一般ノームに生まれ変わった俺はダンジョンの案内人から成り上がる

山本いとう

文字の大きさ
16 / 32

16.精霊王の名付け

しおりを挟む

銭湯からあがると、俺はフマをラッツの仕事場に連れていき、下層のダンジョンの横穴がある所まで降りてきた。
フマには、いざ何かあったら、仕事を放り投げラッツと一緒に逃げるように伝えてある。
ジェスチャーだけなので、本当に通じているかどうかはわからないが。
満月は過ぎ去り、目覚める精霊が徐々に少なくなってきているので、魔女が少なくなってきた精霊に何をするか不安だ。
俺の知る限り、魔女たちはあくまで契約を基に精霊から搾取している。
だからまともな契約の結ばれた後なら、魔女が精霊に何かをしてくるかもしれないというのは、俺の心配のし過ぎなのかもしれない。
それでも保険は必要である、と俺は思う。
諸々含めて考えると、本来フマには俺がついているべきなのだが、俺には他にやるべき事がある。
後は優先度の問題だった。
よく聞く、仕事と私どっちが大事なのよ問題である。
その答えはわからないが、フマとラッツは働かないと精神が病んでしまうので、当面は俺と行動が別になるのは仕方ないと思う事にしよう。

俺が目指すは二足歩行のシベリアンハスキーのリッキーのダンジョンだ。
リッキーのダンジョンの収益を俺の力で改善させ、精霊の働ける場所を増やすのだ。
少なくとも知り合ったフマとラッツの安全を確保するため、二人をいつでも雇えるようにしたい。

俺は壊れかけの木製の扉をノックした。
ノックするだけでギギギと動く扉。
それだけで、ここが貧乏なダンジョンなのだと察せる。

「はいはいだワン」

「モ!」

「昨日の精霊だワン。名前は…大食らいだワン?」

俺の名前は土屋陸、けっして大食らいではないが、喋れないので通り名と呼ばれるのは仕方ない。

「モ!」

「何もない所だけれど、入るんだワン。今日は何しに来たんだワン?」

リッキーはすんなり中に通してくれたので、俺は走り出し、ダンジョンコアの隠してある木箱を横にガバッと倒して、土生成の魔法を注ぎ込む。

「いきなりダンジョンコアに何するんだワン!」

激しく点滅するダンジョンコアを俺から庇い、抱えて涙目になるリッキー。

「モモ」

俺は魔力が欲しかったんだろう?と力強く頷いた。

「…魔力を入れてくれたワンね。だ、大事な物だから、きちんと許可を取って欲しいワン」 

甘いなリッキー。
大事な物は決して地べたに置かない。
そのダンジョンコアは、未だに地べたの上に木箱で覆っているだけの物なのだ。
よって、ダンジョンコアは大事な物じゃない。
証明完了。
現代日本の常識だ。

「大食らいは、そんなにうちの茶が気に入ったのかワン?」

「モモ!」

リッキーが嬉しそうに聞いて来たが、俺はわかりやすいように首を振る。

「うちの特製茶をそんなに否定しなくても…。悲しいワン」

俺は落ち込むリッキーに、スキル精霊の身体で変化させた不自然な力こぶを見せる。
そして、ニカッと自信あり気に笑顔を見せる。

「また不思議なポージングをやってるワン…。今日はちょっと忙しいから、また後で話すワン。大食らい魔力ありがとうだワン」

リッキーがダンジョンの奥の方へと向かうので、俺もスキル精霊の身体で足音を消し、こそこそとリッキーについていく。
リッキーのダンジョン作りに役立てば、 恐らく雇って欲しいという俺の想いはわかるだろう。
しかし、喋れないし文字も書けないってのは、本当に不便だ。
一度不便になって、始めて人は今まで出来ていた事のありがたさを知るのだ。


     ◆


「あいつどこに行っちゃったのかしら。行った先で迷惑かけなきゃ良いけど」

「大食らいって無茶をするような性格なの? 無茶苦茶なマナの荒稼ぎは兎も角として」 

仕事の合間にラッツと会話する。
MPの消費と回復の釣り合いが取れていないので、この仕事は暇なのだ。
そのせいで椅子で休む機会が増え、椅子に取り込まれてしまう精霊が出るのだけれど。
もしかしたらこの仕事が暇なのは、精霊を椅子に取り込みたいからなのかもしれない。
そんな中、私がどこかに行った大食らいの話を水精霊のラッツに振ると、大食らいの性格を聞かれた。
私から見れば、大食らいは慎重な性格だと思う。
無茶をするどころか、私を止めてくれる側だ。
あのサボり癖や私にはわからないし、変な性格だけれど親切なのよね。
最後に何を言いたいのかわからないまま、どこかに行ったゃったけど。

「言われてみれば…抜けてるところもあるけれど、意外にあいつしっかりしてるのよね。案外そのうち、もっと儲かる仕事を見つけてきそう」

「そうなんだ。どうも仕事は真面目じゃないみたいだけれど」

「まぁ、…おかしな精霊よね」

「どこに行ったんだと思う? せめて、話せれば色々とわかるんだれどなぁ」

「それよ。アイツどこに言葉を置き忘れてきたんだか…」

「このままだと、ちゃんとした名前さえわからないしね」

私たち精霊は、精霊王様から名付けを受ける時に、契約として様々な知識や言葉を教えられる。
そして、同時に労働の義務を負うのだ。
本来は時間をかけ中位精霊に育って、特に功績を挙げた精霊にしか行われない、精霊王様による名付け。
その精霊王様による名付けは、緊急時の今だけ全ての精霊に行われている。
そう言えば、あいつ、ちゃんと精霊王様に名付けはされてるのかしら?
本当の名前まで大食らいな訳ないわよね?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...