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咎の園 外伝・番外
獣欲
しおりを挟む悲鳴を尻目に、ローションをOバックを穿いた尻に塗っておく。そのままラバーのグローブをした手の指を入れて、軽く後ろをほぐす。あいつの大きさを考えると、本当は念入りにマッサージしたいが、仕方ない。客に不満を感じさせるわけにはいかないのだ。
しばらくして、猟奇的なオブジェが並ぶ休憩スペースに香琉が戻ってくる。高校の制服に返り血が飛散しており、顔は興奮のためか上気していた。俺のほうへフラフラ寄ってくる。
そしていきなり、突き飛ばされた。座っていたソファーから転げ落ちる。
「あっ……!」
「ケツ、貸せ。後ろ向きで、ソファーに上半身のせて……」
強打した膝をさすりつつ、指示された通りの体位になる。背後で、香琉が膝立ちになる気配。チャックをおろす音が聞こえ、前戯もなにもないまま凶器と呼ぶに相応しいものがあてがわれた。
「う、あ、ああ……」
それから無理やり抉じ開けられる苦痛に、呻き声が演技ではなく素で漏れる。すがるようにソファーの赤い革に指を食い込ませた。普通なら相手も挿入のしづらさに嫌気が差してくるだろうが、こいつはこれが楽しいのだ。
ある程度進んだのが感覚でわかった瞬間、めちゃくちゃ突き立てられる。最中、至るところを思いっきり噛まれたり、抓られたり、叩かれたりして、苦痛の声は止め処を見つけられない。
抱かれているというより、捕食されているような気分だ。ようやく打ちつける激しい音がやみ、体内に吐き出されて、たかぶりを慰めおわったのだと安堵する。が、陰茎を抜かれると今度は指を捩じ込まれ、精水が掻き出される感覚。こんな優しいことしてくれるわけがない。嫌な予感がした。
「あっ、それ嫌だっ、あ、あああ!」
仰向けにされると、左目を狙って垂らされる精水。眼球の上を無数の精子が暴れ廻っているんじゃないかと思うような激痛。苦悶する俺を引っ掴み、さらに口元へまだ硬度を保っている陰茎を押しつけてきた。掃除しろ、ということだ。白濁しているであろう涙を流しながら舌を這わせ、含む。
太いもので数回俺の喉を突いて、香琉は離れた。俺が咳き込んでいるうちに、またしっかり俺の顔を掴んで、自分の顔を寄せてくる。片目の視界、香琉は笑っていた。そして涙で十分洗われた目に口づけてきた。
「それも、気持ち悪いから、嫌だ……ああ、ひっ、ん」
まぶたを指で開かれ、敏感すぎる部分を舐めあげられる。この愛撫、意外と痛みはなく、うすら官能さえ得られるが、やはり肌が粟立つようなおぞましさのほうが上廻る。背筋を震わせ、足をばたつかせ、履いているブーツのヒールで床を打つ。香琉の制服の袖を掴み、ただただ喘いで耐えた。
「う、ううっ、あっ、あ……」
ああ、あとでよく左目を洗って、抗菌目薬もささなければ。
「将来、お前の恋人なんかは苦労しそうだな」
そんなものまともに作れそうにないと思いつつ、使用人に運ばせた、レモンを添えたミネラルウォーターを飲みながら冗談半分、香琉に言った。香琉はコークを飲んでいる。行為をおえて、隣り合ってソファーに座っていた。眼前のペーパースクリーンでは、場末のダンサーのような女装をした男が外れた調子で歌っている滑稽な映像が流れている。
本来サドマゾ遊戯は、サドがマゾを十分に思いやってやらなければならない。マゾがどこまで受け入れられるのか、なにをされたら興奮するのかシラけてしまうのか察した上で、サドが器用に責めるものだ。知性と慈愛が必要だ。サドマゾ遊戯でのサドを、加虐性愛者(サディスト)と幼稚な名で呼んでいいのか疑問に思う。
今回はシンプルにおわったが、俺が本気で嫌がってもとんでもない大きさの玩具を捩じ込んできたり、尿道にガラスの棒を挿してきたりする香琉に、たとえマゾの性癖を持っているパートナーでも普通に付き合えるとは思えない。しかも、俺はあくまでおまけである。檻の中の奴隷を血塗れにした興奮を静めるための。
「そういうの、よくわかんね。なんなら俺、別にお前と付き合ってもいいくらい」
「断る。プライベートでお前の相手とか、身が持たない」
ふと、香琉と一緒にいるのを見られると夫人に「二人とも美男子だから絵になるわねえ」とよくからかわれることを思い出しつつ、その恐らく冗談でもなんでもなく素で吐いたのであろう香琉の言葉に苦笑しながら返事する。たぶん香琉はバイセクシュアルなのであろう。しかし、こいつに普通に人を愛せるとは思えない。
ああ、しかし普通ってなんだろうか。
「立ってる」
「あ? ……ああ、抱かれる側は相手が思いやってくれないと、中途半端なままいけないからな。客としたあとはだいたい、哀れに自分で抜いているよ」
香琉が俺の股間の辺りに視線を遣っていた。つづいて
「今、抜いたら?」
「お前にそんな趣味あったっけ?」
という発言を注文と受け取り、香琉に足を向ける形で寝そべると、自分でショーツに手をかける。おろし、グローブをした手で硬い陰茎を握った。扱きながら、脚を開きもう片手で後ろも弄る。最近、後ろのみで達する方法を覚えたが、あの前後不覚に陥るほどの官能によがってしまう姿を、命令もされていないのに香琉へ見せるのはなんとなく嫌だ。
「はあっ……」
目を閉じて、香琉にされたことを思い出しながら手淫に没頭する。ただし、頭の中で自分を少女に変換していた。やがて放出し、目を開けると映るのは香琉の無表情。白濁が、締めているエナメルのコルセットに散っていた。前立腺を刺激していた指を抜く。
「んっ……どう、楽しい?」
「全然」
「……」
雑談しつつ、思考を戻す。もっときついことをしてくる客がほかにもたくさんいるとはいえ、こんなやつと客というより友人のような付き合いができている辺り、俺も普通ではなくどこかおかしいのであろう。たかぶりをどうして痛めつけた奴隷でそのまま癒さないのかいつか聞いてみたら、リンボの奴隷は股間が緩く、俺を使うのが気持ちいいからという答えが返ってきて、それに素直に嬉しさを覚えられる程度の友愛。
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