上 下
11 / 32

11.ダンジョンコア

しおりを挟む

レーベン側の畔の大樹という世界の下層には、下界と呼ばれる世界に繋がる不思議な大穴がいくつかある。
その大穴が下界でダンジョンと呼ばれる物の正体だ。

ダンジョンからは、老廃物として様々な鉱石が下層へと吐き出されるのだ。

「ちょっと大食らい、ダンジョンに入るの? ダンジョンは下界の住人が挑戦する物よ」

「モ?」

フマに言われて俺は自分の手を見る。
戦えないだろうか?
おもちゃのアトラクションでは無双してたんだが…。
確かに俺達の体格は、魔女たちの二分の一もない。
使える魔法も土生成くらいだ。
何だかよっぽどの雑魚モンスターじゃないと戦えない気がしてきたな。

まぁ俺が入りたいのは、レーベン側の畔の大樹から入れるダンジョンのバックヤードか、精々がモンスターの弱い一階層である。
何とかなるだろうとフマの背を押して、鉱石を吐き出す大穴の一つへと歩みを進めた。

大穴に入ると、横穴に木製の上等な扉があって屈強そうな石のゴーレムの門番が守っている。
この扉の先がダンジョンのバックヤードだ

「モ!」

俺が大きな声で石のゴーレムに挨拶すると、石のゴーレムはゴゴゴと動き出した。

「…小サナ精霊…? 珍シイ。ムンゴウ大迷宮ノ主ニ何カ用カ?」

「モ!」

主とはダンジョンマスターの事だろう。
俺は大きく頷く。
今日はダンジョンマスターに労働条件を聞きに来たのだから。

「先触カ?」

先触れ…? アポの事か?
俺にはそんなコネはないので、当然のように首を振った。

「……」

石のゴーレムは黙ってしまった。

「どうするのよ大食らい…」

フマが不安そうにしている。
早く返事してくれないかな、ダメならダンジョンに行くんだけれど。
暫く待つと、石のゴーレムは話し出した。

「…小サナ精霊ヨ。主ハチカラニハナレナイ。精霊ノ問題ハ精霊デ解決シテクレ」

「?」

何だかわからないが断られたようだ。
門番を無視して中には入れない。
仕方ないかと、俺はダンジョンの老廃物を出す奥の大穴の方へと向かう。
すると、慌てた石のゴーレムに掴まれた。

「コノ先ハ危ナイ。奥ヲミタイナラ、ムンゴウ大迷宮デハナク鉱石ノ少ナイ穴ニ行ケ」

「大食らい。止められちゃったじゃない」

「モモ…」

どうやらムンゴウ大迷宮は俺達には危ないらしい。
ひょっとしてダンジョンにも格差があって、ここは高級で危ないダンジョンなのかもしれないな。
鉱石の排出が格差の目安なのか…。
この大穴は鉱石を大量に出して目立ってたからな。
だからこの大穴に入ったのだ。
俺は石のゴーレムのアドバイスに従って、鉱石の排出が一番少ない大穴に入る事にした。
安全第一だ。

「モ!」

俺は石のゴーレムに挨拶して、元来た道を戻る。
フマはペコリと石のゴーレムにお辞儀をした。

「頑張レ、小サナ精霊ヨ」

この世界の石のゴーレムは意外とおしゃべりなのかもしれない。





さて、俺達が次に選んだのは、見る限りで鉱石を一切出してない大穴だった。
大穴に入り、横穴を見れば扉は壊れかけで、門番もいない。

「ごめんください」

フマが恐る恐る言いながら、横穴へと入るが、隙間だらけの木箱を椅子にした物や家具が数点と、薄暗いランプが点いているだけで、誰も見当たらない。
まぁ、ランプが点いているのだから誰かが住んでいて、少し外に出てるだけであろう。

俺は横穴の中へとずかずか入り、隙間だらけの木箱に座る。
フマも恐る恐るついてきた。
フマにお前も座れと木箱を指差すと、木箱の隙間から黒い光の点滅が見えた。

「モ?」

俺は何だろうと思い、木箱を持ち上げる。
木箱の裏には、一抱え出来るか出来ないかくらいの、真っ黒な宝石みたいな形をした物が転がっていた。
ペタペタとその黒い物を触ってみる。硬いが、衝撃を吸収してるみたいに変な感触だ。

──これ、だんじょんこあ!

へぇ、ダンジョンコアっていうんだこれ。

「何か変な感じに光ってるんだけど、大丈夫なのそれ?」

「モ?」

何か激しく点滅し始めたけれど、大丈夫じゃないかなぁ?
何も起こらないし。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

処理中です...