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ソドムの健気な人形たち(1)

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 西暦二×××年。自らの変態性欲に苦しんでいる人々を救うために、変態愛護団体はある高級ダッチワイフ「ソドムドール」を何度も試行錯誤を重ねた結果、ついに完成させた。
 自慰や一般的な性風俗店ではもう癒されない性衝動を秘めた人々が、我慢の限界を迎えていつか罪を犯してしまう前に、このソドムドールがおおいに官能を慰めてくれる。去勢手術より、健康的な性犯罪抑止である。
 ここにドールたち一部の紹介を、客たちの豊かな想像力がなした遊びの実例をまじえつつ記す。


・少女のソドム。


 タイプ一「フランソア」は、十八歳くらいの外見で作られた少女である。冷ややかな印象の切れ長の眼と、すっと通った美しい鼻梁と、薄い唇。つややかな黒髪はボブに切り揃えられていた。
 鼠を連想させるような顔をした客の男が、届いたばかりの一糸纏わぬフランソアを棺桶形の箱から出して、さっそくベッドへ寝かせた。骨のような指を浅く上下している胸に這わせる。人間とまったく変わらない柔らかな感触に男は歓喜した。
「一生懸命、働いた甲斐があった……」
 畳臭く、狭い部屋だ。男はよれよれのスーツを脱いで、フランソアを恋人のように抱きはじめた。
 白い肌を舌で汚されるたび、フランソアは身を小さく震わせる。陰核を執拗にくすぐられると女陰は湿った。
 フランソアは心地好さそうに鳴いている。しかしソドムドールに、はっきりとした感覚はない。触れられたら箇所によって、そう反応するようにプログラムされているだけだ。溢れ出す蜜は膣液に似せた、ただのローション。
 視覚を充分に満足させた男は膣に指を捩じ込み、ほぐしてから勃起した細長い男根を挿入した。華奢な脚を抱えて、男は夢中で貪る。
 腰を打ちつけられるたび、フランソアは快楽とも苦しみともつかない声を上げた。ソドムドールの内部は普通の人間より具合がいい。男は早い放出の直前、フランソアが後頭部を載せている枕の下に手を突っ込んだ。
 取り出したのは大振りのナイフ。揺れる形よい乳房を、男は深々と刺した。
 フランソアが甲高い悲鳴を上げると同時に、男は精を注ぐ。刃の切っ先は乳首を貫いていた。ナイフが立つ乳房を掴み、揉みながら男は再び腰を振る。
 乳房の中身をえぐられるたび、フランソアは発狂した。前述と同様にソドムドールに痛覚はない。傷を受けたらそう反応するように、プログラムされているだけだ。
 男はフランソアの中で元気を取り戻す。快楽に叫び声を上げながら、二度目の放出をしつつナイフを乳房の鞘から引き抜いた。男は獣のように息を荒げながら、興奮に任せてフランソアの全身をナイフで突く。
 悲鳴は次第にか細くなり、フランソアは停止した。
 男根を抜いて、現実感のある開いた傷口を男は舐める。血液に似せた鉄臭い液体を啜り、満足そうに笑んだ。しばらく余韻にひたってから、男はフランソアを棺桶形の箱にしまう。
 修理は三回まで無料だった。

 タイプ二「レイチェル」は、フランソアと同じ年頃の外見で作られた少女である。くりくりとした愛らしい眼と、小作りな鼻と、ぷっくりと膨らんだ唇。栗色の柔らかな髪は長いみつあみにしていた。
 洋風の居間で、客の男はよく肥えた体をソファーに沈めている。その前でレイチェルは絨毯に正座していた。レイチェルの眼の前には、ゆで卵が何十個も盛られた銀のボウルが置かれている。そして、レイチェルも男も裸だった。
「さあ、噛むんだ」
 レイチェルは頷くと、ゆで卵を一つ口に運ぶ。
「違う。もっと口を開けて……音を立てて」
 男に言われた通りレイチェルは口を大きく開けて、くちゃくちゃ下品な音を立てながらゆで卵を咀嚼した。
「口の中のものをよく見せるんだ……」
 レイチェルの真珠のような歯は唾液に似せた液体の糸を引きながら、男にとっての宝箱を開ける。白身の屑と溶けた黄身が口内の粘膜にはりついていた。
「口を開けたまま、大人しくしていろ」
 男の声はうわずっていた。官能を刺激されて硬くなった男根を握り、擦る。少しすると立ち上がり、男はレイチェルの口に男根の先端を向けて放出した。
 卵に精が飛ぶ。
「ああ、口の中で子作りだ! 飲み込むな、混ぜるんだ」
 レイチェルは再び咀嚼しはじめる。精水が零れるから、今度は口を閉じろと男は命令した。頬を膨らませて、レイチェルは静かに子供を作る。男はもう一度、自分を扱いた。
 やがて、男はレイチェルを呼び寄せる。
「さ、俺にそのかわいい子をくれ……まず口と、それから息子にだ」
 頷くと、レイチェルは男の肩に手を置き、大きく開いた口に位置をあわせて少し口を開く。液状の子供がどろりと男の口内へ流し込まれた。
 味わいながら男は扱きつづける。レイチェルは屈んで、天を向く男根に残りの子供をかけた。途端、男は放出した。
 それから、ゆで卵がなくなるまで行為は繰り返された。

