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1章
0歳 -水の陽月3-
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<本当に変わっていますね>
水玉さんがそんな事を言いながらふよふよと私の目の前を浮かんで通り過ぎます。
(赤ん坊に話しかける方が変わっていると思いますよ?)
ちょっと現実逃避をしつつ、思わず火の玉・水玉の双方に同じ心話を送ります。
いや、だって……赤ん坊に話しかけて、返事がある方が怖いと思うんですよ。
<いや、ちょっと待て。俺様達は別にお前自身に話しかけたんじゃなくて、
お前を介してお前を守護しているはずの精霊に話しかけただけだぞ?
ところが返事はねーし、気配もねーし、そもそも霊力が見当たらねーし……。
隠蔽してる可能性もあったっちゃーあったが、そんな事して何の得があるのか
解らねーし>
(そうだったんですかぁ……あふ……)
火の玉さんも水玉さんも怖いものじゃなかったと解った途端、急に眠気が襲ってきました。よく考えなくても赤ん坊の私が長時間起きているなんて無理なんですよ。たくさん睡眠とって、その合間に食べて泣く事がお仕事みたいなものなんだから。
(ごめ、ちょっと眠くてこれ以上……無理かも)
そう言ったそばから瞼が重くなってふぅーっと意識が遠のきます。正直、もう色々といっぱいいっぱいなんですよ。眠気的にもそうなんだけど、転生とか精霊とか守護とか……、もう私の様々な許容量がいっぱいいっぱいなんです。
眠って起きたらバスの中っていう夢オチを期待して眠ってしまいたいんです。
<ちょっとお待ちなさい! 守護無しでは危ないですよ!>
<こらまてオバカ!! 守護無しじゃあぶねーだろうが!!>
火の玉と水の玉がほぼ同時に、ほぼ同じ内容の事をわめきだしましたが本当にもう無理です。眠気に勝てません。
<仕方がありませんね、とりあえず私が守護を……>
<いや、ここは俺様が守護しておく。最初に声をかけたのは俺だぞ?>
<いえいえ、私が……>
<まてまて、俺様が……>
<では、間をとって我が守護しよう>
<ん?>
<は?>
(え????)
初めて聞く第三の声に再び意識が覚醒しました。何事かと目を無理やり開けて、視界をぐるりと巡らせると第三の球体が……。今度は金ぴかの玉です。金色の玉です。
……文字で表記したくないなと思いました、まる
(いやいやいやいや、今度は何ですかぁぁぁぁ)
現実逃避して眠ろうとしたら、さらなる非現実がやってきましたよ!!
その形状から察するに土とか鉱石とかの精霊ってところでしょうか?
焚き火の灯りを反射しながら私のおでこにコトンと乗っかります。驚いたことに感触がありました。
<だから我が守護しよう……と言っている。
そこの男も我と同じ地の精霊が守護のようだし、都合が良かろう>
そう言って金の玉がきらりと光って、不確定名「父親」を映し出します。どうやら精霊の守護は両親によっておおよそ決まるようです。だとしたら確かに父親と同じ属性の守護の方が波風はたたないですよね。
では……と言いかけたところで待ったが掛かりました。
<こんなオモシロイやつの守護、譲れねぇって言ってるんだよ!>
<こんなに興味深い観察対象をお譲りするわけにはいきません!>
(……へぇ……面白いに興味深い観察対象……かぁ。そう思われていたんだぁ)
思わず冷めたい視線をちらりと火と水の玉へと向けてしまいます。ただ、まぁ今は何より眠いんです。頑張って意識を保とうとはしているのだけれど、どうしたって生理現象である眠気には勝てません。
(もう、なんでも良いですよ。とにかく寝たいので……。
喧嘩するぐらいならいっそ全員でも良い……んじゃない……かな……。
今夜一晩はそれで……詳しくはあし……………。)
途切れ途切れの意識で「続きは明日」と何とかそれだけ伝えると、今度こそ本当に眠りに落ちました。三精霊の
<ちょ、バカヤロウーーーーーーー!!!!!>
<このおばかーーーーーーーー!!!>
<馬鹿者がぁぁぁぁ!!!>
という絶叫を子守歌に。
「すげぇ、俺様まだ生きてるぜ?」
「……私も……消滅したかと思いました……」
「我もさすがにあれは想定外であった」
先ほどまで心話として脳内で聞いていた声が、今は耳で聞いているような感覚……。
アレっと思って声のする方を振り返ると、三つの玉がふよふよと浮いていました。
「アレ? 自由に動ける??」
動ける!! 喋れる!!!
