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咎の園 外伝・番外
辺獄のアリス
しおりを挟む「はい。ご要望通り、素晴らしい掛け合わせで美しいのに、とんでもない恥知らずな娘に育っていますよ」
小さなころ、あたしを愛してくれたお客さん、小田原さんに使用人がそう言っていたのを覚えている。あたしはリンボの乳児室で、そのお客さんがプレゼントしてくれたローターをクリトリスに当ててさっそく遊んでいた。ピンクで、スイッチが猫ちゃんの形しててかわいかった。
白くて広い乳児室には折り紙、積み木、木馬とかもあったけど、気持ちよくなれるオモチャのほうがたくさん転がっている。乳児室を出ると、生きたオモチャもあった。
綺麗な女の人だったけど血色が悪くて、長い髪もバサバサに傷んでいたっけ。その人は幽霊みたいに虚ろな様子のまま、あたしのあそこを舐めてくれたし、おしっこまで飲んでくれる。
その人があたしのママに当たるとあとから知っても、なんとも思わなかった。いつの間にかいなくなってても、なんとも。パパはあたしが生まれる前に、処分されたみたい。そもそも、セックス自体は映像とか見せられてたから知ってたけど、子供ができるメカニズムはもうちょっと大人になってから知ったし。親と言われてもピンとこない! あたしの世話してくれたのは使用人たちだ。
そうそう、乳児室の外、リンボはいい遊び場だった。両腕切り落とされて、背中に白鳥の羽縫いつけられている男のコの剥製とか、キレイだなーと思って眺めてた。別に、自分がこうなるわけじゃないし。
……ああ、でもエデンに召しあげられたら、お客さんに対してはちゃんとしなきゃこうなるって使用人から脅かされてたなあ。それは嫌だ、怖い。あたしの細い、まだ子供の体を四六時中締めつけているコルセットはあたしたちは完全に自由ではないことを今のうちに教えるためだって。
でも、あたしは至ってのびのびと育てられた。乳児室にいる子たちはみんなそれぞれ扱いに微妙に差がある。方針があるんだって。……あたしは気ままに、物心つくころには教えられていた気持ちよくなれることを自分でしたり、生きたオモチャを使ったり、使用人と小田原さんに思いっきり甘えたり、おいしいものを手づかみで食べたり、催したらその辺にしたりして生活した。バイブとか舐めたりして他人を気持ちよくする方法とか、エデンに行ったらしたりされたりしなきゃいけないことの知識とか勉強しつつ。
それから十歳くらいで、エデンへあがったかな? あたしはすでに気に入ってくれているお客さんがいるわけだから初物オークションはしないで、処女は小田原さんにあげた。二の腕に烙印を押された。両方、痛くて泣いちゃった。けどセックスはすぐに慣れたし、好きになった。
汚いもの触ったり口に入れたりする遊びはエデンにあがる前からしてたし、平気。するのは大丈夫だけど、痛いことされるのは苦手だな。リンボの檻に入れられたくないから、我慢するしかないけど。
「可憐な少女を手籠めにするような快楽の相手には、アリスは不向きです。淑やかさを演じるのも苦手でして。彼女、エデンでもとくにはしたない娘で……」
使用人が小田原さん以外のお客さんに、あたしのことをそう説明していたのを覚えている。エデンの生活は忙しく、たまに小田原さん以外のことだとだらしなさすぎると叱られつつも、とくに苦は感じず過ごしてきた。
ただ、小田原さんお爺ちゃんだったから、死んじゃったときは悲しかったなあ。いつか、あたしのことを孫娘にしてくれると思ったのに。すると急に使用人たちが礼儀やらなにやらにうるさくなったけど、そのうちあきらめた。あたしを愛してくれるお客さん、普通にほかにも居たし。
で、あたしは今十七歳。自室で一人むらむらしている。オモチャがその辺に散乱しているけど、でも。
「オナニー……んー、ツグ、まだ起きてるかな、ヒマかな?」
ベッドから身を起こして、乱れたおかっぱボブを手で軽く直してから部屋を出る。生理前は悶々してダメだな。薄暗い廊下を進んで、彼の部屋の前でとまる。ドアノブにさがっているプレートは《close》にしてあった。
ノックすると、少し間を置いてからドアが開いて、気怠げに頭を掻いている彼が現れた。この子はカゲツグ。だから、ツグ。スッピンで、コルセットもしないで、エナメルのショートパンツだけ穿いた体にレースのガウンを羽織っている姿を見ると、寝ようとしていたところだったのがわかる。
「なんの用……?」
しかし、あたしは構わず言った。このうずきをどうにかしたい。
「セックスしたい!」
ツグはわざとらしく肩を落とし、ため息をつく。
「俺、疲れてるんだけど……今日ずっと舞台で暴れて」
「まあまあ、あたし、今ヤりたくてしょうがないの! ひとりでするのもサビシーじゃん。男のコたちのなかじゃ、あんたがいちばん美形だし。なんなら寝てるだけでいいからさー」