 タイプ三「ジェシカ」は十五歳くらいの外見で作られた少女である。少年のような中性的な顔立ちに、明るい茶色のショートカットがわんぱくそうな雰囲気。
 天蓋のついた広いベッドに、壁には美しい貴婦人が描かれたロココ調の絵画がかけてある寝室。優雅な趣味を持つ老紳士の客はジェシカと共に、ベッドに腰かけていた。
「なんとまあ、綺麗な男の子だ」
 ジェシカは男装させられていた。ワイシャツの襟にはシャボタイを巻いて、サスペンダーのついた半ズボンと紺色のハイソックスを穿き、まるで良家のご子息のような出で立ちである。老紳士はうっとりとジェシカの白く輝く太腿を撫でた。
 突然、ジェシカが老紳士を押し倒す。驚いて固まる老紳士をよそに、ジェシカはサスペンダーを肩から外すとズボンを脱いだ。
 ジェシカは股間に、黒光りしている巨大な男根を装備していた。
「おおっ……このいたずら小僧め、これ!」
 老紳士は形だけの抵抗をする。あっという間に下着ごとスラックスを脱がされて、老紳士は下半身を裸にされてしまった。
 緩い尻穴を擬似の男根が犯す。老紳士は苦悶しながらも、口元はかすかに笑んでいる。
 老紳士は受動を楽しんでいた。ジェシカの行動は、事前に命令されたものだった。
 老紳士に勃起と放出する力はない。精神を充分に満足させると、老紳士はジェシカを離れさせた。
「まったく、けしからん! お仕置きだ」
 ベッドから一緒に下りる。老紳士はジェシカにベッドの縁に手をついて、尻を突き出すようにと命令した。ジェシカはその通りにする。男根がついたショーツはTバックになっていて、白く丸く、可愛らしい尻の形はあらわだった。
 老紳士が乗馬用の鞭を持ってくる。そして容赦なくジェシカの尻を打った。真っ赤に腫れてくると、老紳士の官能は燃え上がる。
 老紳士の尻には、幾重にも鞭で打たれた歴戦の痕があった。それからショーツは脱がせないまま、尻に食い込んでいる布だけをずらすと老紳士はジェシカの尻穴を弄り、女陰に触れることはなかった。
 ソドムドールは幅広い欲望に応えるべく、もちろん男性型もある。特に需要の高い少年のソドムドールは後述する。
 老紳士は異性装した異性、という嗜好なだけだ。

 ソドムドールのタイプに好みがなければ外見を注文することも可能だった。「メアリー」はオーダーメイドで作られた、十二歳くらいの外見の少女である。ばさばさの黒髪は前髪を真ん中でわけて、腰まであった。小さな眼と顔中に広がっているにきびが何とも醜い。
 しかし客の婦人は美しかった。齢四十代ながらすらりとした美事な肢体と、彫りの深い顔立ちに、染みや皺など見当たらない綺麗な肌。漆黒の髪は緩く巻いて、背中まで伸びている。
 真紅の薔薇の花びらを床と円形のベッドに散らして、雰囲気作りをした寝室にてメアリーはベッドに腰かけていた。ベッドは黒いシーツを被り、同じく黒いヴェールの天蓋がかかっている。メアリーは清純そうな、真っ白なパフスリーブのワンピースを着せられていた。
 やがてレザーのビスチェとレースのショーツ、ガーターベルトで吊ったタイツという姿で婦人が寝室に入ってくる。メアリーの隣に脚を組んで座ると、安物の人形のような髪を愛おしげに撫でた。
「乙女だわ……」
 生粋の同性愛者である婦人の趣味は、壁に並べられた少女の写真で明白だった。どの娘も田舎臭い、不細工な少女である。婦人はメアリーの頬に口づけると、そのままにきびに舌を這わせた。
 メアリーを組み伏せる。婦人は熱に浮かされて、メアリーの頬を両手で包み、顔中を舐めた。唇、鼻、鼻孔、そして眼。
 眼球に舌先が触れると、メアリーは震えた。構わずに婦人は指で瞼を開き、眼球を舐め回す。婦人の唾液が涙のように伝った。
 それからメアリーのワンピースを脱がし、婦人は鎖骨、幼い乳房、乳首、毛が生えたばかりという風の腋に舌をつける。ショーツも脱がし、メアリーの蜜を啜った。脚線を舌でなぞり、爪先を吸う。
 満足すると、婦人は湿ったショーツ越しに何回かメアリーに女陰を擦らせて、あっさり気を遣(や)ってしまった。