そんな当たり前のことが、とんでもなく嬉しいです!!!
思わずガッツポーズをとる私の視界にはとても見慣れた手足……ってなんで素っ裸なの?!
「いやぁぁぁーーーーーーー!!!!!」
思わず自分を抱きしめるようにして座り込んで何か着るもの!と辺りを見ますが、
何にもないんですよ、ここ……。ただの真っ白い空間です。
「やかましい女だなぁ。ここはお前の精神世界だから服が必要なら自分で出せ」
火の玉から呆れ果てた声が聞こえてきますが、無茶言わないでください。
精神世界って何ですか!
でも裸は本当に嫌なのでとりあえず思いついた服……高校の制服……を思い浮かべると、さっと私の体の上にそのイメージが重なって服を着た状態になりました。
……便利ですね。
「ふぅ、やっと人心地つきました……」
これで落ち着いて話ができます。と思ったら三つの玉から何とも言い難い気配がします。こう呆れ果てたような……なんというか……居心地が悪いです。
「それはこちらの台詞ですよ」
溜息混じりで水玉さんが近づいてきます。
「何がです? 正直なところ未だに状況が理解しきれていないというか……。
私は今、どういう状況なのでしょう? と言いますか精霊……って??」
心からの、本当に率直な言葉だったのですが、
三精霊は盛大に、それはもう特大の溜息でもって返事をしたのでした。
水玉さんがそんな事を言いながらふよふよと私の目の前を浮かんで通り過ぎます。
(赤ん坊に話しかける方が変わっていると思いますよ?)
ちょっと現実逃避をしつつ、思わず火の玉・水玉の双方に同じ心話を送ります。
いや、だって……赤ん坊に話しかけて、返事がある方が怖いと思うんですよ。
<いや、ちょっと待て。俺様達は別にお前自身に話しかけたんじゃなくて、
お前を介してお前を守護しているはずの精霊に話しかけただけだぞ?
ところが返事はねーし、気配もねーし、そもそも霊力が見当たらねーし……。
隠蔽してる可能性もあったっちゃーあったが、そんな事して何の得があるのか
解らねーし>
(そうだったんですかぁ……あふ……)
火の玉さんも水玉さんも怖いものじゃなかったと解った途端、急に眠気が襲ってきました。よく考えなくても赤ん坊の私が長時間起きているなんて無理なんですよ。たくさん睡眠とって、その合間に食べて泣く事がお仕事みたいなものなんだから。
(ごめ、ちょっと眠くてこれ以上……無理かも)
そう言ったそばから瞼が重くなってふぅーっと意識が遠のきます。正直、もう色々といっぱいいっぱいなんですよ。眠気的にもそうなんだけど、転生とか精霊とか守護とか……、もう私の様々な許容量がいっぱいいっぱいなんです。
眠って起きたらバスの中っていう夢オチを期待して眠ってしまいたいんです。
<ちょっとお待ちなさい! 守護無しでは危ないですよ!>
<こらまてオバカ!! 守護無しじゃあぶねーだろうが!!>
火の玉と水の玉がほぼ同時に、ほぼ同じ内容の事をわめきだしましたが本当にもう無理です。眠気に勝てません。
<仕方がありませんね、とりあえず私が守護を……>
<いや、ここは俺様が守護しておく。最初に声をかけたのは俺だぞ?>
<いえいえ、私が……>
<まてまて、俺様が……>
<では、間をとって我が守護しよう>
<ん?>
<は?>
(え????)
