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28.ナンダぁ?この仕組み
しおりを挟むその穴ぐらの記録は古く、人々の暮らしが、この地に根付いた頃から共にあったと言われる。
本来人に恵みをもたらすダンジョン。
そんなダンジョンの中で、その穴ぐらは、大した恵みももたらさず、ただただ人の血をすすり続けた。
何の益ももたらさないダンジョンの近くに、とある国の王都が出来たのは、奇跡に近い事だっただろう。
一番新しい記録では、王都にある罪人の処刑場。
その名は帰らずのダンジョン。
皮肉を込めて救済の試練とも呼ばれていた何も生み出さないソレは、大規模な気候変動によって、人々の営みが都市から離れると、いつしか記録と共に記憶からも失われる事になった。
悪名を失った事は、そのダンジョンにとって良かった事なのか、それとも不幸な事だったのか。
今では、時折入って来る冒険者と野生動物から得られるマナで、そのダンジョンは何とかギリギリの命脈を保っている。
◆
俺は不安な気持ちでダンジョンの出入口へ近づいて行く。
出入口近くの通路に差し掛かると、ある地点を過ぎた所から急に空気が変わった。
外から流れ込んで来る空気は、ダンジョンのそれよりも温かく、微かな草、可愛た土のはだけた匂いがしてくる。
外は晴れているようだ。
ダンジョン内では、嗅いだ事のない匂いだった。
俺は通路内を一度見渡し、空気の変わった地点を調べる。
すると、急に空間が切り替わったように外の空気を遮断するダンジョンと外界の境界を見つけた。
内側と外側で温度も違う。
「…モモ?」
どういう仕組みだ?
まるで、空間そのものが違うような。
暫く考えてみるが、正直にいって、某コンビニの冷凍食品棚の外気を防ぐ空気の壁しか思い付かない。
俺はしゃがんで、通路に空気を押し出す小さな穴が無いかよく確認してみる。
当然というか、そんな穴は無かった。
空気の動いている気配もない。
…つまりは、空気の混ざらない不思議空間。流石はダンジョンだ。原理の全く解らない事が多いのだ。
俺は、そう納得すると立ち上がる。
そうして、俺は考えることの全てを放棄して、外から日の差し込む暑い空気の漂うダンジョンの外へと一歩を踏み出した。
◆
「見て見てラッツ! ほら合体魔法!」
昼の仕事場で、昨日助けたノーム達が、大樹の根っ子にくっついている真珠のような大きな白い玉にむかって、魔法を放とうとしている。
ノーム達が土魔法の生成場所を一か所に集めると、土魔法が合わさりほんのりと大きくなっている。
ほんのりと大きくなった土魔法を白い玉に当てるのだ。
フマはそれを見て合体魔法と言って騒いでいるけれど、どう見ても大した物ではない。
ノーム達はなんだか誇らしげにしているけれど。
「フマ、ボクには重ねた分以上に威力が上がってるようには見えないけれど、それってどう凄いんだい?」
「何言ってるのラッツ。合わさるだけで凄いでしょう?」
「そうかなぁ?」
ボクはノーム達の合体土魔法に、水魔法が混ざるか試してみる。
水魔法は土魔法と合わさって合体土魔法は少し大きくなった。
「混ざるね」
「ね、混ざるわよ」
フマも火魔法をノーム達の土魔法にぶつける。
火魔法は水魔法の加わった土魔法に溶けていった。
「大きさは少し増えて色が変わった…? 不思議だね」
「ね、凄いでしょ?」
「何だか凄いかもしれないねぇ」
労働ついでの、暇つぶしで始めた事だけれど、これは、ちょっとした発見かもしれない。
フマはドヤ顔だ。
そんな事を話していると、ノーム達が無言で一斉にボク達の後ろを指さした。
「へぇ…? 精霊ってそんな事も出来るのねぇ」
ワイワイ騒いでいるボク達の背中から聞こえてきたのは、管理役の魔女の声だった。
とたんに身体が強張って、ヒュッっと隣にいるフマの喉から空気を吸い込む音が聞こえた。
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