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迫られる選択

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意識を電子化して仮想世界に移植する。

ソルによって実証は得られている。

それでも、踏ん切りは付かない。

「実際のところ、脳が生きていたら脳内の意識はどうなるんだろう?仮想世界と意識が2つあることになる。」

レンが僕に問う。

「2つの意識が維持されることにはなると思う。ただ、脳の方の意識は外からの信号が届かなくなるから、スリープ状態になると思う。実際、外の世界で脳波を確認しないと立証は出来ないけど。」

「なるほど…。」

一同、考え込んでしまう。

「どの道、僕らは身体は残されてないし選択肢は無いんじゃないの?保存している脳がもし廃棄されたら元も子も無いし。」


「確かに…でも、脳の保存が続行出来れば、パーフェクト・ワールド以外の仮想世界に将来的に接続出来る可能性もゼロじゃない。」

そう言った僕の話を遮るようにレンはこう告げた。

「他の仮想世界なんて…僕はパーフェクト・ワールドに入りたくて頑張ってきたのに、パーフェクト・ワールドじゃなきゃ意味が無いよ!」

(確かに、レンはここに来るのに努力したんだもんな…)

「俺も同じだ。ビオレッタが居ない世界に行っても仕方ない。」

ジョーはもう心を決めているようだ。
ビオレッタはジョーの服の袖をギュッと握っている。

「僕もです。パーフェクト・ワールドを支えていく為に僕はこの世界に来たのですから。」

カズヤも当然という顔をしている。

「魂というものは、意識じゃなくて意思なのかも知れないなぁ。」

ソルがポツリと呟いた。

「ルクス、意識をパーフェクト・ワールドに移植するにはどうしたらいい?」

カズヤが問う。

「ソル、僕の理論データはすぐ取り出せる?」

「準備済みだ。実証データもあるぞ。」

(後は外の世界からどれだけ協力を得れるかだが…)

「イズモ博士がスタンバってくれてるはずだ。」

「ソル…また心を読んだな…?」

「テヘペロ?」

「テヘペロじゃねーわ!!」

「ふざけてる場合か!」

カズヤがツッコミを入れた!


「だが、問題はまだある。ここに居るメンバーは意識の移植に賛成となったわけだけど、パーフェクト・ワールドに住んでいる住民全員にどうするか問わなければ。しかも、あまり時間は残されてない。」

「それは俺がやろう。」

ソルが1歩前に歩み出た。

「あっ!直接心に話しかけてくるアレか!!」

「移植を希望する者はネットワークを接続しておいて、希望しない者には一定の期間後、接続を切るようにしよう。この世界と別れを惜しむ時間くらいは与えたい。」

ソルが少し沈んだ表情をした。

どちらを選んでも、この世界は最後になるかも知れないのだから。

(ソルはこれをたった1人で乗り越えたのか…)

ソルは迷いは無かったのだろうか?


「じゃあ、早速僕は準備に入る。カズヤはサポートを頼む!ソル、イズモ博士に連絡を!」

「えー、俺様忙しいのに~」

ブツクサ言いながらもソルはまた魔法陣の中に消えていく。

僕とカズヤは意識の移植の準備を進め、他のメンバーは他の住人のケアへ奔走した。

ずっと平和だったのに、突然残酷な選択を迫ることになってしまった。
住人達の心配や不安、迷いは如何程だったろう。


神殿の奥で2人っきりでカズヤと作業を進める。

「ルクスは…」

作業をしながら、カズヤが話しかけて来る。

「ルクスは意識の移植をするの?」

「その為に今必死にやってますけど!?」

「いや、だって…」

「なんだよ?」

「ルクスは外の世界に身体があるでしょ?」

「…!?」

「忘れてたの?」

「忘れてた…いや、でも!」

「コールドスリープから目覚めて、病気も治癒した健康な身体、あるじゃん。」

「いや、でも、僕は…!」

ハッとしたようにカズヤは笑った。

「羨ましいとか妬んでるとかじゃないから。あのねー、もう僕らは現実世界でも長生きしてきたんだよ。お前が眠ってる間に身体の寿命も随分延びたんだからね?充分、幸せに過ごさせてもらったんだ。」

昔を思い出しているのか、穏やかに少し遠くを見て微笑んで、それからまた僕に向き直った。

「だけど、ルクスはそこまでは現実世界で生きてないだろ?ずっと病院から出られなかったって話だし。」

「………」

「考える時間はまだあるから、ちゃんと考えて答えを出せばいいと思うよ。」

「カズヤ…」

「パーフェクト・ワールドは素敵な世界だけど、現実世界もなかなかいいものだよ。」

「.......」


皆と離れて、外の世界で生きていく…?

そんな選択肢選ぶわけない。

ここは僕の為に作られた、ルナやソルが作ってくれた僕に優しい世界。

今更、外の世界なんて…

だけど…

僕はまだ本物の海も本物の川も、森も山も、見たことがないのか…

(いや、違うぞ?何かのフラグとかじゃないんだからね?)

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