助けようとして代わりに……」
僕は今まで一度もこの夢の話しを誰かにした事はない。
夢は神様の管轄だ。自分の願いに対し神様が「こうしなさい」というお告げを伝える為のモノだと言われている。つまり僕の心の中に、櫻を消してしまいたいという気持ちがあるということになる。こんな事、誰かに話せる訳がない。
だけど今は母上の手の優しさと、頭がクラクラとするほどの熱に少しだけ話してしまいたくなってしまった。
「まぁまぁ。とても小さい頃の事なのに槐は覚えていたのね。
昔、貴方を助けようとして櫻が洞穴の大穴に落ちた事があったのよ。
幸いにも三太郎様の御尽力で大きな怪我をせずに済んだのだけど、
その場面を見た私は衝撃のあまり気を失ってしまったし、
貴方や櫻は高熱を出して寝込んでしまったの」
「…………は?」
母上の言っている意味が解らない。
アレは夢じゃなくて本当にあった事だとでもいうのだろうか?
夢に出てきた赤ん坊のように小さな櫻が、僕を守るために大穴に落ちた??
僕たちの行動範囲にある大穴といえば塩汲み場に続く階段か、動く床と滝のある洞穴の二つだ。夢の印象だと足元は階段ではなく、底の見えない真っ暗な穴だった。つまり動く床の大穴だという事だ。あんな大穴に僕の所為で落ちたというのなら、夢の中で感じた謎の罪悪感にも納得がいく。
そしてそんな小さな頃から櫻は自分の事より僕の事を優先しようとしていたのか。
それを思うと情けなくて情けなくて……、余りの情けなさに腹まで立ってくる。
「その、櫻は……。他のみんなは大丈夫ですか?」
一つ大きく息を吐いてから話題を変える。近くで僕と同じように櫻や橡が横たわっている姿が視界に入っていたけれど、2人とも寝息が少し苦しそうで心配になってしまう。そんな唐突すぎる話題転換に母上は少し面食らったようだけど、熱の所為だと思ったのか特に気に留める事なく、
「櫻は相当疲れていたみたいで、まだ眠っているわ。
それにあんなに泣いたのは初めてだから、泣き疲れてしまったのね」
そう、櫻が泣いたのだ。僕は櫻が涙を流すのを、声を上げて泣くのを初めて見た。
あの時……
無事に脱出し、拠点に残っている僕たちの痕跡を消す為に三太郎様が向かわれた後。少ししてから気を失っていた橡が目覚めた。最悪の事態にならなかった事に、母上をはじめとした大人たちは安堵したようで、明らかに室内……ここは室内と言って良いのか? まぁとにかく、安心したからか雰囲気が一気に明るくなった。僕自身、橡が目覚めた途端に気が抜けて、一気に身体を襲うあらゆる痛みが酷くなったぐらいだ。
ところが、そこで櫻がポロポロと涙を零しだしたのだ。それに慌てたのは僕だけじゃなかった。母上や叔父上も慌てて
「何処か痛めたのか?」
「怪我をしたの? どうしたの??」
と櫻の怪我を確認し始めた。何せ櫻が泣く所なんて、全員が今まで一度も見た事がなかったのだ。櫻自身も涙を流している事に驚いていて、最初は「あれ?」なんて言いながら涙を拭っていたのだが、途中から堪えきれなくなったようにしゃくりあげ始めた。
「わからない。ぐちゃぐちゃなの。
橡が助かって良かった。みんなが無事で良かった。
それを嬉しく思う気持ちが一番大きいんだけど、
みんなで過ごしたあの場所が無くなっちゃった事が悲しくて……
兄上と一緒に遊んだ場所も、母上と一緒に過ごした部屋も、
橡や叔父上、山吹と一緒に過ごした色んな場所が
全部、全部、無くなっちゃったぁ」
ヒクッ、ヒクッと何度も何度も息を激しく吸い上げながら、どうにか自分の気持ちを言葉にした櫻。そんな櫻に釣られるように僕の目までもが熱くなってきてしまう。そんな事を言われたら僕だって同じ気持ちだ。あの場所は確かに三太郎様が櫻の為に用意した場所ではあるけれど、そこには僕たち家族の思い出がいっぱい詰まっていた。
「それに黒松や王風を、助けられなかったっっ」