 タイプ四「イリナ」は十歳くらいの外見で作られた少女である。赤毛のマッシュルームカットがよく似合う、童話や絵本から飛び出してきたような愛くるしい少女だ。
 しかし今、イリナは顔を醜く歪めて、悲鳴か呻き声を上げている。イリナの腹は尋常ではないほどに膨らんでいた。腹の中に、イリナ自身が入れそうなくらいに。
 それは手術衣を纏った客の男が、変態愛護団体に依頼した改造だった。薬品と医療器具が並んだ室内にて、裸で分娩台に座らせられたイリナの脚の間を男の暗く、どんよりとした眼が見つめている。
 イリナの腹は激しくうごめいていた。しばらくすると骨盤の辺りからごきり、と鈍い音が鳴る。
 イリナの絶叫が響いた。両脚の力が抜けて、腹の膨らみはいっそう暴れだす。
 狭い膣が強引に開かれる。赤黒く、もじゃもじゃとした毛が見えた。ゆっくりとそれは捻り出されていく。
 タイプ五「ローザ」はイリナと同じ年頃の外見で作られた、きらびやかな金髪を有した美しい少女である。しかし今は、イリナの体液でどろどろに汚れて見る影もない。
 頭が丸々一個、飛び出したところで二人は停止した。男はスラックスと下着を脱いで、勃起した男根の先端をローザの顔に向けると扱きはじめた。


・少年のソドム。


 少女の次に人気のある、少年のソドムドールたち。タイプ一「ジル」は十四歳くらいの外見で作られた少年である。毛先のうねった白金色の柔らかい髪は男の子にしては長めで、肌は白く、中性的な顔立ちをしていた。昔の少年愛映画に出てくる美少年のような、耽美な容姿。
 パニエを仕込んだドレスを着て、髪を縦に巻き、縁がレースで飾られた楕円形のヘッドドレスをした客が、猫脚の椅子に座らせたジルの顔に化粧をしている。長い睫毛はさらに長く、唇は薔薇色に。興奮のあまりか化粧道具を持った無骨な手は震えて、はみ出さないようにするのが精一杯の様子だった。
 客は男だ。頬骨の目立つ髑髏のような顔に、顎には隠し切れていない髭の剃り跡があった。顔と釣り合わない髪形は、ただのかつら。化粧を終えると道具をそばのドレッサーに置いて、男はひさしが白いレースで囲われた、黒いベロア地のボンネットを手に取りジルに被せた。
 顎紐のリボンを結ぶ。ジルはボンネットと揃いの光沢が上品な黒いベロアに、白いレースが所々に装飾されたドレスを着せられていた。その美しさといったら触るのが怖い、最高級の西洋人形のよう。
 ほう、と、男はため息を吐く。ジルと比べると男は滑稽の極みだった。
「ちょっと待ってて」
 男は部屋を出ていく。少しして、ミルクを注いだ銀の盆を持って戻ってきた。真っ赤な絨毯にそれを置いて、男は命じる。
「さ、この上に座りなさい」
 ジルは椅子から下りると、パニエごとスカートをまくり、ドロワーズを穿いた尻をミルクへ落とした。ドロワーズにミルクが充分に染み込むと、今度はスカートを持ったまま立てと男は命令する。
 ジルはその通りにした。内腿にミルクが伝い、滴る。男は堪らず、ジルの脚に飛びついた。
「ああ、なんていやらしいお人形だろう!」
 男は夢中でミルクを舐め上げる。ドロワーズの布を含み、吸った。そのまま尻の溝に鼻と口を当てて、くぐもった声で糞をしなさいといった。
 ジルはその通りにする。ドロワーズ越しの茶色い染みを男は味わった。それからドロワーズとショーツを脱がせて、中の糞に似せたものを手で盆のミルクと混ぜた。
 男は盆を持ちジルと一緒に、絨毯と同じ真紅のソファーへ移動する。ジルを仰向けに寝かすと、男はジルの顔にミルクを垂らした。
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