初めて聞く第三の声に再び意識が覚醒しました。何事かと目を無理やり開けて、視界をぐるりと巡らせると第三の球体が……。今度は金ぴかの玉です。金色の玉です。
……文字で表記したくないなと思いました、まる
(いやいやいやいや、今度は何ですかぁぁぁぁ)
現実逃避して眠ろうとしたら、さらなる非現実がやってきましたよ!!
その形状から察するに土とか鉱石とかの精霊ってところでしょうか?
焚き火の灯りを反射しながら私のおでこにコトンと乗っかります。驚いたことに感触がありました。
<だから我が守護しよう……と言っている。
そこの男も我と同じ地の精霊が守護のようだし、都合が良かろう>
そう言って金の玉がきらりと光って、不確定名「父親」を映し出します。どうやら精霊の守護は両親によっておおよそ決まるようです。だとしたら確かに父親と同じ属性の守護の方が波風はたたないですよね。
では……と言いかけたところで待ったが掛かりました。
<こんなオモシロイやつの守護、譲れねぇって言ってるんだよ!>
<こんなに興味深い観察対象をお譲りするわけにはいきません!>
(……へぇ……面白いに興味深い観察対象……かぁ。そう思われていたんだぁ)
思わず冷めたい視線をちらりと火と水の玉へと向けてしまいます。ただ、まぁ今は何より眠いんです。頑張って意識を保とうとはしているのだけれど、どうしたって生理現象である眠気には勝てません。
(もう、なんでも良いですよ。とにかく寝たいので……。
喧嘩するぐらいならいっそ全員でも良い……んじゃない……かな……。
今夜一晩はそれで……詳しくはあし……………。)
途切れ途切れの意識で「続きは明日」と何とかそれだけ伝えると、今度こそ本当に眠りに落ちました。三精霊の
<ちょ、バカヤロウーーーーーーー!!!!!>
<このおばかーーーーーーーー!!!>
<馬鹿者がぁぁぁぁ!!!>
という絶叫を子守歌に。
「すげぇ、俺様まだ生きてるぜ?」
「……私も……消滅したかと思いました……」
「我もさすがにあれは想定外であった」
先ほどまで心話として脳内で聞いていた声が、今は耳で聞いているような感覚……。
アレっと思って声のする方を振り返ると、三つの玉がふよふよと浮いていました。
「アレ? 自由に動ける??」
動ける!! 喋れる!!!
そんな当たり前のことが、とんでもなく嬉しいです!!!
思わずガッツポーズをとる私の視界にはとても見慣れた手足……ってなんで素っ裸なの?!
「いやぁぁぁーーーーーーー!!!!!」
思わず自分を抱きしめるようにして座り込んで何か着るもの!と辺りを見ますが、
何にもないんですよ、ここ……。ただの真っ白い空間です。
「やかましい女だなぁ。ここはお前の精神世界だから服が必要なら自分で出せ」
火の玉から呆れ果てた声が聞こえてきますが、無茶言わないでください。
精神世界って何ですか!
でも裸は本当に嫌なのでとりあえず思いついた服……高校の制服……を思い浮かべると、さっと私の体の上にそのイメージが重なって服を着た状態になりました。
……便利ですね。
「ふぅ、やっと人心地つきました……」
これで落ち着いて話ができます。と思ったら三つの玉から何とも言い難い気配がします。こう呆れ果てたような……なんというか……居心地が悪いです。
「それはこちらの台詞ですよ」
溜息混じりで水玉さんが近づいてきます。
「何がです? 正直なところ未だに状況が理解しきれていないというか……。
私は今、どういう状況なのでしょう? と言いますか精霊……って??」
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