更にはトドメとばかりに放たれた櫻の言葉に、僕の方の涙腺も限界を突破した。僕は男だ。それに兄だ。人前で泣くなんて絶対にできないと必死に涙を堪えようとしたけれど、僕を守って火に包まれた黒松や、どんどん遠くなっていく王風の体が血で赤く染まっていく様が脳裏をよぎって堪える事ができなかった。あの二頭は僕に良く懐いてくれた。一緒に湖へ遊びにも行ったし、世話だって僕が率先してやっていた。僕たち家族だけが暮らすこの山で、あの二頭が僕の初めての友達だった。その友達を同時に失ってしまったのだ。
そんな僕を背中にそっと隠してくれたのは叔父上だった。
「男はつらいよな。だが大人になったらもっと泣けない。
今なら誰も見ていないし、櫻の声で槐の声は誰にも聞こえない。
だから……」
僕にだけ聞こえるように囁く叔父上は、皆の視線から僕を守るようにその大きな背中で僕を隠してくれた。櫻はといえばどうやら涙を堪える事を諦めたようで、先程までと違ってわんわんと声を上げて泣きだしていた。叔父上の言う通り、今なら櫻の泣き声で僕の声は誰の耳にも届かないだろう。僕は叔父上の背中にもたれるようにして顔を隠すと、声を必死に殺しながら泣いた。
僕がもっと強ければ黒松や王風は死なずに済んだのだろうか。
そう思うと涙が止まらず、僕は叔父上の背中を濡らしながら泣き疲れて眠ってしまうまで声を殺して泣き続けた。
今になって思い返せば十三詣りを終えた男として恥ずかしいが、思い存分泣いた事で心の整理は出来たように思う。
「もう少し寝ていなさい。
母は皆と今後の相談をしてきますね」
母上は僕を撫でていた手を止めると、そう言って立ち上がった。その言葉を聞いた僕は無理矢理身体を起こすと母上の手を掴んで引き留めた。
「僕も行きます」
「何を言っているの、無理をしては身体に悪いわ」
「でも僕も十三詣りを終えた大人です。確かに経験も何もかもが足りませんが、
母上たちがどういう相談をするのかぐらい、僕だって知っておきたいです。
今回は大人しく見学するだけにしますから」
必死に母上にそう伝えると、母上は困ったような表情になった。母上を困らせたい訳じゃないけれど、何時までも子供のままでは駄目なんだ。
山の生活はとても穏やかで、僕や家族を傷つける第三者は存在しなかった。幼い頃には火の妖が丁度今の時期に現れて困っていたけれど、何時の頃からか現れなくなって本当に穏やかで平和な日々を送っていた。
ただ同時に僕が十三詣りを迎えた時に、叔父上から僕の父親や生まれに関する秘密を聞かされていて、今後どうしたいのか考えておいてくれとも言われていたし、僕が選ぶ選択次第では平和な生活が送れなくなる事は知っていた。
「私は決して勧めないし、姉上も全力で反対するだろうが
槐が天都に戻って華族として身を立てたいと言うのであらば、
それに相応しい教育を施すつもりではある」
と叔父上は言ってくれたが、僕は以前から叔父上たちのように皆に喜ばれる品々を売りに行く行商人になりたいと思っていた。何より僕が天都に行けば、そして華族として生きようとしたら家族を再び危険に晒してしまう可能性がとても高いって事ぐらい僕にだって解る。
まぁ……行かなくても危険だったんだけど……。
ただ、守られる側ではなく守る側になりたいという思いは変らない。だからやれる事を少しずつやっていきたいのだと母上に伝えれば、母上は困ったように、でもどこか誇らしげに微笑んでくれた。
「仕方がないわね。
でも自分の体調を最優先するのよ?」
そう言うと僕は母上に連れられて、几帳で仕切られた簡易寝室を出たのだった。
「今回の襲撃者は、十中八九ミズホ国の者です」
そう仰ったのは浦様で、金様や桃様は無言で頷いて同意を示された。几帳で仕切られた向う側では櫻や橡が寝ている為に小さな声で行われた相談は、浦様の衝撃的な一言から始まった。
「ミズホ……。それは本国ですか?
それとも蒼宮家ですか?」
「私にその違いは解りませんが、全員が水の守護を持っていた事は確かです。
そして更には全員が火の加護も持っていました」
「それも霊格の低いヤツだったら守護と間違えそうなぐらいに
何重にも重ねた加護だったな。胸糞わりぃったらねぇぜ」
叔父上の問いかけに浦様と桃様が苦々しい顔をしてお答えになった。それは襲撃者をヒノモト国人に見せかける為の策という事なのだろうか?
