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13.もっこ

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「結局、全部空振りだったわね」

「モモ…」

ダン活に失敗した俺たちは、中層に繋がる坂道を歩いていた。
まともに資源を稼げるダンジョンはどこも人気で、働き手には困っていないと断られたのだ。
それでもダンジョンで働くとなるとリッキーの所みたいに、人気のない、給料の貰えないダンジョンになってしまう。
俺はダンジョンを見てみたいのでそれでも良いが、ウルを稼がなきゃならないフマはなぁ。

「昼間のお仕事、どうしよう」

「モ」

そうこう言ってるうちに、人手でで賑わう中層へとたどり着いた俺たちは、一件の雑貨屋に入った。

「いらっしゃい」

しわがれた声の小鬼のお婆さんが、精霊が店に来るのは珍しいのか俺たちの様子を伺う。
雑貨屋は大きくないので、店主かもしれない。
ぺこりと頭を下げるフマ。
窓ガラスのない窓から差し込む、頼りない日の光しか光源のない薄暗い店内には、鞄や袋、鉢植えなどが棚に置いてあり、一見して現代日本の俺では、使い方のわからない物も溢れている。
それはフマも同じようで、商品を見ては首を傾げている。
俺はキョロキョロと店内を見渡すと、網で出来た袋を見つけた、網の目は多少細かいがアナグマ族の使っていたもっこだ。

俺はもっこに指を指して小鬼の店員を見る。

「…もっこだね。ひとつ4ウルと5ピリウルだ」

「モ…」

4ウルはMP換算で800MPである。
5ピリウルは100MP。
俺の最大MPは146…。
ちょっと減っているので今のMPは142。
もっこって凄く高ぇんだな…。
こんな原始時代的な見た目なのに。

ホムさんや、MPの増えるスキルは他にはないのかな?
…デメリットのあるスキルは抜いて。

──MP増やすのもうない! スキル育てるしかない!

えぇ…。スキルってどう育つんだっけ?
つーか、スキル取らないなら、もうマナの使い道ないじゃん。

──スキルを育てたいなら、たくさんつかう!
        マナはたくさんあると、こころのよゆう!

あっ、そうだったね。
詰んだわこれ。

「買わないのかい…?」

「私たちには買えないわよ、大食らい」

店員が怪訝な顔で俺を見る。
お金の計算ができないのねと、フマが俺に優しく諭してくる。

ちょっと待って! 今考えるから!

手持ちに残っている物と言えばマナである。
43,556、それが俺が保有するマナの量だ。
ノームになって以降、マナは使ったら増やす方法はないとホムが言っていたが、マナに使い道は多くないように感じる。
そしてマナはウルより高く取引される。
だからこそ、マナを荒稼ぎ出来る俺はBARでお大尽になれたのだ。
1マナは3ウルだから、マナ払いならもっこなんて簡単に買えるが…。

「鉱石運びにアナグマ族の使っていたそれを使いたいのはわかるけれど、今日は諦めて外に行くわよ大食らい。また来ましょ」

「次はちゃんとウルを貯めて来るんだよ、精霊」

俺は決断した。
もっこを2つ分手にとり、キリッとした顔で体内のマナを玉にして外に出す。

「モ!」

3マナだ。
マナの玉を店員の小鬼のお婆さんに渡す。

「…こいつぁ、混じり気のない魔力だね。ひょっとしてマナかい? 」

「モ!」

ああ、そいつはマナだ。
驚いたろう? 釣りはいらねぇよとっときな。
俺は得意気に頷いた。

「はい3マナ。ちょうどだね、毎度あり」

…代金はちょうどでお釣りは無かった。


       ◆


「なに? くれるの?」

俺はもっこを一つフマに渡す。

「プレゼントってこと? 色気がないわねぇ。でも良いわ。貰ってあげる」

俺がこの世界で自由に動くため、フマを独り立ちさせるには、まず安全な所で働いて貰わないとならない。
鉱石運びは稼ぎは悪いが、そこに働くアナグマ族は良い奴らだった。
鉱石運びの仕事なら、何故か待遇の悪い精霊も安全に働く事ができるだろう。
文句を言いつつも、もっこを貰ったフマは嬉しそうだ。

「これで鉱石運びの稼ぎも良くなるわ、きっと」

「モ」

「ダンジョンは失敗だったわね。昼間の仕事で次のあてはある?」

本来ならダンジョンで魔物を狩るような、冒険者と言われる職業がこの世界にあれば、やってみたかったんだけれどなぁ。
危険だからと裏方でしかダンジョンに入れて貰えないのだ。
というか、そもそも雇って貰えないから裏方としても入れない。
俺は手札を見てみる。

土谷陸
種族 ノーム
lv 1
HP 124/124 (+100)
MP 144/146     (+120)
状態 健康

スキル

言語理解Lv-
格闘Lv1
土魔法Lv2
金属魔法Lv1  NEW!
付与魔法Lv1  NEW!
契約Lv1
精霊の身体Lv5
精霊の心Lv1
完璧な獣Lv1  NEW!
取得可能スキル▼

加護 精霊王の寵愛
称号 大食らい 転生者

保有マナ 41,753
保有ウル 0


金属魔法と付与魔法が活かせれば、俺はどこかで働けそうだが、フマは何のスキルを持っているんだろう?

「モモ?」

「なに?」

うん、話せないからフマのスキルを聞けない。
仮にマナが余ってないとスキルを覚えられないとしたら、フマは火魔法しかスキルを持ってないのかもしれない。
…火魔法の需要のある所かぁ。

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