部屋へ押し入ると、彼はごねつつもあきらめたのかベッドに寝る。あたしはその上に乗っかって、ぴっちりとしたショートパンツ越しにふくらみを撫でた。
「てか、なにさ、昔はあたしを夢中でヤッたくせに」
「……あの頃は子供だった。今はもう飽食したよ」
エナメルの上から扱くように手を動かしていると、怠そうな彼のものは一応、段々と張りがでてきた。顔を近づけて、なんとなく張りに唇を押しつけてから、チャックをくわえる。おろすと、あたしと同じ無毛の素肌に、直接ショートパンツを穿いていたみたいですぐにおちんちんが飛び出してきた。
「舞台で暴れてって、責めの役でもしてたの?」
「まあ、そんなところ」
「そりゃ、ツグの趣味じゃなさそうだしつまんなかったでしょ。あたしは今日、生卵とか頭からかけられてさー」
「最近、自分の趣味でさえ飽食しつつあって困ってるよ……」
扱いたり、舐めたりするのもそこそこに、シたいからさっさとパステルカラーのピンクのショーツをずらし、跨がると腰を落とす。すでにヨダレを流しているソコで飲み込む。
「ン、おいしい」
「おいしい?」
前も後ろも酷使しているから緩くならないよう、鍛えている括約筋を使って締めつけながらイイところに当たるように動く。ツグも手を伸ばしてクリトリスを擦ってくれながら時折、腰を跳ねさせて的確に突いてくれる。なんやかんや、怠がりつつも彼は性格なのかマメだ。はやく終わらせたいだけかもだけど。
「はあ、気持ちいい」
ふいに、彼はもう片手も伸ばして、レースとフリルでふりふりのウエストコルセットの上、あたしのめずらしいくらいに平らな胸を撫でて、乳首を指先で弾く。きちんとハンドエステしているから、整えられた爪の綺麗な指先。
「お前のここは、子供の頃からおもしろいくらい育たないな」
「ウン、逆にお客さんたちに受けてるよ。ふらふらしてると、性別わからないような子がエデンにはたくさんいるから、男のコに間違えられることがあるけど」
「欠陥を愛してくれる方が多い」
ツグと初対面したのは、あたしも彼も十二歳の時。ツグはまだ外界の子で、旦那サマから接待してほしいって頼まれたんだっけ。お高いホテルのレストランで。……ああ、そろそろイきそう。
あたしの様子を察したのか、ツグは突然体位を変えてきた。あたしの小柄な体をかんたんに組み敷いて、正常位。びっくりして小さく悲鳴をあげたけど、クリトリスをこねられながら激しく突かれて、とめどなく喘いでしまう。あたしは基本、演技をしない。ていうか苦手だ、できない。お客さんとセックスするときもどこをどうしてほしいとか、遠慮なく言ってしまう。
ツグ、ほとんどあたしのおかげで女のコの相手はうまくなったんじゃないかなあ。ぐちゃぐちゃ鳴る水っぽい音、素直に、イイから喘ぎとともに伝える気持ちいいという言葉。仰け反らせているあたしの喉に、ツグの唇が這う。
雁首がナカのザラついている部分を擦った瞬間、あたしは一際大きな声をあげて達した。ツグの腰の動きもとまったけど、彼はイッてない。硬度を保ったままのそれを、熱い膣できゅう、と締めつけてみる。
「気持ちよかった……」
「そう、それはよかった」
「ツグはいーの? イかなくて」
「いいよ、眠いし」
「ねえチューしようよ、チュー」
さっと唇が重ねあわされ、舌を絡めて唾液を交換する。キスも気持ちいいから、好きだ。でもキスを気持ちよく感じるのは、ある程度かっこよかったり綺麗だったりする人に限るかな。あと素直に、好意がある人。
離れると、ツグはティッシュであたしの濡れたあそこと、あたしの愛液で湿った自分のものを拭う。そしてショートパンツに萎えたおちんちんをしまうと、さっさと布団に入って横になっちゃった。あたしもずらしたショーツを直し、寝苦しくならないようコルセットを外すと布団に入る。部屋に戻るのがめんどい。
「そういえば、欠陥といえばさ、男のコの奴隷で素朴な顔した子とか、案外人気あるよね。ツグのほうが美形なのに。女のコの奴隷でもそんなことあるけど」
「……ああいうのは欠陥というか、頭がいいんだ。快楽の相手として以外にも、素直に愛される。手練手管を教えてもらいたいね」
「てれんてくだ?」
そのうち、背中に向けて声をかけても、返ってこなくなる。寝息が聞こえてきた。やがて、あたしもまぶたが重くなってくる。目を閉じると、溶けるように消えていく意識。
寝入る直前。ツグ、なんかそっけなくなったな。最近、涸れてるってよくぼやくな。趣味が楽しくなくなってきたって。あたしは別に変な趣味ってないからその辺よくわからないな。ツグ、マメなイイ奴だけど、極端な性癖のお客さんたちと同じく頭のネジ数本ないよね、と思った。
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