「あ奴らは常に火や爆発を用いた襲撃をするのであろう。
仕事の度に火の加護を掛け続けた結果、
それらが重なってまるで火の守護を持っているかのようであった」
「ならばミズホ国から極力遠い場所に移動するべきでしょうか?」
「その方が良いっちゃー良いんだが、その前に気になる事がある。
何であの場所がバレたんだ??」
山吹の質問に疑問で返した桃様に全員が言葉に詰まってしまう。この問題を解決しなければ、再び居場所を特定されて襲撃されてしまう。そうなれば僕たちはこの先、常に逃亡生活を余儀なくされて安住の地は二度と持てないだろう。
「それなのですが、恐らく水鏡が使われたのだと思います」
「水鏡ですか?」
「えぇ、水鏡は水の神が御作りになられた神器です。
水の波動を周囲に放ち対象物を見つけ出す神器で、
原初の大陸からの船旅の道しるべとして水の民に与えられました」
浦様が仰るには大きな水盆の形をしたその神器は周囲の地形だったり島だったりを水盆に映しだし、精霊力を発動させれば波紋が広がって対象物の所で波が乱れるのだそうだ。あの呪詛騒動の直後、馴染みの無い水の波動を感じた事が何度かあったそうで、恐らく呪詛の波動に紛れさせて水鏡を使ったのではないかという事だった。
「あの時は皆を呪詛から守るために、強固な結界を拠点に張り続けていました。
その結界に水鏡の放つ波動がぶつかり、
水鏡に異物として映し出されたのだと思います」
「じゃぁ、結界さえ張らなければバレねぇって事か?」
「断言はできませんが、通常の精霊力に反応するような構造ではありません。
それでは私達普通の精霊や、守護の強い人間にまで反応して使えませんからね」
特別に強い精霊力や澱みにしか反応しない水鏡という神器。ならば……
「あの……。それならば天都に行った櫻にも反応してしまったのでは?」
母上には見学だけだからと言ったのに、思わず疑問が口から出してしまった。
「勿論、その可能性はある。
だが人にあるまじき速度で天都へと移動する反応を見て
人の子が移動しているとは到底思わぬであろう、安心せよ」
僕の疑問に金様が穏やかに、そして明確な理由をつけて説明をしてくださった。櫻からは天都まで通常の半分以下の日数で移動したのだと聞いていた。確かにそれで人が移動しているとは誰も思わないだろう。
良かった。
もし櫻の存在を水鏡が捉えていたら櫻が危険だった。それに何より櫻の反応が山に続いた所為で僕たちの居場所が敵方に知られたのだとしたら、櫻は絶対に気に病んでしまうだろう。色々と思うところはあったけれど、それでもやっぱり櫻には笑っていてほしいと思う。
「その神器は何処にあるのだ?」
「ミズホ国ですね」
「じゃぁ、行先はミズホ国から一番遠い場所で決まりだな」
三太郎様がそうお決めになれば叔父上たちも従うしかない。ただ精霊様は櫻の為を思って、常に最善を尽くしてくださっている事は解っている。だから叔父上たちも反論せずに「はい」と了承した。
その後はより細かい相談になっていったが、その頃には僕の熱が再び上がり始めていたようで何時の間にか眠ってしまっていた。
何かが僕に触れる気配に目覚めれば、几帳の向う側で櫻と一緒に布団にくるまっていた。新鮮な空気を取り入れる為とかで天井部分から延びる筒を海面には出しているものの、避難船?の大半は海中にある為に室内は少し肌寒く。更には適温に保たれた柔らかい水の御帳台ではなく、固い床に旅の際に使う厚手の敷布を敷いて寝ているので寝心地は良くない。そんな事もあってか横で眠っていた櫻が僕にすり寄ってきていたらしく、仕方がないなぁと思いながら櫻を抱きしめた。今の僕の体温なら、櫻には温かくて丁度良いだろう。
櫻の事を羨ましいと思った事は数知れないし、これから先も思うかもしれない。
でもそれ以上に櫻の事が大切だし、守りたいのだと今回の事で再確認した。
僕は強くならなくてはならない。
覚えていない程に幼かったあの日も、今日も、櫻は僕を守るために無茶をする。
もちろん僕だけじゃなく母上だろうが叔父上だろうが無茶はするんだろうけど、どうも櫻は僕の事を自分より年下のように思っている節がある。最近ではそういった雰囲気は減ってきたけれど、数年前までは特に顕著だった。母上は女の子はそういうものよと言っていたが、僕が年上で兄なんだから僕が櫻を守るんだ。
櫻が二度と無茶をする事がないように。
「僕は絶対に強くなってみせるから、だからもう無茶はしないで。
それに、もう泣かないで、笑顔でいて。僕も頑張るから……」
それはこの先も絶対に揺らがない誓いであり、切実な願いだった。
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